(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/05CRISPR関連文献メモ_2016/01/05

  • [出典] Steyer, B 〜 Krishanu Saha (U. Wisconsin-Madison).  "High content analysis platform for optimization of lipid mediated CRISPR/Cas9 delivery strategies in human cells." Acta Biomaterialia 2016 Apr 1;34:143-158. Published online 2015 Dec 30.
  • CRISPR/Cas9は、遺伝病を治療する“genome surgery”に応用可能なゲノム編集技術である.CRISPR/Cas9を臨床に展開するためには、ヒト細胞において多くの部品で構成されるCRISPR/Cas9の安全性と効率を短時間かつ体系的に評価するシステムが必要である.そこで、CRISPR/Cas9の合成バイオマテリアルと構成要素を多種類同時に生成しスクリーニングするプラットフォームを開発した.
  • ハイコンテント画像解析技術とマイクロコンタクトプリンティング技術を利用して新たに開発したプラットフォームによって、数百から数千の独立の細胞において進行するゲノム編集の多変数データを同時に取得可能である.
  • このプラットフォームを使用して、トランスフェクション試薬として市販されている4種類のカチオン性脂質と、CRISPR/Cas9システムをコードするRNAの濃度を対象として、ヒトHEK293T細胞におけるCas9の発現とmCherryレポーター導入遺伝子の編集の動態を、トランスフェクション後数日間観察した.
  • その結果、ゲノム編集効率が、Cas9の核への輸送にも、mRNAsgRNAの量にも左右されず、トランスフェクション試薬の種類と量に依存することを見出した.
  • また、Cas9 mRNAが多くの細胞に送達される一方で、Cas9-GFPの発現とそれに伴うゲノム編集が起こるのは一部の細胞であることも見出した.したがって、細胞内における分子輸送とmRNAの発現が、脂質を利用したCRISPR/Cas9 RNA送達によるゲノム編集の効率の限定要因であると考えられる.
  • トランスフェクション後24時間以内に、Cas9発現がより高く、細胞増殖がより低いほど、ゲノム編集効率が高いことも見出した.したがって、脂質送達を利用するゲノム編集を、mRNAを翻訳システムに迅速に送達しつつ細胞周期と細胞増殖を調節することで最適化する戦略が示唆された.
  • 今回開発したプラットフォームは、様々な細胞におけるゲノム編集に対するウイルスを使用しないCRISRP/Cas9送達法の効果を評価する手法として有用である.