[出典]
[概観]
  • コロラド大学をはじめとする米・英・豪・スペインの研究グループは、6大陸18カ国237箇所の多様な環境由来の土壌微生物を、16S rRNAアンプリコンシーケンシングで解析し、25,224のファイロタイプ(phylotypes*)を同定した。Phylotypesの種類数は、サンプルによって774種から2,869種と大きく変動し、各phylotypesの相対量もまたサンプルによって大きく異なり、サンプル間で共有されるphylotypesは少数(〜2%)であった(* phylotypes:16S rRNA遺伝子配列を97%以上共有する微生物群)。
[優占種]
  • 前述の〜2%(511 phylotypes)は、ほとんどの土壌サンプルにおいて16S rRNAの41%を占める優占種(dominant soil bacterial phylotype)であった(熱帯雨林は例外であり、優占種は16S rRNAの20%を占めるに留まった)。
  • 優占種は、主として、アルファプロテオバクテリア綱、ベータプロテオバクテリア綱、放線菌門、アシドバクテリウム門およびプランクトマイセス門で構成されていた。
  • 今回の優占種はEarth Microbiome Projectにおいてアンプリコンシーケンスから同定されていた優占種の80%が含み、また、今回の優占種の85%がメタゲノム解析していた123箇所の土壌微生物でも優占種であった。
  • 標準株と同定可能な優占種は30%未満に留まり、微生物資源センターに系統保存されている微生物種は限定的であることが示唆された。
[環境条件依存性]
  • 土壌pHなどの15種類の環境条件を説明変数とするランダムフォレスト・モデルを構築し、優占種のうち270 phylotypesが、土壌pH、気候要因(乾燥度、最高温度、季節降水量)といった環境条件と相関すること、また、植物生産性が微生物分布量の最適な指標であることを見出した。
  • クラスター分析により、この270 phylotypesのうち200 phylotypesが、高pH、低pH、乾燥地、低植物生産性および乾燥林の5種類の環境(ecological cluster)に仕分け可能なことも見出した。残りの70 phylotypesは、3種類の小規模なecological clustersに仕分けされた。
  • 同じ環境クラスターに属する微生物種は、共存する傾向を有することも相関解析から明らかになった。
[Ecological clusterを特徴づける遺伝子群]
  • 完全ゲノムデータが比較的多数存在する乾燥地クラスターをモデルとして、乾燥地クラスターの10ゲノムとその他のクラスターからの62ゲノムを比較し、乾燥地クラスターに比較的多量に存在する18遺伝子を同定したが、これらの遺伝子はアルカリや塩分に対する耐性に関連する遺伝子であった。