• [出典] "Drug-tolerant persister cancer cells are vulnerable to GPX4 inhibition" Hangauer MJ, ~ McCormick F, McManus MT. Nature. 2017 Nov 9;551(7679):247-250. Published online 2017 Nov 1.
  • 癌療法の間に、薬剤耐性腫瘍の供給源となるいわゆる'persister'腫瘍細胞の集団が生成される。'persister'腫瘍細胞は、ゲノム変異を起こさないままの休眠状態を経て、癌の再発・転移を誘発するとされ、近年、注目を集めている。
  • 著者らは先行研究で(Nature, July 2017)、間葉系細胞様の状態にある腫瘍細胞が、脂質ヒドロペルオキシダーゼGPX4阻害によって、ネクローシスの一種であるフェロトーシスに至ることを見出していたが、今回、'persister'細胞もGPX4阻害によって選択的にフェロトーシスへと誘導可能なことを見出した。
  • 抗癌剤に暴露されていない乳癌細胞株と9日間の高用量ラパチニブ暴露に耐えた乳癌細胞株('persister'に相当)をRNA-seqで比較解析し、'persister'細胞が間葉系細胞に典型的な遺伝子群のレベルが高く、酸化ストレス耐性に必要な遺伝子群のレベルが低いことを見出した。
  • GPX4阻害低分子は、抗癌剤に暴露した乳癌'persister'細胞を選択的に細胞死へ誘導し、抗癌剤に暴露されていない乳癌細胞および正常な乳腺細胞には影響しなかった。
  • GPX4阻害は、抗癌剤に暴露したメラノーマ、肺癌および卵巣癌の'psersister'細胞も選択的にフェロトーシスへ誘導した。
  • CRISPR/Cas9でGPX4遺伝子を不活性化したヒトメラノーマ細胞をマウスに移植し、GPX4欠損メラノーマを形成し、抗癌剤により腫瘍が縮小し、再発が起こらないことを確認した。一方で、GPX4を欠損していない腫瘍は、継続的な抗癌剤投与に対して、再発を確認した。
  • [課題] 現存するGPX4阻害剤のバイオアベイラビリティーが低いことから、新たなGPX4阻害剤の開発が急がれる。また、GPX4のノックアウトは成体マウスに対して致死であったことから、生体に適応可能な用量・投与法を見極めて行く必要がある。