[注] 本稿はCRISP_SCIENCEのCRISPR関連ツイート(2017年12月1〜2日)に準拠しています。

1. RNAメチル化と肝細胞癌(HCC)
  • [出典] "RNA N6-methyladenosine methyltransferase METTL3 promotes liver cancer progression through YTHDF2 dependent post-transcriptional silencing of SOCS2" Chen M, ~ Ng IO, Wong CM. 
    Hepatology. 2017 Nov 24.
  • トランスクリプトーム・シーケンシングにより、METTL3がHCCを始めとする固形癌で上方制御されていることを見出した。また、METTL3の過剰発現はHCCの予後不良と相関している。
  • METTL3のノックダウンはin vitroでHCCの増殖を顕著に抑制しノックアウトはin vivoでHCCの腫瘍形成能と肺への転移を抑制した。
  • CIRPSR/dCas9-VP64でMETTL3を過剰発現すると、in vitroおよびin vivoでHCCの成長が亢進した。
  • トランスクリプトーム・シーケンシング(m6A-Seq;m6A MeRIP qRT-PCR)により、METTL3を介したm6A修飾の標的をSOCS2と同定し、SOCS2 mRNAがm6Aの読み出しタンパク質YTHDF2を介して分解されることを見出した。
2. デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)マウスモデルの作出とジストロフィン発現回復
  • [出典] "Single-cut genome editing restores dystrophin expression in a new mouse model of muscular dystrophy" Amoasii A, ~ Olson EN. 
    Sci Transl Med. 2017 Nov 29;9(418).
  • 4,000種類以上のヒトDMD遺伝子変異が知られているが、DMDにおけるエクソン欠損がDMD患者の〜60-70%の病因であり、その中のエクソン50欠損が代表的単一エクソン欠損である。
  • CRISPR/Cas9でエクソンスキッピングを誘導してDMD遺伝子の発現を回復する遺伝子治療実験はこれまで全て、ナンセンス変異を帯びたmdxまたはmdx^cvマウスで行われてきた。
  • UT Southwestern Medical Centerなどの研究チームは今回、エクソン50の前後のイントロンを標的とするsgRNAsとCas9によりエクソン50を欠損させたDMDモデルマウス(ΔEx50マウス)を作出し、その上で、CRISPR/Cas9をAAV9で送達することにより、DMD読み枠回復とDMD発現回復を実現した。
  • 修復用CRISPR/Cas9カセットにはエクソン51のスプライスアクセプター部位に隣接する配列を標的とする単一のsgRNAを組み込むことで読み枠を改変する変異を生成することでエクソン51のスキッピングを実現。
  • 筋特異的にカセットを発現させるプロモーターを組み込むことで、ΔEx50マウスの骨格筋と心筋でのジストロフィン発現を野生型の90%にまで回復。
3. [プロトコル]CRISPR修復により網膜色素変性の前臨床モデルにおいて病因変異を明らかに
  • [出典] "CRISPR Repair Reveals Causative Mutation in a Preclinical Model of Retinitis Pigmentosa: A Brief Methodology" Wu WH, Tsai YT Justus S, Cho GY, Sengillo JD, Xu Y, Cabral T, Lin CS, Bassuk AG, Mahajan VB, Tsang SH. In: Boon C., Wijnholds J. (eds) Retinal Gene Therapy. Methods in Molecular Biology, vol 1715. Humana Press, New York, NY. "CRISPR Repair Reveals Causative Mutation in a Preclinical Model of Retinitis Pigmentosa" Wu WH, Tsai YT, Justus S, Lee TT, Zhang L, Lin CS, Bassuk AG, Mahajan VB, Tsang SH. Mol Ther. 2016 Aug;24(8):1388-94. Published online 2016 May 20.
  • 前臨床モデル"rodless"(rd1)マウスが帯びているナンセンス点変異 (Y347X) と白血病ウイルスイントロン挿入変異(Xmv-28)の2種類の変異のうち、Y347Xが病原変異であることを、CRISPR/Cas9を介したHDRによる遺伝子変異修復実験から特定。
4. Connectivity Map (CMAP)における大規模遺伝子発現プロファイリングによるRNAiとCRISPRの比較
  • [出典] "Evaluation of RNAi and CRISPR technologies by large-scale gene expression profiling in the Connectivity Map" Smith I, Greenside PG, Natoli T, Lahr DL, Wadden D, Tirosh I, Narayan R, Root DE, Golub TR, Subramanian A, Doench JG. PLoS Biol. 2017 Nov 30;15(11):e2003213. 
  • Connectivity Map (CMAP)は、多数の細胞種における擾乱因子(低分子と遺伝子ノックダウン/ノックアウト)と遺伝子発現の変動の相関データを蓄積した大規模な情報資源である。CMAPを利用して、RNAiとCRISPRそれぞれによる機能喪失実験から、オンターゲット/オフターゲットの編集結果を比較した。
  • オンターゲット編集効率は同等であったが、RNAiのオフターゲット編集はこれまでの理解よりは著しく、一方で、CRISPRのオフターゲット編集は極めて軽微であった。
  • RNAiにおけるオフターゲット編集の影響は、CMAPで導出した consensus gene signature (CGS)に基づいて低減可能であることも示した。
5. [レビュー]CRISPR-Cpf1
  • [出典] "The Conspicuity of CRISPR-Cpf1 System as a Significant Breakthrough in Genome Editing" Bayat, H., Modarressi, M.H. & Rahimpour, A. Curr Microbiol. 2017 Nov 30
  • CRISPR-Cpf1の特徴;Cpf1の設計ツールとバクテリア、モデル植物、ヒト細胞やマウスモデルにおけるゲノム編集応用例