(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/24から転載)

[出典] Max A. Horlbeck et al. " Nucleosomes impede Cas9 access to DNA in vivo and in vitro ." eLife 2016;10.7554/eLife.12677.
  • Cas9ならびにdCas9による効果的なゲノム編集を実現するには、適切なsgRNAsが必須である. 
    SgRNAsの選択はこれまで標的配列とsgRNAsの配列比較解析に基づいたルールで行われてきたが、真核生物のゲノム編集においては、クロマチン構造におけるDNAアクセサビリティーの視点からの分析が必要である.研究チームは今回、クロマチン構造の基本ユニットであるヌクレオソームがCas9によるDNA認識を阻害するという仮説をin vitro ならびにin vivo で検証した.
  • K562細胞株においてdCas9-KRABを発現させたCRISPRiによるゲノムスケールでの30回以上のスクリーニングから得られたデータセットから算出したsgRNAの活性度(activity scores)曲線がゲノムに沿って、〜190bp間隔のピクークをもつ周期性を示した.この曲線は、ENCODEコンンソーシウムのMNase-seq(Micrococcal nuclease digestion coupled with high-throughput sequencing; 解説Cell-Innovationサイト)データから得られるヌクレオソームの占有率曲線と相補的であった(挿入図参照).すなわち、ヌクレオソームの占有率が高い領域を標的とするCRISPRi sgRNAs、また、活性のあるCas9はほとんど得られなかった.
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  • In vitro 実験で、ヌクレオソーム形成がDNAヘのdCas9結合およびCas9によるDNA切断を直接的に阻害する一方で、クロマチンリモデリング因子yChd1を加えることで、Cas9がヌクレオソーム結合DNAにCas9がアクセス可能になることを見出した.したがって、CRISPR/Casシステムによるクロマチン領域の編集をin vivo で実現できる可能性がある.