1.CRISPR-Cas9 piggyBacシステム"CRONUS"とssODNにより、簡便・低廉・迅速な、ヒト細胞内ゲノムへの部位特異的ランダム変異導入を実現
  • Ishida K, Xu H, Sasakawa N, Lung MSY, Kudryashev JA, Gee P, Hotta A."Site-specific randomization of the endogenous genome by a regulatable CRISPR-Cas9 piggyBac system in human cells" Sci Rep. 2018 Jan 10;8(1):310
  • CRONUS (CRISPR-Cas9 regulated by transcription and nuclear-shuttling)システムを開発し、適切なssODNテンプレートを利用することで、iPSCsを含むヒト細胞において、HR(相同組み換え修復過程)を介した一塩基編集を高い効率で実現。
  • CRONUS法では、poggyBacトランスポゾンべクターによりTetO -Cas9-GR(グルココルチコイド受容体)-PuroRとgRNA-HygroRならびにpiggyBacトランスポザーゼを導入し、ピューロマイシンとハイグロマイシンで形質転換細胞を濃縮し、ドキシサイクリンでCas9+GRを発現させ、デキサメタゾンによりCas9の核移行を促し、ゲノム編集に至る(下図参照)。HRのテンプレート用ssODNはエレクトロポーレーションする。
CRONOS Fig 2
  • Cas9とsgRNAをゲノムから発現させることで、10%の効率で一塩基変異導入を実現(すなわち、10クローンにつき1クローンがランダム変異を帯びるという高い効率)。
  • ランダム化したssODNを利用して、ヒト404C2 iPSC、293T細胞およびHeLa細胞にて、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの病因遺伝子座DMDでのコドン・シャフリング(“CTC” から“NNC”へ)のランダム変異導入をそれぞれ23.3%、47.0%および10.8%の効率で実現。また、ヒトiPSC iPS cells 1383D2クローンにおいてHLA-A遺伝子座でのコドン・シャフリング効率44.1%を達成。
  • CRONUS とランダム化ssODNで、4箇所のコドンへの一塩基ランダム変異導入が可能であることも検証。
2.CRISPR gRNAsの設計に資するオフターゲット活性予測法"Elevation"を開発しクラウドサービスから公開
  • Listgarten J, Weinstein M, Kleinstiver BP, Sousa AA, Joung JK, Crawford J, Gao K, Hoang L, Elibol M, Doench JG, Fusi N. "Prediction of off-target activities for the end-to-end design of CRISPR guide RNAs" Nat Biomed Eng. 2018 Jan 10;  "Predicting off-target effects for end-to-end CRISPR guide design"bioRxiv. Posted December 2, 2016.
  • オフターゲット活性予測は、(1)潜在的標的ゲノムワイド探索とフィルター、(2)ステップ(1)で検出した潜在的標的ごとの活性スコア付、および(3)ステップ(2)で計算したスコアをgRNAごとに集計、の3段階で進める。ステップ(1)についてはこれまでに多くのアルゴリズム(Cas-OFFinder、CRISPOR、CHOP-CHOPおよびe-CRISPR)が開発されてきたが、ステップ(2)と(3)については手薄であった。今回、マイクロソフト、USLAおよびBroad研究所の研究チームは、ステップ(1)についても独自の手法を開発するとともに、ステップ(2)と(3)についても機械学習によるアルゴリズムを開発しElevation(Elevation-search, Elevation-scoreそしてElevation-aggregate)オフターゲット活性予測システムを開発し、先行研究で開発していたAzimuthのオンターゲット活性予測システムとともに、クラウドサービスから公開した。
  • クラウド・サービス Webサイト:CRISPR ML "End-to-end guide design for CRISPR/Cas9 with machine learning - Azimuth and Elevation"
3.遺伝子間相互作用の方向依存性を、遺伝子活性化と遺伝子ノックアウトを組み合わせることで明らかに
  • Michael Boettcher, Ruilin Tian, James A Blau, Evan Markegard, Ryan T Wagner, David Wu, Xiulei Mo, Anne Biton, Noah Zaitlen, Haian Fu, Frank McCormick, Martin Kampmann & Michael T McManus. "Dual gene activation and knockout screen reveals directional dependencies in genetic networks" Nat Biotechnol. 2018 Jan 15.;"Decoding directional genetic dependencies through orthogonal CRISPR/Cas screens" bioRxiv. Posted March 25, 2017.  
  • 100,000組の遺伝子対について、S. pyogenes (CRISPRa) による遺伝子活性化と S. aureus (Cas9 nuclease)による遺伝子ノックアウトの効果を測定することで、ヒト白血病細胞K562における遺伝子間相互作用の有向ネットワークを再構成し、これまで機能不明であった遺伝子の良く知られたパスウエイへの組み込みおよび治療標的同定を実現した。
4.エピゲノム調節因子を標的とするアレイ型CRISPR-Cas9ライブラリー構築:ハイコンテントスクリーンからin vivoアッセイまで
Henser-Brownhill T, Monserrat J, Scaffidi P. "Generation of an arrayed CRISPR-Cas9 library targeting epigenetic regulators: from high-content screens to in vivo assays" Epigenetics. 2018 Jan 12:1-11.
450種類のエピゲノム調節因子を標的とする多重sgRNAsのアレイ型ライブラリーとプール型ライブラリーを構築し、遺伝子ノックアウトの誘導を試みた。アレイ型ライブラリーを利用することで、顕微鏡画像に基づくハイコンテントスクリーニングと、ノックアウト・クローンの分離を経ないタンパク質の機能解析が実現された。

5.CRISPR-Cas9ニッカーゼにより、Bacillus licheniformisゲノムの効率的編集ツールを開発
  • Li K, Cai D, Wang Z, He Z, Chen S. "Development of an Efficient Genome Editing Tool in Bacillus licheniformis Using CRISPR-Cas9 Nickase" Appl Environ Microbiol. 2018 Jan 12.
  • Bacillusは多様な生化学的産物を産生する産業上有用なバクテリアであるが、形質転換効率が低く効果的なゲノム編集ツールが存在していなかったが、今回、B. licheniformis DW2においてCRISPR/Cas9 ニッカーゼにより高効率なゲノム編集を実現:単一遺伝子(yvmC)の削除(100%)、多重遺伝子の破壊(11.6%)、大規模領域(42.7 kb)の削除(79%)、外来レポータ遺伝子の挿入(76.5%)を実現。