1.[レビュー]キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-Ts)療法と免疫チェックポイント阻害療法の併用による癌療法
 [出典]
 [併用療法への期待]
  • 2017年FDAは2種類のCD19特異的 CAR-T療法を承認した(*)CAR-T療法は著効を示すが、内在T細胞と同様に、腫瘍微小環境の免疫チェックポイントの存在により、効用を失う。加えて、CAR-Ts自身が、PD-1をはじめとする免疫チェックポイントを発現することが知られてきた。一方で、免疫チェックポイント阻害剤によって、CAR-Tsが腫瘍障害性を回復する結果も報告されている。
  • (*)再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の小児および若年成人を対象とするノバルティスのtisagenlecleucel (CTL019) ;再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の成人を対象とするカイトファーマ(ギリアド・サイエンシズ)のaxicabtagene ciloleucel (KTE-C19) 。[参考図]第2世代CARの構成(下図左Figure 1の左側と、PD-1をはじめとする免疫チェックポイント例(下図左Figure 1の右側)
CAR-T 1 CAR-T 2

 [併用療法:コンビネーションとビルトイン(上図右 Figure 2参照)]
  • マウスモデルおよび治験(出典 Table 1)おいて、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を組み合わせることでCAR-T療法がより腫瘍細胞障害性が高まることが示されている。
  • In situでの抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、ドミナントネガティブ受容体などをin situで発現させる手法や、shRNAまたはCRISPR/Cas9によるPD-1のノックダウン/ノックアウトによるCAR-T活性化の研究・治験も進んでいる。
[次世代CAR-T]
  • CAR-Tの自己応答性TCRを標的とするTALENやCRISPR/Cas9による自己免疫応答の回避、CRISPR/Cas9によるTCRと複数の免疫チェックポイントの同時破壊の研究・治験も進められている。(CRISPR_BIOブログ関連記事 2017/11/22「内在TCRsをCRISPR/Cas9で除去すると、遺伝子改変T細胞免疫療法が強化される」)
  • CRISPR/Cas9を利用してC19特異的CARをTRAC遺伝子座にノックインすることで、CARの発現を均一にし、マウスにおいて従来のCAR-Tよりも強力な抗白血病活性を示し、T細胞の分化と疲弊を遅れることが報告された。通常のCAR-Tは17日で50%がT細胞疲弊マーカー(PD-1、LAG-3およびTIM-3)を発現するが、T細胞疲弊マーカーを発現するTRAC-CARは2%未満であった("Targeting a CAR to the TRAC locus with CRISPR/Cas9 enhances tumour rejection" Nature 2017)。
 [PD-1以外の免疫チェックポイント]
  • LAG-3;TIM-3;CTLA-4;SHP-1;アデノシン A2a受容体
2.[プロトコル]CRISPR/Cas9を介した相同組換え(HR)によるヒト造血幹細胞(HSCs)のゲノム編集
  • [プロトコル] Bak RO, Dever DP, Porteus MH. "CRISPR/Cas9 genome editing in human hematopoietic stem cells" Nat Protoc. 2018 Feb;13(2):358-376. Published online 2018 Jan 25.
  • [原論文] Dever DP, ~, Porteus MH. "CRISPR/Cas9 β-globin gene targeting in human haematopoietic stem cells" Nature. 2016 Nov 17;539(7629):384-389. Published online 2016 Nov 7.
  • Matthew H. Porteus (YouTube動画-音声あり)らが2016年にNature誌にて発表した原論文(*)に由来するプロトコル詳細(sgRNAとHRドナーの設計から始まり、rAAVによる送達、HR細胞の濃縮、アッセイまで);in vitro実験3週間で可能;HSCsの免疫不全マウスへの移植実験は16週が目処。
  • (*)鎌状赤血球症(SCD)やβ-サラセミアのような異常ヘモグロビン症は、β-グロビン(HBB )遺伝子の変異が病因であり、患者は世界的に数100万人に及ぶ。患者由来の造血幹細胞(HSC)の遺伝子変異をex vivo で修復し、自家移殖することで、異常ヘモグロビン症を治療できる可能性がある。
  • 研究チームは今回、患者由来HSCに、Cas9リボ核タンパク質(RNP)をエレクトロポレーションし、修復用相同テンプレートをアデノ随伴ウイルスで送達し、相同組換え修復機構を介してHBB 遺伝子変異を修復した。
  • HSCは分化し培養中に増殖性を徐々に失っていく。修復用テンプレートを送達しCas9 RNPをエレクトロポレーションしてから4日後と18日後の遺伝子変異が修復されている細胞(以下、修復細胞)の割合が相関する実験結果を得た上で、早期にFACSまたは磁気ビーズ法によって修復細胞の割合が85%を超えるまでエンリッチしたHSCとprogenitor(前駆)細胞(HSPCs)集団を選別し、NSGマウスへの移植に使用した。
  • エンリッチしたHSPCs集団を移植したNGSマウスにおいては、移植から16週間後も治療効果を示すに十分な修復細胞が存在していた。
3.CRISPR/Cas9による機能ゲノミクス:骨髄増殖性腫瘍患者に見られるカルレティキュリン(CALR)遺伝子変異
  • [出典] Abdelfattah NS, Mullally A"Using CRISPR/Cas9 Gene Editing to Investigate the Oncogenic Activity of Mutant Calreticulin in Cytokine Dependent Hematopoietic Cells" J Vis Exp. 2018 Jan 5;(131).
  • 骨髄増殖性腫瘍患者においてindels変異が起きているカルレティキュリン(CALR)遺伝子の領域に相当するマウスカルレティキュリン(Calr)遺伝子座の部位を標的とするCRISPR-Cas9システムを、インターロイキン3依存性マウスpro-B細胞株(Ba/F3)に送達し、表現型を分析