出典

  • “CRISPR-Mediated Base Editing Enables Efficient Disruption of Eukaryotic Genes through Induction of STOP Codons.” Billon P, Bryant EE, Joseph SA, Nambiar TS, Hayward SB, Rothstein R, Ciccia A. Mol Cell. Available online 7 September 2017.

iSTOP(BE3によるSTOPコドン誘導

  • CからTヘの変換を誘導する一塩基編集を可能とした人工酵素BE3(*)は、二本鎖DNA切断を経ることなく、CAACAGCGAおよびTGGの4種類をSTOPコドン(TAA; TAG; TGA)へと変換可能である。

iSTOPの実証実験

  • 4種類の遺伝子(SPRTN; FANCM; TIMELESS; CHEK2)をモデルとして、BE3活性が高い 領域(PAMから13-17ヌクレオチドの範囲)に位置し、かつ、iSTOP結果をRFLPで簡明に判定可能とするために制限酵素認識配列内にシトシンを有するコドンを標的とするsgRNAs(sgSTOPs)を設計。
  • HEK293T細胞にsgSTOPsBE3酵素をコードするDNAプラスミドを送達し、各遺伝子のクローニングとシーケンシングで評価し、iSTOPによるBERFLPによる判定法が有効であることを確認。

iSTOPによるヒト遺伝子ノックアウト

  • DNA損傷応答に関与し、シムケ免疫性骨形成不全症で変異が見られるSMARCAL1遺伝子をモデルとして実験。HEK293T細胞に、SMARCAL1遺伝子座の第1エクソン内のCAGを標的とするsgSTOPBE3を送達し、SMARCAL1遺伝子に設計通りのSTOPコドンが生じ、SMARCAL1タンパク質が存在しないクローンが生成されたことを確認。

iSTOPによるゲノムスケールでのヒト遺伝子破壊

  • iSTOPPAM配列から一定範囲内に位置する4種類のコドンしかSTOPコドンに変換することができないが、ゲノム全域にわたる遺伝子を標的可能なことを確認。
  • ヒトゲノム配列(GRCh38)に存在する69,180ORFsを標的可能とするsgSTOPsを同定。続いて、UCSCゲノムブラウザを利用して、BE3が編集可能な領域に位置する4種類のコドンとPAMsを同定した結果、4種類のコドンの62.5%523,340コドン)をSTOPコドンに変換可能と判定。
  • ヒト遺伝子の99.7%に相当するORFs98.6%に対して一種類以上のsgSTOPsが存在、平均して、26個のコドンのうち1個に対して1つのsgSTOPが存在し、600アミノ酸からなる典型的な遺伝子については23種類のコドンをiSTOPの標的とすることが可能である。iSTOPで標的不可能な遺伝子が68種類同定されたが、そのうち24種類にはiSTOPで標的可能な真核生物オーソログが存在した。なお、オフターゲット編集とRFLPによる判定可能性も評価し、sgSTOPsデータベースに反映させた。

iSTOPによる真核生物モデル生物のゲノムワイド遺伝子破壊

  • ラット、マウス、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナおよび酵母(S. cerevisiae)の7種類のすべてのORFsを標的可能とするsgSTOPsを同定し、iSTOPにより2,490,479コドンをSTOPコドンへ変化可能と判定した。これらの結果をヒトORFsの分析結果と統合し、iSTOPで標的可能な3,483,549遺伝子を網羅したデータベースとして公開した。
  • A database of sgRNAs for generating STOP codons (sgSTOPs) using CRISPR-dependent base editing http://www.ciccialab-database.com/istop

iSTOPによる癌関連ナンセンス変異のモデリング

  • 癌細胞のコーディング配列における変異の4%-5%がナンセンス変異である。APOBECファミリーのシチジンデアミナーゼは、癌細胞では高頻度で過剰発現しており、特定の癌に見られるナンセンス変異とミスセンス変異の68%をもたらしている。
  • 癌体細胞変異データベースCOSMICを利用して、CAACAGCGAおよびTGGコドンで起きているC > TG > A置換を分析し、すべてのナンセンス変異の50%以上がこれら4種類のコドンで発生し、その61%32,723コドン) をiSTOPで生成可能なことを見出した。
  • さらに、癌の種類ごとに、4種類のコドンのナンセンス変異の頻度が高い遺伝子群(iSTOPersと命名)を同定した。トップ100 iSTOpersの中には37種類の腫瘍抑制遺伝子が含まれた。iSTOPを利用して、iSTOperPIK3R1におけるナンセンス変異をモデリングした。

iSTOP先行論文


(*)BE3の復習

  • BE3では、Cas9-D10AニッカーゼのN末端にシチジンデアミナーゼの一種であるラット由来ラット APOBEC1 (rAPOBEC1)を融合し、さらに、C末端にウラシルDNAグルコシラーゼ阻害剤(UGI) を融合した人工酵素であり、sgRNAによって標的部位へと誘導する。
  • BE3がsgRNAを介して標的部位に結合すると、二本鎖DNAが一部解けR-loopが形成され、rAPOBEC1がsgRNA非結合DNA鎖に作用可能となりその領域のシトシン (C) をウラシル(U) に変換し、UGIが、sgRNA結合DNA鎖上のGとこのCのミスマッチをDNAグリコシラーゼによるU除去修復から保護する。続いて、Cas9-D10AニッカーゼによりsgRNA結合DNA鎖(Gを含むDNA鎖)のニッキングに伴うDNA合成を経て、G:UミスマッチがA:Tペアへと変換される。
  • BE参考ブログ記事
    2017年9月5日 塩基編集法(BE)第4世代へ:BE1, BE2, BE3からBE4へ