1. [論文] CRISPRローカスに、DNAスペーサーに加えてRNAスペーサーも直接取り込まれる:
     Alan M. Lambowitz (U. Texas–Austin);Andrew Z. Fire (2006年ノーベル生理学医学賞/RNAi)
    • CRISPRシステムはバクテリアとアーケアの獲得免疫機構を担っている.CRISPR関連タンパク質の中でCas1とCas2は、Ⅰ型とⅡ型のCRISPRシステムにおいて、宿主に侵入するウイルスやファージ由来のDNA断片(プロトスペーサー)をCRISPRへスペーサーとして組込み、免疫記憶を形成する.
    • 研究チームは今回、Ⅲ型CRISPRの一部(〜8%)にCas1と逆転写酵素(RT)の融合タンパク質(RT-Cas1)が存在し、RNA断片 が直接CRISPRへスペーサーとして組み込見込まれることを、海洋バクテリア Marinomonas mediterranea (MMB-1) において確認した. 
    • さらに、再構成系におけるin vitro 実験で、MMB-1由来のRT-Cas1とCas2タンパク質が、線形のCRISPR DNA基質に、一本鎖RNA、一本鎖DNA、および二本鎖DNAを精確に組み込む事を確認した.
    • RT-Cas1のRTが、CRISPRアレイにライゲーションされたRNA断片を、CRISPRローカスの繰り返し配列の間のcDNAへと逆転写する.
    • RT-Cas1によって、RNAバクテリオファージに対する獲得免疫が存在することが推定でき、また、侵入DNAゲノムに対しても盛んに転写が起きている領域に由来するRNAスペーサーが免疫記憶に変換されることになる.他のⅢ型CRISPRシステムはDNAとその転写物RNAの双方を標的とするところから、RT-Cas1によるRNAスペーサーの獲得は、Ⅲ型CRISPRの獲得免疫機能にさらに貢献する.
    • [情報拠点注] Science 誌の関連「展望」記事のタイトル"CRISR goes retro"は、RNAスペーサは本質的にretroelementsであるところからつけられたもの.
  2. [NEW FEATURE & 論文] 障害者の声 
    • Nature 誌2月25日のNEWS FEATUREErika Check Hayden著)および2月18日のLaws 誌Shawna Benston著)が共に、ゲノム編集を巡る議論に障害者とその家族の観点を盛り込むべきと主張している.
    • 12月に開催されたサミットでは胚ゲノム編集はモラトリアムとされたが、ハーバード大学のDan MacArthurは “Prediction: my grandchildren will be embryo-screened, germline-edited. Won't ‘change what it means to be human’. It'll be like vaccination.”とツイートした(Nature NEWS FEATURESより).
    • 遺伝形質の選択あるいは編集はすでに、出生前診断、体外受精時の着床前遺伝子診断、あるいは、ミトコンドリア置換療法で行われている.
    • 遺伝子病を発症している人々とその家族、遺伝病の病因遺伝子変異を持つ人々、そのなかでいずれ子供をもつであろう人々、まだ生まれてこない未来の子供達の目線での議論が必要であるが、現実に障害を持つ人々の中でもゲノム編集への受容性が分かれている:胚ゲノム編集を含む遺伝子治療を待望する人々がいる一方で、障害を受け容れたまま、そして障害者が受容される社会が存続する事を望む人々もいる.
    • 障害者と障害者研究のコミュニティーは、未だに障害をもつことの意味が偏見無く理解されていないと見ており、CRISPRを巡る議論は、CRISPR療法を適用されるであろう同時代および後の世代の障害者を含む患者にとってもっとも人間的な方向に向いてなされるべき、としている.少なくとも、CIRSPR研究資金に見合う予算を、現在障害を抱えている人々を助ける技術開発に向けるべき.
    • 肥満やアルコール依存症が疾患と見なされるようになってきたところ、CRISPR技術によるゲノム編集が臨床に進むとした場合、社会的にもCRISPR技術による治療を可とする「重度の障害」を定義する必要もある.