1.CRISPR/Cas9遺伝子編集と遺伝子ドライブによる逆遺伝学 - ショウジョウバエでの実証
  • [出典]"CRISPR/Cas9 and Active Genetics-based trans-species replacement of the endogenous Drosophila kni-L2 CRM reveals unexpected complexity" Xu XS, Gantz VM, Siomava N, Bier E. eLife. 2017 Dec 23;6.
  • ショウジョウバエの翅を支え感覚器官へ栄養を供給する翅脈の数とは、遺伝子発現と形態形成の相関を研究する格好のモデルである。2015年にCRISPR/Cas9によるショウジョウバエにおける遺伝子ドライブ(Mutagenic Chain Reaction, MCR)をScience誌に発表したValentino M. GantzとEthan Bierは今回、CRISPR/Cas9により、ショウジョウバエにおいて、転写因子の変異と形態形成の相関を精密に解析した結果をeLifeにて発表した。
  • L2翅脈形成に必要な転写因子をコードするknirps (kni)遺伝子座(kni L2-CRM)を標的として、そのミニマルな断片1.4 kbと隣接する保存配列の〜2 kbの領域を順次連続的に欠損させ、転写を促進する染色体対合など、CRMのレポータタンパク質による観察では得られなかった新たな知見を得た。
  • 加えて、先行研究で実現した遺伝子ドライブ技術に倣って、標的ショウジョウバエのL2-CRMを、異種ショウジョウバエのL2-CRMによって置換し、継代可能とする技術を実現し、標的ショウジョウバエがドナーのL2翅脈を発現することを同定した。著者らは、この生殖細胞系列を経て継代される要素を'self-propagating active genetic elements (CopyCat elements)'と呼称した。
2.CRISPR sgRNA活性改善の鍵となる配列の特徴を同定
  • [出典]"Identify Key Sequence Features to Improve CRISPR sgRNA Efficacy" Chen L ~ Dong Y. IEEE Access. December 22, 2017.
  • Doenchらが発表したsgRNAの活性データ(sgRNAと標的DNA2,799組のデータ)を元に、sgRNA配列、標的DNAがコードするタンパク質(アミノ酸配列保存性と天然変性)から、最大関連性最小冗長性(mRMR)特徴抽出、拡張特徴選択(IFS)、サポートベクターマシン(SVM)の手法によって、活性に影響を与える152種類の主要な因子を選別し、サポートベクターマシンによる判別器を構築。標的タンパク質の天然変性が、CRISPR sgRNAの活性に最も大きな影響を与えることを示唆。
3.Xanthomonas albilineans由来Cas2(XaCas2)の溶液内構造とヌクレアーゼ活性機構
  • [出典]"Solution structure and dynamics of Xanthomonas albilineans Cas2 provide mechanistic insight on nuclease activity" Jeong M, Kim I, Kim G, Ka D, Kim NK, Bae E, Ryu KS, Suh JY. FEBS Lett. 2017 Dec 18.
  • CRISPR-Casシステムにおいて、Cas2は外来DNA断片(スペーサー)獲得の足場タンパク質、および、基質のDNAとRNAに対するヌクレアーゼ、として機能する。これまでに得られたCas2の結晶構造は不活性なコンフォメーションであった。Jeong-Yong Suh(ソウル大学)らはNMRのresidual dipolar coupling法と緩和測定によって今回、溶液内でのXaCas2のヒンジ領域における動的なコンフォメーション変化を観測し、XaCas2が極めて可動性が高いAsp8を介して一時的に金属イオンと相互作用することでヌクレア-ゼ活性を発揮することを同定した。XaCas2は、2種類のコンフォメーションの動的平衡によって、足場とヌクレアーゼの二役を担う。
4.Cas9とCas12a(Cpf1)は、RNAに依存することなく、DNAを切断する
  • [出典]"RNA-Independent DNA Cleavage Activities of Cas9 and Cas12a" Sundaresan R, Parameshwaran HP, Yogesha SD, Keilbarth MW, Rajan R. Cell Rep. 2017 Dec 26;21(13):3728-3739
  • Rakhi Rajan(Oklahoma U)らは今回、Francisella tularensis novicida由来のCas12aとCas9(FnoCas12aとFnoCas9)およびSpyCas9が、Mn2+イオンの存在下で、gRNAに依存することなく(標的配列に依存することなく非選択的に)DNAを編集することを見出し、その活性とゲノム編集とバクテリアの病原性との関連を論じた。基質はそれぞれ異なり、FnoCas9はHNHドメインを介して二本鎖プラスミドをニックし、SpyCas9はRuvドメインを介して一本鎖DNAを切断し、FnoCas12aはRuvCとNucドメインの協働を介してdsプラスミドをニックし、ssDNAを切断する。
5.タイプI-E CRISPR-CasシステムのCascadeが標的を探索し標的に結合する動態を一分子FRETによりリアルタイムで観察
  • [出典]"Real-Time Observation of Target Search by the CRISPR Surveillance Complex Cascade" Xue C, Zhu Y, Zhang X, Shin YK, Sashital DG. Cell Rep. 2017 Dec 26;21(13):3717-3727.
