出典
概要
  • 触媒活性を失活させたAcidaminococcus sp. BV3L6由来Cpf1エンドヌクレアーゼ(dAsCpf1)は、バクテリアと植物において効果的な転写抑制因子として機能するが、ヒト細胞でも転写調節因子またはシグナル伝達因子として機能するか否かは不明であった(*)。深セン大学附属第一医院の研究チームは今回、dAsCpf1が、ヒト細胞において遺伝子転写の抑制因子および活性化因子(Fig.2 参照)として機能することを示した。
  • さらに、合成リボスイッチのcrRNAsへの融合またはdAsCpf1のGPCRへの融合(Fig. 4参照)によって、さまざまなリガンドによる内在遺伝子の転写調節を実現し、Cpf1の特徴を活かした単一トランスクリプトからの多重crRNA生成によるシグナル増幅を含むシグナル伝達経路の合成を実現した。
  • (*)査読中にオンライン刊行されたdLbCpf1による転写調節誘導論文:"Inducible and multiplex gene regulation using CRISPR-Cpf1-based transcription factors" Tak YE1, Kleinstiver BP, Nuñez JK, Hsu JY, Horng JE, Gong J, Weissman JS, Joung JK. Nat Methods. 2017 Dec;14(12):1163-1166. Published online 2017 Oct 30.
転写抑制システム(Fig. 1 参照)
  • crRNAとdAsCpf1による外来GFPの発現抑制(Fig.1-a 上):HEK293-T細胞ゲノムにGFP発現カセットを挿入し、GFP発現のCAGプロモーターの3箇所を標的とするcrRNAs(Fig.1-b 上)を評価;単一crRNAではノックダウンが生じず、crRNA3種類全てを発現するcrRNAアレイによって多重なcrRNA-dAsCpf1の協働効果によってそこそこのノックダウンが見られた(Fig.1-c)。
  • crRNAとdAsCpf1-KRABによる内在DNMT1の転写抑制(Fig.1-a 下):DNMT1のプロモーター3箇所を標的とするcrRNAs(Fig.1-b 下)は効果的に転写抑制し、また二重あるいは三重の協働効果あり(Fig.1-d)
Cpf1-based transcription factors 1 Cpf1-based transcription factors 2

転写活性化システム(Fig. 2 参照)
  • TETプロモーターとGFPの発現カセットをHEK293-T細胞に組み込み(FIg.2-b 左)、TETプロモーターを標的とするcrRNAs(FIg.2-b 左)と、dAsCpf1-VP64転写活性化因子(Fig. 1-a 左)とdAsCpf1-VPR(VP64にp65とRtaを加えた複合転写活性化因子)(Fig.1-a 右)を評価。前者では活性化がほとんどおこらず、後者で顕著な活性化誘導。
  • 内在遺伝子DNMT1の転写活性化とcrRNAの協働効果を確認(Fig.2-b 右/-d右)
  • crRNA-リボスイッチによる転写抑制と転写活性化の誘導(Fig.3 参照)
  • リガンドが存在しない状態では、crRNAのガイド領域がアンチセンス・ステムに結合したままでcrRNAは標的DNAに結合できない(OFF状態)。RNAリボスイッチがリガンドを認識すると、コンフォメーション変化を介して、crRNAが標的DNAに結合可能となる(ON状態);crRNAの3'末端にテオフィリン・アプタマーまたはテトラサイクリン・アプタマーを融合することで、テオフィリンまたはテトラサイクリンによるOFF-ONを確認。
Cpf1-based transcription factors 3 Cpf1-based transcription factors 4

dAsCpf1-GPCRによる転写抑制と転写活性化の誘導(Fig. 4 参照)
  • Tango systemに準拠して、GPCR-βアレスチンとdAsCpf1-KRABまたはdAsCpf1-VPRを共役させて、GPCRヘのリガンド結合によるdAsCpf1転写調節因子の活性誘導を実現し、GPCR-βアレスチンを他のGPCR(ニューロメジンB受容体)に置換可能なことも確認;dAsCpf1をdSpCas9に置換したシステムは、リガンド非存在下でも標的遺伝子の転写調節が発生するリーキネスを示した。