(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/29

  1. [HIGHLIGHT] CRISPR/Casを利用してエンハンサーをスクリーニング:
     Eytan Zlotorynski (Senior editor)
    • オランダの研究チームによる内在エンハンサーのゲノムワイド・スクリーニングの成果を簡潔にハイライト(関連ブログ記事:CRISPR関連文献メモ_2016/01/16 2[論文] CRISPR/Cas9による非コード領域を対象とするゲノムワイド・スクリーニング)
  2. [Highlight] CRSIPR RNA分解は、遅すぎる事は無い:Naomi Attar (Associate editor)
    • Luciano A. Marraffini (Rockefeller U.)等の「Ⅲ-A型CRISPR/Casシステムにおいて、転写・発現が遅い標的に対して、Csm3とCsm6によるmRNA分解が免疫応答を実現している」論文(関連ブログ記事:CRISPR関連文献メモ_2016/02/06 1[論文] Ⅲ型CRISPR/Casによる免疫の分子機構)をハイライト.
  3. [FORUM] 遺伝子を切除(Scalpel)するか遺伝子発現を拘束(Straitjacket)するか - CRISPR/Cas9による筋ジストロフィーの治療:Peter L. Jones (U. Massachusetts Medical School)
    • ジストロフィン遺伝子の機能喪失が病因であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)と、D4Z4反復配列の反復単位それぞれに埋め込まれているDUX遺伝子の異常発現が病因である顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を取り上げて、CRISPR/Cas9による遺伝病治療の2つの対照的な方向性、変異したエクソン切除と、異常発現をエピゲノム調節で抑制、を論じた.DUX4 遺伝子のスプライシングが、正常細胞では短いmRNAアイソフォーム生成を経て毒性の無いタンパク質の発現をもたらすが、FSHD筋細胞ではDUX4 全長の病原性アイソフォーム(DUX4-fl )生成を経て病原性を示すに至る.ゲノム上に数百存在するDUX4 遺伝子の中で、ただ一つのコピーが恒常的に発現するようになってもFSHDが発症する.
    • 今後、CRISPR/Casシステムの送達法やオフターゲット編集の回避法の改良が必要であるが、CRISPR/Cas技術は、DMDからFSHDまで多様な機構で発症する遺伝病治療に有用である.
  4. [論文] マウスにおいてT細胞特異的にCD2を不活性化:Thorsten Buch (U. Zurich)
    • マウスにおいて、CRISPR/Cas9による細胞型/細胞系譜に特異的なゲノム編集(conditional genome editing)を試行.
    • 遠位エンハンサー、近位エンハンサー、CD4プロモーター、エクソン1、エクソン2の一部およびCas9にpolyAを付したコンストラクト(CD4dsCas9)とU6プロモーター、CD2のエクソン2を標的とするgRNAそしてU6ターミネーターからなるコンストラクト(U6gRNA(CD2))を設計・作成し、FVB/Nマウス卵母細胞の前核に同時に送達.
    • リンパ節と脾臓由来のCD4陽性ならびにCD8陽性のリンパ球のそれぞれ1%と0.6%がCD2を発現していなかった.編集効率は決して高くないが、CD4プロモーターを利用する事で、T細胞特異的はゲノム編集が可能になった.
  5. [論文] 部位特異的染色体転座モデルマウスの作出:Yue Wang, Houqi Liu (Second Military Medical University, Shanghai);Qi-Long Ying (U. Southern California)
    • CRISPR/Cas9によってマウスES細胞に部位特異的染色体転座を誘導し、分離・増殖して、細胞株として樹立.さらに、宿主マウスのブラストシストに樹立した細胞株を注入し、キメラマウスを作出.
    • Cas9ベクターを使ってマウスES細胞ES-E14TG2aにCas9を安定発現させ、5番染色体と7番染色体にそれぞれ局在しその欠失がES細胞の自己再生に影響を与えないCdx2ローカスとGsk3αを標的とするsgRNAを送達することで、染色体転座を誘導し2種類の染色体を得た(T (5:7) chr-shortとT (5:7) chr-long).
  6. [論文] Streptomyces avermitilis のI-E型CRISPR/Casシステムの特徴:Yuan Song (中国農業大学(北京))
    • CRISPR/Casシステムは原核生物に広く分布しているが、免疫活性を示すのはその一部である.今回、S. avermitilis が、ファージに対する免疫応答活性を示すI-E型CRISPR/Casシステムが存在することを見出した.
    • また、E. coli のI-E型CRISPR/Casと比較し、共通する部分とともに、S. avermitilis のCRISPR/Casに特異的な機構が存在するこをと見出した.PAM(5'-AAG-3')とプロトスペーサーと完全に相補的な侵入DNAを分解するだけでなく、そこから新たなスペーサーを取得していた.