[PREVIEW]"Seeds of Destruction: New Mechanistic Insights into the Role of Apolipoprotein E4 in Alzheimer's Disease" Vassar R. Neuron. 2017 Dec 6;96(5):953-955.
  • 孤発性のアルツハイマー病(AD)の50%以上が、アポリポタンパク質E4(APOE4)と相関している。また、APOE遺伝子には3種類のアレル(ε2, ε3, ε4)が存在するが、ε4アレルを1コピーまたは2コピー帯びた個人のAD発症リスクが、ε3/ε3を帯びた個人のそれぞれ3.7倍と12倍と報告されている。さらに、ε4アレルは遺伝子量に依存する形でε3よりも早期に発症すると報告されている。
  • しかし、apoE4がアミロイドβ(Aβ)の凝集とクリアランスに影響を与える機構、ひいては、それがAD療法の標的足り得るか否かについては、研究が進んで来なかった。今回、Chia-Chen Liu(Mayo Clinic)らと、Tien-Phat V. Huynh(Wash U)らが、それぞれ独立でかつ対照的な手法によって共に、apoE4がAβ沈着の進行からプラーク(アミロイド斑)の成長までの過程に与える作用について共通の結論を得た。
[論文]"ApoE4 Accelerates Early Seeding of Amyloid Pathology" Liu CC, Zhao N, Fu Y, Wang N, Linares C, Tsai CW, Bu G. Neuron. 2017 Dec 6;96(5):1024-1032.e3.
  • モデルマウス作出:中枢神経系においてapoEの主たる産生細胞であるアストロサイトからヒトのapoE3またはapoE4のアイソフォームの発現をドキシサイクリンで誘導可能にしたマウスを作出;このノックインマウスをそれぞれ、出生後〜4-5ヶ月からAβ沈着が始まり6~9ヶ月の間にプラークが急成長するAPPSWE/PS1ΔE9トランスジェニックマウスと交配したモデルマウス(以下、APP/iE3とAPP/iE4)にて実験
  • 3種類のapoE発現パターン:(1)0-9ヶ月間(seeding期とプラーク急成長期)にわたり発現;(2)0-6ヶ月間(seeding期)に限定発現;(3)6-9ヶ月間(プラーク急成長期)限定発現
  • Aβの動態:[沈着]APP/iE4マウスでは、(1)と(2)の場合、seeding期にAβ沈着が劇的に増加したが、(3)の場合はコントロールと差異がなかった。APP/iE3マウスではAβ沈着の増加が見られなかった;[クリアランス]脳脊髄液におけるAβのレベルをマイクロ透析から、APP/iE4での半減期がコントロールからほぼ倍になり、apoE4がAβの脳からのクリアランスを抑制することが示唆された。
  • 病理:神経炎性ジストロフィーがAPP/iE4マウスでは(1)と(2)で発生した一方で、(3)のAPP/iE4マウスと (1)のAPP/iE3マウスでは発生しなかった;APP/iE3マウスではグリオーシスが低減し、シナプス後部の足場タンパク質PSD95のレベルが上昇し、一方で、APP/iE4マウスでは、アストログリオーシスとミクログリオーシスが亢進するという、神経炎症に対照的な影響が見られた。
  • 結論apoE4は、seeding期において、Aβのクリアランスに干渉しAβの凝集を亢進することで、Aβの動態に最大の影響を及ぼす。
[論文]"Age-dependent effects of apoE reduction using antisense oligonucleotides in a model of β-amyloidosis" Huynh TV, Liao F, Francis CM, Robinson GO, Serrano JR, Jiang H, Roh J, Finn MB2, Sullivan PM, Esparza TJ, Stewart FR, Mahan TE, Ulrich JD, Cole T, Holtzman DM. Neuron. 2017 Dec 6;96(5):1013-1023.e4.
  • モデルマウス:マウス内在のApoe遺伝子を、ヒトAPOE遺伝子のε3またはε4アレルと置換したモデルマウスにapoE mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を脳室内(ICV)投与し、ASOによって成体マウスの場合でも2週間の処置でapoEが低減することを確認。このノックインマウスを、2月齢でAβ沈着が発生するアグレッシブなAPP-PS1-21マウスと交配して得られたホモ型ε3またはε4のマウス(APP/PS1-21/ε3とAPP/PS1-21/ε4)にて、ASOによるapoE阻害効果をAβ沈着前後で比較解析
  • 実験:[16週齢]ASOを出生後0週齢または6週齢と中間期ブースター注射を加え、16週齢で、apoE発現測定、Aβ沈着の組織学的・生化学的解析、およびミクログリオーシス判定を実施。
  • 結果:[0週齢(seeding期)ASO投与]Aβ沈着が50%程度低減し、Aβレベルとプラーク周囲の変性神経突起も低減し、このASOの効果がAPP/PS1-21/ε4においてより顕著であった。;[6週齢(プラーク成長期)ASO投与]このモデルでプラーク検出が可能になった最初のタイミングでASO投与することで、プラーク周囲の変性神経突起は50%近く低減したが、アミロイドの総量にはほとんど影響しなかった。
  • 結論apoE4がAβ凝集の初期段階にapoE3よりも大きな影響を与える。