1.CRISPR-Cas9システムの効率的導入を実現する新型マイクロカプセルを開発

  • [出典] Efficient gene editing via non-viral delivery of CRISPR-Cas9 system using polymeric and hybrid microcarriers.” Timin AS et al. Nanomedicine. Available online 14 September 2017.
  • 分解性ポリマーをシリカでコーティングしたマイクロカプセルにより、CRISPR-Cas9システムを細胞に導入、市販のリポソームよりも効率的なトランスフェクションを実現(mRNAを対象として<50%から>70%へ;プラスミドDNAを対象として<20%から>40%へ)
  • dTomatoを発現させたHEK293T細胞をレポーターとして、dTomatoのノックアウト効率70%達成を確認

2CRISPR-C2c2の標的特異性を高めるcrRNA設計を支援するWebアプリケーションCRISPR-RT

3SOS応答とrecA活性を阻害することで大腸菌ゲノムのリコンビニアリング効率を改善

  • [出典] “Managing the SOS Response for Enhanced #CRISPR-Cas-based Recombineering in E. coli Through Transient Inhibition of Host RecA Activity.” Eirik Adim Moreb, Benjamin Hoover, Adam Yaseen, Nisakorn Valyasevi, Zoe Roecker, Romel Menacho-Melgar, Michael Lynch. ACS Synth Biol. Publication Date (Web) September 15, 2017.
  • 大腸菌ゲノムの編集に、ファージの相同組換え機構に基づくリコンビニアリング(recombineering)技術が利用されているが、コンビニアリングの結果はモザイク状となり、CRISPR-Cas9技術による組換えが起きたクローンのスクリーンが試みられている。しかし、大腸菌はrecAを介したSOS応答反応によりCRISPR-Cas9が誘導する細胞死から免れる。今回、RecAのドミナントネガティブ変異体の発現を介してSOS応答とRecA活性を阻害することにより、CRISPR-Cas9によるスクリーニングひいては大腸菌リコンビニアリングの効率を改善した。

4[イントロダクション] 宿主の組み込み因子が宿主DNAを折り曲げてCas1-Cas2が働く場を作る

  • [出典] “Host factor drives the big bend.” Steve Mao. Science 2017 Sep 15;357(6356):1108-1111; [PERSPECTIVE] "Crystal-clear memories of a bacterium" Globus R, Qimron U. Science. 2017-09-15. https://doi.org/10.1126/science.aao4929. Figure "The CRISPR memorization process" 参照 https://science.sciencemag.org/content/sci/357/6356/1096/F1.large.jpg
  • [対象論文] “Structures of the CRISPR genome integration complex.” Wright AV, Liu JJ, Knott GJ, Doxzen KW, Nogales E, Doudna JA. Science. 2017 Sep 15;357(6356):1113-1118.
    bioRxiv投稿 Posted July 6, 2017Posted August 12,2017
  • CRISPR-Casシステムにおいて、Cas1-Cas2は、組込み宿主因子(integration host factors, IHF)の助けを借りて、直近に認識・獲得した侵入DNAのプロトスペーサーを、バクテリアのCRISPRアレイの先頭にスペーサーとして組み込む。研究チームは今回、X線結晶構造解析とクライオ電顕単粒子再構成法により、IHFDNAを大きく折り曲げて(下図参照)、DNAとインテグラーゼ複合体との相互作用を可能とすることを明らかにした.
    5WFE:EMD

5.標的認識にPAMとシード配列を必要としないタイプIII-A CRISPR-Casシステム

  • [出典] プレビュー “Specialized Weaponry: How a Type III-A CRISPR-Cas System Excels at Combating Phages.” Ole Niewoehner, Martin Jinek. Cell Host Microbe. Available online 13 September 2017.
  • [出典] 論文 “Broad Targeting Specificity during Bacterial Type III CRISPR-Cas Immunity Constrains Viral Escape.” Pyenson NC, Gayvert K, Varble A, Elemento O, Marraffini LA. Cell Host Microbe. 2017 Sep 13;22(3):343-353.e3. doi: 10.1016/j.chom.2017.07.016. Epub 2017 Aug 17.
  • バクテリアとアーケアのタイプ I II CRISPR-Casシステムは標的のシード配列とPAMに依存してファージを攻撃することから、標的のシード配列とPAM配列に一塩基変異が生じたファージに対して寛容になる。このため、スペーサーを多重に獲得することで、免疫応答の幅を広げている。また、侵入DNA から転写されRNAを標的とするタイプⅢシステムの中で、Pyrococcus furiosus由来タイプⅢ-Bシステムは、標的部位に隣接するRNAのモチーフ(rPAM)を必要とすることが報告されている。
  • 今回、ロックフェラー大学のL. A. Marraffiniらは、Staphylococcus epidermidisのタイプⅢ-Aシステムが標的の認識・切断にシード配列とPAM配列を必要とせず、ファージの必須遺伝子配列を標的とする単一スペーサーに基づいて、ファージを認識・破壊することを、プロトスペーサーの上流-1-5の範囲を完全にランダム化したプラスミド・ライブラリ、及び、プロトスペーサーへの単一及び多重変異を導入したプラスミド・ライブラリーを標的とする実験から、導き出した。
  • また、ファージ感染実験から、S. epidermidisS. thermophilusのタイプⅢ-Aシステムの免疫応答を回避したファージは、標的配列を完全に欠失していることを見出した。
  • さらに、タイプⅢ-Aシステムを選択せずその他のタイプを帯びたバクテリアとアーケアが多数存在することについても論じた。