[注] 本稿はCRISP_SCIENCEのCRISPR関連ツイート(2017年12月11日)に準拠しています。
1.LbCpf1は、効率的相同組換え修復(HDR)をもたらし、また、ゲノム編集の温度調節を実現する
  • Moreno-Mateos MA, Fernandez JP, Rouet R, Vejnar CE, Lane MA, Mis E, Khokha MK, Doudna JA, Giraldez. "CRISPR-Cpf1 mediates efficient homology-directed repair and temperature-controlled genome editing" Nat Commun. 2017 Dec 8;8(1):2024.
  • Cpf1 (Cas12a) はさまざまな真核生物において広範な活性を示すことが報告されている。哺乳類動物細胞のゲノム編集にはこれま、Lachnospiraceae bacterium ND2006由来LbCpf1とAcidaminococcus sp  BV3L6由来のAsCpf1の2種類のCpf1が利用されている。
  • CRISPR-Cpf1はマウスへの効率的標的変異導入を実現するが、AsCpf1はショウジョウバエと植物では活性が低い。Yale とUC Berkeleyの研究チームは今回、ゼブラフィッシュとアフリカツメガエルにおいてLbCpf1とAsCpf1によるゲノム編集を比較解析して、Cpf1の多様な活性の決定要因を探った。
  • LbCpf1とcrRNAをRNPとして送達することにより効率的ゲノム編集が実現した。Cpf1 mRNAからの時間遅れをともなうタンパク質発現による場合は、 RNPと異なりcrRNAがin vivoで急速に分解することで、ゲノム編集が進まなかった(野生型のままに止まる)。また、AsCpf1はRNPとして送達しても、ゲノム編集がほとんど進まないか低効率であった(Fig. 1-c/e/g 参照)。
LbCpf1-1 LbCpf1-2
  • AsCpf1もLbCpf1もその活性が温度依存であったが、AsCpf1の方がLbCpf1よりも顕著な温度依存性を示した(Fgiure 2 b/c;d/e参照)。AsCpf1の活性が、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、ショウジョウバエおよび植物といった外温生物で低いのは、この温度依存性に因ると考えられる。
  • Cpf1の温度依存性の要因は2つ考えられた:Cpf1のエンドヌクレアーゼ活性が温度調節をうける;ゲノムDNAへのアクセサビリティーが温度調節をうける。今回、proxy-CRISPRNat Commun, 2017 Figure 3 -a参照; crisp_bio 2019-02-23 [第1項]参照)技術によりLbCpf1(Figs. 3- d/e)とAsCpf1(Figs. 3-a/c)の活性が28 °Cで亢進したことから、温度は、CPf1のゲノムDNAへのアクセスまたはゲノムDNAの巻き戻しに影響することが示唆された。温度を時間制御することで、Cpf1によるゲノム編集の翻訳後調節も可能である。
LbCpf1-3
  • CRISPR-LbCpf1とドナーとしてのssDNAの組み合わせが、ゼブラフィッシュにおいて、HDR効率をCas9を使用した場合の〜4倍にまで高めることを見出した(Fig. 4-d 参照)。
LbCpf1-4
  • Cpf1のオンターゲット・オフターゲット推定(対象は線虫、ウニ、イソギンチャク、ショウジョウバエ、ぜブラフィッシュ、メダカ、アフリカツメガエル、ニワトリ、マウス、ラットおよびヒト)を、Cas9のオンターゲット・オフターゲット推定に加えてCRISPRscanにて公開
2.活性状態のCas9 HNHドメインの構造とダイナミクス
  • Zuo Z, Liu J. "Structure and Dynamics of Cas9 HNH Domain Catalytic State" Sci Rep. 2017 Dec 8;7(1):17271
  • Cas9の構造と分子機構の解明が急速に進んできたところ、今回、二種類の分子動力学シミュレーションを行い(Table 1 参照)、標的DNA切断の準備が整ったHNHドメインの活性状態を明らかにし、既報の立体構造をあわせてHNHドメインのコンフォメーション変化のモデルを提案(Figure 5 参照)。
HNH Table 1 HNH-5
  • Mg二価イオンが、活性状態の形成と安定化に果たす役割も明らかにした(Figure 4参照)。
HNH-5

3.成体マウスの肝臓のCRISPR/Cas9ゲノム編集実験で、Dnajb1–Prkaca遺伝子融合によってfibrolamellar hepatocellular carcinoma (FL-HCC) 様の腫瘍が発生することを見出した
  • Engelholm LH, Riaz A, Serra D, Dagnæs-Hansen F, Johansen JV, Santoni-Rugiu E, Hansen SH, Niola F, Frödin M. "CRISPR/Cas9 Engineering of Adult Mouse Liver Demonstrates That the Dnajb1-Prkaca Gene Fusion Is Sufficient to Induce Tumors Resembling Fibrolamellar Hepatocellular Carcinoma" Gastroenterology. 2017 Dec;153(6):1662-1673.e10. Web publication 2017 Sep 18.
  • FL-HCCは、肝臓疾患を伴わず主として子供と若年者に発症する稀な原発性肝癌であり、第19染色体の400 Kb欠損に起因するDNAJB1PRKACAの遺伝子融合を伴うが、この遺伝子融合の腫瘍形成能は不明であった。今回、マウス第8染色体上で、CRISPR/Cas9によるゲノム領域削除によって、Dnajb1の第1エクソンとPrkacaの第2エクソンを融合させ、ヒトFL-HCCの特徴を示す腫瘍が発生することを確認。また、FL-HCC遺伝子融合以外の肝癌関連変異を伴っていないことも確認。
4.CRISPR-Act2.0とmTALE-Actシステムにより植物における安定した転写活性化を実現
  • Lowder LG, ~ Voytas DF, Zhang Y6, Qi Y. "Robust transcriptional activation in plants using multiplexed CRISPR-Act2.0 and mTALE-Act systems" Mol Plant. 2017 Nov 29.
  • dCas9-VP64システムによる転写活性化に対する第2世代の転写活性化法としてdCas9-VP64にgRNA2.0を組み合わせたCRISPR-Act2.0と多重なmTALE-Actシステムを開発
5.[レビュー]遺伝子治療ツール:HITI (homology-independent targeted insertion)法に基づいたin vivoゲノム編集
6.[レビュー]精密ゲノム工学に向けて、HDRとNHEJの経路を調節する
Pawelczak KS, Gavande NS, VanderVere-Carozza PS, Turchi JJ. "Modulating DNA repair pathways to improve precision genome engineering" ACS Chem Biol. 2017 Dec 6