二本鎖DNAを切断することなく1塩基置換を実現する”base editors”の進化続く

ABE(adenine base editors)
  • [出典] Gaudelli NM, ~ Liu DR. “Programmable base editing of A•T to G•C in genomic DNA without  DNA cleavage Nature. Published online 25 October 2017. [先行研究紹介ブログ記事] 塩基編集法(BE)第4世代へ:BE1, BE2, BE3からBE4へ
  • 自然発生するシトシン(C)脱アミノ化は、C:GからT:Aへのトランジッションの主要因であり、このトランジッション変異はこれまでに知られているヒトにおける病原性点変異の半数に相当する。著者らはこれまでに、C:GをT:Aに変換する1塩基置換法をBE1、BE2、BE3そしてBE4へと進化させてきた(先行研究紹介ブログ記事参照)。今回、A:T塩基対をG:C塩基対へと変換する手法“ABE”を開発、4種類の塩基トランジッション変異全ての導入法を確立し、遺伝性疾患の研究と治療のツールを拡充した。
  • アデニン(A)は脱アミノ化されるとイノシンへ(I)と変化し、この(I)をポリメラーゼはグアニン(G)として認識するところから、(A)→(G)変換への手がかりが得られるが、ゲノムDNA上の(A)を脱アミノ化する天然酵素がこれまで発見されていなかった。著者らは今回、E. Coli tRNAアデノシン脱アミノ化酵素(TadA)を出発酵素として選択し、研究室内進化を経て、DNAの(A)を脱アミノ化することが可能な酵素(以下、TadA*)を創出した。その上で、ABE1.2(TadA* - XTENリンカー - Cas9ニッカーゼ(nCas9) - 核移行シグナル(NLS)のコンストラクト)を構築し、低効率ではあるが、A:T→G:C変換が起こることを確認した。
  • ABE1.2からさらに、TadA*の新たな変異体とnCas9への結合様式、リンカーの長さ改変、TadA*のTadAとの二量体化などABE2/3/4/5/6/7と7段階の進化を経たABE7.10によって、HEK293T細胞において、6箇所のサイトについて、平均〜50%(34〜68%)のA:T→G:C変換効率を達成した。また、誤変換は0.1%未満で、indelsの発生も0.1%未満と極めて稀であり、オフターゲット頻度もCas9より低率であった。
  • 実証実験:鎌状赤血球症を含むβグロビン遺伝子変異に起因する血液疾患に対して耐性をもたらす胎児性ヘモグロビン発現を促す点変異の導入;遺伝性ヘモクロマトーシスの病因点変異を修復
  • 分子機序:TadA*-nCasがゲノムDNA二本鎖をほどき形成されるssDNAバブルの標的鎖内の(A)を(I)へと脱アミノ化し、非標的鎖にニックが入り、 内在DNA修復機構により、A:T → I:T → G:Cと変化
  • ABEsは、ヒト細胞における病因点変異の修復や疾患抑制点変異の導入のツールとして、DSBからのHDR修復を利用するCas9によるゲノム編集よりも優れている。
REPAIR(RNA Editing for Programmable A to I Replacement)
  • [出典] Cox DBT, ~ Zhang F. “RNA editing with CRISPR-Cas13Science.  25 Oct 2017:eaaq0180. [先行研究紹介ブログ記事] CRISPR-Cas13によるRNAターゲッティング
  • クラス2タイプVI CRISPR-Casシステムには、RNAにガイドされるリボヌクレアーゼCas13が組み込まれている。今回、哺乳類細胞におけるRNAを高効率で安定してノックダウンするCas13オーソログPrevotella sp. P5-125由来Cas13b (PspCas13b) を同定し、脱アミノ化酵素ADAR2の脱アミノ化ドメイン(ADAR2DD)に不活性化したPspCas13b(以下、dCas13b)を融合することで、 RNA上の(A)を(I(*))へと変換可能とした(注:(*)アデノシンが脱アミノ化されたイノシン;REPAIRでは、編集標的がRNAのため、ABEと異なり、天然のRNA編集酵素をそのまま利用できる);REPAIRv1の確立。
  • 実証実験:HEK293FT細胞に、X連鎖腎性尿崩症(NDI)の病因変異878G>Aと、ファンコニ貧血の病因変異1517G>Aを形質転換したHEK293FT細胞において、REPAIRv1によって変異をそれぞれ35%と23%の効率で修復:続いて、34種類の疾患の病因であるG>A変異の修復を試み、標的33サイトについて28%の効率で修復:なお、今回対象にした5,739個のG>A変異の他に、ClinVarデータベースには11,943のG>A変異が登録されている。
  • 特異性の向上:オフターゲット作用の低減を目指してタンパク質工学により作出したARDR2DD変異体(E488Q)を組み込んで、REPAIRv1からREPAIRv2へとバージョンアップし、KRASPPIBを標的として実証実験。オフターゲット編集は検出限界以下であり、標的での変換効率はそれぞれ27.1%と13%を達成した。REPAIRv2の標的特異性はREPAIRv1の919倍に達した。
  • BE3/4やABEによるDNA編集と異なりREPAIRによるRNA編集は一時的であり、臨床応用において処置を繰り返す必要があるが、一方で、作用が永続しないゆえに安全性が高く、また、症状の変化に応じて調節あるいは改変することが可能である。
[関連NEWS記事]
  • Cohen J. “Novel CRISPR-derived ‘base editors’ surgically alter DNA or RNA, offering new ways to fix mutations” Science. Oct. 25, 2017 , 1:00 PM
  • Doglin E. “CRISPR hacks enable pinpoint repairs to genome - Precision tools expand the number of ‘base editors’ available for manipulating DNA and RNA” Nature. 25 October 2017.