[注] 本稿はCRISP_SCIENCEのCRISPR関連ツイート(2017年12月3日)に準拠しています。

8.DSB修復因子53BP1を阻害するユビキチン変異体によって、HDRを介した遺伝子編集効率を5.4倍に
  • [出典] "Inhibition of 53BP1 favors homology-dependent DNA repair and increases CRISPR-Cas9 genome-editing efficiency" Canny MD, ~ Durocher D. Nat Biotechnol. 2017 Nov 27.
  • Cas9を始めとするプログラム可能なにクレアーゼによって、DNA二本鎖切断(DSB)の相同組み換え修復(HDR)を介した精密なゲノム編集を実現できる。しかし、HDRは、非相同末端結合(NHEJ)によるDSB修復過程との競合のためゲノム編集効率が低くなる問題を伴う。DSBに対するNHEJの選択は、HDRの第一段階であるDNの突出末端生成(リセクション)の阻害とDSBサイトへのBRCA1のリクルートを阻害する 53BP1(ヒト細胞ではTP53BP1にコードされている)によって促進される。Daniel Durocherらカナダ・米の共同研究チームは今回、53BP1を阻害することでHDRを促進した。
  • ユビキチン変異体ライブラリーから、53BP1のTudorドメインに結合して(*)53BP1によるHDR阻害を阻害する分子'UbvG08'を同定し、i53と命名した。i53はヒト細胞とマウス細胞において、DNA損傷部位への53BP1の蓄積を阻害することで、dsDNAまたはssODNをドナーとするHDRを介した遺伝子編集効率を、5.4倍にまで向上させた。
  • また、リセクション因子CtIPの欠損によるssODNをドナーとするHDR効率の低下が50%にとどまったことから、CtIPに依存しないリセクション生成過程を解析することで53BP1阻害に組み合わせ可能な他のHDR促進法開発の可能性を示唆した。
  • (*) [PDB構造]5J26: Crystal structure of a 53BP1 Tudor domain in complex with a ubiquitin variant (2.5047 Å)
9.[レビュー]CRISPR/Cas9遺伝子編集:基本的な機構からより優れたin vivoゲノム編集技術に向けた戦略(HDR効率の観点など
  • "CRISPR/Cas9 Gene Editing: From Basic Mechanisms To Improved Strategies For Enhanced Genome Engineering In Vivo" Salsman J, Masson JY, Orthwein A, Dellaire G. Curr Gene Ther. 2017 Nov 21.
10.[レビュー]CRISPR/Cas9システムによるプログラム可能な転写調節と転写後調節
  • "Harnessing CRISPR/Cas systems for programmable transcriptional and post-transcriptional regulation"  Mahasa A, Stewart CN Jr, Mahfouzb MM. Biotechnol Adv. Available online 29 November 2017.
  • CRISPR/dCas9による転写調節やCas13aを始めとするRNAガイドRNAリボヌクレアーゼなどの技術によるRNA編集技術をレビュー
11.Cas9に替わるヌクレアーゼは?
  • "Applications of Alternative Nucleases in the Age of CRISPR/Cas9" Guha TK, Edgell DR. Int J Mol Sci. 2017 Nov 29;18(12).
  • タイトルの観点から、種々のプログラム可能なヌクレアーゼについて、ゲノム編集のアーキテクチャーとヌクレアーゼ・ドメインの多様性、編集の特異性、標的範囲およびDSBs部位での編集結果の偏りを議論:二量体化するヌクレアーゼドメインによるゲノム編集(ZFN、TALENs、その他);単量体ヌクレアーゼ(ZFNsとTALENsの一本鎖変異体、GIY-YIGファミリーのI-TevIホーミングエンドヌクレアーゼ(Cas9のN末端に融合させたTevCas9 Figure 1(B)参照)、メガヌクレアーゼとMegaTALs、CRISPR/Cas9);ヌクレアーゼの活性調節(Table 1参照);編集の偏り(Figure 1参照)
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12.HIV-1のpol遺伝子を標的とするZFNとCRISPR/Cas9による変異導入効率を、さまざまな、プラスミドとベクターについて比較し、全般的にCRISPR/Cas9がZFNに優る変異導入効率を示し、また、送達手段としてアデノウイルスベクターAd5がプラスミドに優る結果を得た
  • "In-vitroTransduction and Target-Mutagenesis Efficiency of HIV-1 pol gene targeting ZFN and CRISPER/Cas9 delivered by various plasmids and or vectors: Towards an HIV cure" Okee M, Bayiyana A, Musubika C, Joloba M, Ashaba-Katabazi F, Bagaya BS, Wayengera M. AIDS Res Hum Retroviruses. 2017 Nov 28.
13.Cpf-1データベース:遺伝子ノックアウト・スクリーンに向けたゲノムワイドgRNAラブラリー設計支援
"Cpf1-Database: web-based genome-wide guide RNA library design for gene knockout screens using CRISPR-Cpf1" Park J, Bae S. Bioinformatics. 2017 Nov 27.
ヒト、ブタ、ラット、マウスおよびゼブラフィッシュのゲノムにおいて、5’-TTTN-3’ PAMを認識するAcidaminococcus sp. Cpf1 (AsCpf1)と Lachnospiraceae bacterium Cpf1 (LbCpf1)の全標的を検索可能
データベースサイト:http://www.rgenome.net/cpf1-database/