(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/24

  • 森田純子、可野邦行、加藤一希、滝田浩之 〜 濡木 理(東大院理);青木淳賢(東北大院薬)
  • コリンはすべての細胞に必須の栄養素であり、細胞外でホスファチジルコリン(レシチンと同意;以下、PC)の逐次分解を経て産生されるが、その分子機構は不明であった.
  • 研究チームは今回、Ectonucleotide Pyrophosphatase/Phosphodiesterase(ENPP)ファミリーの中でコリン特異的ホスホジエステラーゼであるENPP6が、PCの分解産物の一種であるグリセロホスホコリン(GPC)を基質とするコリン代謝系(挿入経路図参照)の因子であることを見出した。
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  • ENPPファミリーの中で、ENPP1の構造ENPP2(AUTOTAXIN)の構造およびENPP4の構造が解かれているが(挿入構造図参照)、それぞれの機能は:ENPP1はATPをAMPへ加水分解。;ENPP2はリゾホスファチジルコリン(LPC)をリゾホスファチジン酸(LPA)へ加水分解;ENPP4は、Ap3AからAMPとADPを、Ap4AをAMPとATPへと加水分解.
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  • ENPP6をノックストしたマウスは、脂肪肝になり、コリン欠乏症として知られているミエリン形成不全症を発症した.ENPP6は、肝臓の類洞内皮細胞において高発現し、また、コリンを取り込みPCを合成する希突起膠細胞(oligodendrocytes)が前駆細胞から分化したのちに高発現していた.
  • また、GPCのコリン部分は、in vivo でもin vitro でも、ENPP6依存でPCヘと組み込まれていた.
  • ENPP6とホスホコリンの複合体構造から、ホスホコリンにおけるコリン部分は、芳香族アミノ酸残基と酸性残基で構成されているクロリン結合ポケットに認識されていることが明らかになった.
  • ENPPのファミリータンパク質の生物的機能と結合部位の構造との相関がこれまで以上に明らかになった
論文→森田純子(Morita, J.) et al. "Structure and biological function of ENPP6, a choline-specific glycerophosphodiester-phosphodiesterase." Sci. Rep. 2016 Feb 18;6:20995.
構造→5EGE: Apo ENPP6(分解能 2.0 Å)
構造→5EGH: ENPP6-Phosphocholine complex(分解能 1.8 Å)