(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/02

  Cell 誌2016年2月11日号に、アルツハイマー病(AD)発症過程における細胞フェーズに注目したレビューが掲載された(ブログ記事「2016年3月1日 アルツハイマー病の全体像を捉え直す」参照).その一節が「ミクログリアと炎症 - ADを抑制か亢進か」に割かれていたところ、2016年2月16日のPNAS オンライン版には、Mathew Blurton-Jonesa(UC, Irvine)らの研究チームによる「IgGがミクログリアの貪食機能を亢進しひいてはAβの蓄積を抑制する」実験結果が掲載された.
  • 神経炎症と自然免疫の活性化とADの病態との相関については研究が進んできた.研究チームは今回、獲得免疫機構がADの病態に及ぼす影響を探るために、Rag欠損マウスとIL-2rγノックアウトマウス由来の超免疫不全マウス系統とADモデルマウス(5xfAD)系統とからB/T/NK細胞を欠損した5xfADマウス(以下、Rag-5xfAD)を作出し、末梢免疫細胞が維持されているもともとの5xfADマウス(以下、WT-5xfAD)との対照実験を行った.
  • [Rag-5xfADが示した変化]
    • Aβ蓄積量、WT-5xfADの2倍以上
    • サイトカイン/ケモカインのシグナル伝達やIgGを介したプロセスを含む自然免疫システムと獲得免疫システムの改変
    • ミクログリアのサイトカイン産生亢進と貪食機能の低減を伴う神経炎症の悪化
  • [IgGとAD病態の相関]
    • WT-5xfADにおいて、アミロイドと反応しないIgGのレベルが上昇.IgGは、ミクログリアを刺激し、ミクログリアの貪食機能を亢進.
    • Rag-5xfADまたはミクログリア細胞を免疫前のIgGで処理すると、Aβのクリアランスが亢進.
    • 骨髄移植によってRag-5xfADに末梢免疫細胞を復活させると、Aβの蓄積が大きく減少.