  • Dipali G. Sashital(Iowa State U)らの成果。Cascadeは、そのCas7サブユニットとdsDNAのリン酸骨格との間で一時的に 非選択的静電相互作用し、PAMが存在しない領域では迅速にdsDNAから0.1秒以内に遊離することで、dsDNAを高速かつランダムにサンプリングする。標的に隣接している可能性があるPAMの密度が高い領域には、CascadeはそのCse1サブユニットの2種類のモチーフとPAM配列との相互作用を介して〜1秒以上止まり、DNAを20°程度曲げ、DNAの局所的巻き戻しを可能にする。標的配列が存在しない場合、CascadeはDNAから遊離し標的探索を続ける。
  • [参考] CRISPRメモ_2018/04/18 -1.大腸菌のタイプI-E CRISPR-Casシステムが標的DNAを切断するに至る過程を初めてin vivoで解析
6.[レビュー]CRISPR/Cas9ゲノム編集による乳癌に必須の(addiction)遺伝子- 乳癌治療分子標的の探索と同定
  • [出典]"Break Breast Cancer Addiction by CRISPR/Cas9 Genome Editing" Yang H, Jaeger ML, Walker A, Wei D, Leiker K, Weitao T. J Cancer. 2018; 9(2): 219-231.
  • 乳癌の発生、増殖、転移、そして各種療法に対する耐性獲得は、細胞内の多様な反応を異常な遺伝子発現とタンパ質分解を介して
  • た細胞内反応の調節に依存する(下図参照)。CRISPR/Cas9ゲノム編集による乳癌がaddictionする遺伝子の探索・同定をレビュー
Break Breast Cancer Addiction 1 Break Breast Cancer Addiction 2
7.大腸菌によるイソプレイド工業生産:メバロン酸経路のCRISPR-Cas9による最適化
  • [出典]"Towards industrial production of isoprenoids in Escherichia coli: lessons learned from CRISPR-Cas9 based optimization of a chromosomally integrated mevalonate pathway" Alonso-Gutierrez J, Koma D, Hu Q, Yang Y, Chan LJG, Petzold CJ, Adams PD, Vickers CE, Nielsen LK, Keasling JD, Lee TS. Biotechnol Bioeng. 2017 Dec 26.
  • Taek Soon Lee(Joint BioEnergy Institute, US)ら国際共同研究チームの成果。スクロースを資化する大腸菌W株のスクロース資化オペロンをイソプレノイド産生大腸菌DH1株に導入することで、グルコースに加えてスクロースも炭素源として効率的にビサボレンを産生かつ生育する大腸菌 DS株を作出し、さらに、メバロン酸経路(MVA)を組込み、CRISPR-Cas9によりプロモーター配列を置換することで、MVAの発現を高め、ビサボレンの産生量の5倍増を実現。
8.[特許]長寿化による癌など加齢に伴う疾患療法の手法とシステム - CRISPR-Casシステムによりマイクロバイオームを改変しトマチジンまたはラパマイシンの発現を誘導する手法を含む
  • [出典]"Method and System for Treating Cancer and Other Age-Related Diseases by Extending the Healthspan of a Human" US 2017/0348359 A1.
  • 公開日 12/07/2017;発明者/権利者 Kovarik, Katherine Rose; Kovarik, Joseph E (Englewood, CO, US) 
9.[特許]遺伝子編集因子h(Creリコンビナーゼ、CRISPR/Cas分子、TELE転写活性化因子、Cas9ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、転写調節因子またはそれらのコンビネーション)を哺乳類内耳の種々の細胞に効率的に直接送達する手法
  • [出典]"Efficient delivery of therapeutic molecules in vitro and in vivo" US 2017/0340754 A1.
  • 公開日 11/30/2017;発明者 Chen, Zheng-yi; Liu, David (Cambridge, MA, US) ;権利者Massachusetts Eye and Ear Infirmary (Boston, MA, US)