Science誌2018年1月5日号は、同誌2017年11月3日号の「展望」で取り上げていた2編のオンライン刊行論文(Routy et al.Gopalakrishnan et al.) に、Matson et al.論文を加え、腸内菌叢と癌の免疫チェックポイン阻害療法との相関について改めて、精密/個別化医療の観点から「展望」した。
「Matson論文から」
  • 抗PD-1癌免疫療法を始める前の転移性メラノーマ患者42名の腸内菌叢の組成を、16S RNAシーケンシングとメタゲノム・ショットガンシーケンシング、および特定の微生物種を対象とする定量的PCRによって解析し、腸内菌叢の組成と免疫療法への応答が相関することを見出した。
  • レスポンダー(R)とノンレスポンダー(NR)の間で優位な量的差異が存在するOTU(Operational Taxonomic Units)62種を同定した。RとNRにそれぞれ相対的に豊富なOTUはそれぞれ39種と23種であり、前者には、Bifidobacterium longum, Collinsella aerofaciensおよびEnterococcus faeciumが含まれた。
  • 患者腸内菌叢の詳細な解析につづいて、ヒトメラノーマ由来B16.SIY株を無菌マウスに移植し、事前にRまたはNR由来の糞便を移植した影響を比較解析した結果、R由来糞便移植により、腫瘍増殖が抑制され、T細胞応答が強化され、抗PD-L1療法への応答性が改善することを見出した。
「2018年展望から」
  • 三論文は、腸内菌叢のありようによって患者を層別化することが可能な根拠を、補強した。
  • 三論文は、ヒト癌を移植したマウスに対してRからの糞便移植が免疫療法への応答性を高めることも報告。糞便移植(FMT: fecal microbiota transplantation)の効用は、Clostridium difficile感染患者の90%が健常者からのFMTによってバイコマイシン応答性を回復した報告もあり、免疫療法などの癌療法に、FMTおよびそこから進んだ合成微生物叢の投与を併用する療法を、期待できる。
  • 臨床研究に進むにあたっては、腸内菌叢と各種療法に対する応答性との相関解析に影響を与える可能性がある疾患や癌のサブタイプ、人種その他の要因を吟味する必要があり、また、腸内菌叢がそのDNA、RNA、細胞膜構成因子、および代謝産物を介して、ヒトの免疫システムを調節する分子機序を、さらに詳らかにしていく必要がある。