(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/11

  • 責任著者: Lilia M. Iakoucheva (UCSD);Yu Xia (McGill);Marc Vidal (DFCI)
  • 選択的スプライシング(alternative splicing、以下AS)は遺伝子に多機能をもたらす:例えば、BCL2L1 遺伝子はASのパターン次第で、抗アポトーシス性にもアポトーシス促進性にもなる;ショウジョウバエのDscam1 遺伝子のASは、およそ19,000通りものアイソフォームを生み出しその組合わせによって神経細胞の自己・非自己を認識する。
  • しかし、AS由来のタンパク質アイソフォームがプロテオームとしての複雑な機能にどのような影響を与えるかは不明であった.
  • 研究チームは今回、新たに構築した"ORF-seq"のパイプラインによって、ヒトの遺伝子1,492種類を対象として、AS由来ORFs(altORFs)の全長を網羅的にクローニング/シーケンシング/アノテーションした。その中で398遺伝子の1,035種類のアイソフォームと、〜15,000 ORFs(Mammalian Gene CollectionのcDNAs全長をPCR増幅)との間の、総当たりY2H解析・検証実験を行い、ASがタンパク質間相互作用(以下、PPI)に及ぼす影響を分析した.
  • 特定の遺伝子のアイソフォームは、PPIから見ると、同一(同一のタンパク質セットと相互作用)、中間型(相互作用するタンパク質を一部共通)あるいは独立(全く異なるタンパク質セットと相互作用)の3種類に分かれた.
  • アイソフォームの多くが「独立」であり、特定の遺伝子のアイソフォーム由来のタンパク質(proteoforms、以下PI)の多くが、互いに機能が僅かにことなる変異体として振る舞うというよりはむしろ、全く異なったタンパク質として振る舞う.
  • 一組のPIが相互作用するタンパク質のセットはメンバーのタンパク質の共通性に基づいて4種類に分類する事も可能である:No Difference, メンバーが全く同一;On/off, 一方のPIは相互作用無し;Subset on/off,一方のPIはもう一方のPIが相互作用するメンバーの一部と相互作用;Change-over, 共通のメンバーとそれぞれのPIに特有のメンバーの双方が存在する.
    • On/offの関係にあるPIsは、互いに特定のPPIを促進あるいは阻害する傾向を示す.
    • Change-overの関係にあるPIsは、同一遺伝子由来でありながら、組織に特異的に発現して独特の機能を担っているalloformsであることが示唆された(ZNF688 遺伝子を例示)