• [出典] "High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer’s disease" Nature 2018 Jan 31. Nakamura A, Kaneko N, Villemagne VL, Kato T, Doecke J, Doré V, Fowler C, Li Q, Martins R, Rowe C, Tomita T, Matsuzaki K, Ishii K, Ishii K, Arahata Y, Iwamoto S, Ito K, Tanaka K, Masters CL Yanagisawa K.
  • ADの最初期におこる病理的特徴とされている脳でのアミロイドβタンパク質(Aβ)沈着はこれまで、PET画像や脳脊髄液中のアミロイドβ量から判定されてきた。例えば、リガンドとしてPittsburgh Compound-B(PIB)を用いるPETによる超早期診断が試みられてきた。また近年、血漿中のアミロイドβやアミロイドβ42/40比をバイオマーカーとする非侵襲的なリキッドバイオプシーの研究開発が進められているが(例:Sci Rep 2017Alzheimers Dement (Amst), 2017)、臨床応用可能な段階には至っていなかった。
  • 今回、国立長寿医療研究センター、島津製作所、都健康長寿医療センター研究所、東京大学、京都大学、近畿大学ならびにオーストラリアAIBL研究プロジェクト関係の研究グループは、免疫沈降(IP)法と質量分析法(MALDI–TOF: AXIMA Performance, Shimadzu/KRATOS)を組み合わせた分析法に、3種類のバイオマーカー(アミロイドβ前駆体タンパク質 (APP)669–7111–42の比と1–401–42 の比;2種類の比を複合)を組み合わせたリキッドバイオプシーによって、脳内Aβ蓄積を精密に判定が可能なことを示した。
  • 認知能力が正常、軽度認知障害(mild cognitive impairment)およびADを含む日本人121人の探索群(discovery cohort)およびオーストラリア人252人の検証群(validation cohort)を対象として、脳のAβ沈着の有無について、Aβ-PET可視化からの判定と、リキッドバイオプシーによる判定を比較対照(検証群のうち141人についてはPIB-PETにて判定)し、3種類がいずれも脳内Aβ量判定バイオマーカーとして高性能であることを見出した。中でも、複合バイオマーカが、極めて高いAUCsを(分類器の性能を示す指標)示した。
  • 3種類のバイオマーカはまた、PETから推定したAβ量および脳脊髄液中の 1–42レベルとも高い相関を示した。さらに、新たなコホート、AD患者31人(22人 Aβ+;9人 Aβ-  /PIB-PETで判定)とAD患者ではない20人(8人Aβ+;12人 Aβ-)、について、複合バイオマーカの感度と特異度がそれぞれ96.7%と90.2%であり、51人のAβ有無の判定精度が90.2%に達した。
  • 今後、時系列解析や、手法の国際的な標準化などを経て、IP-MSリキッドバイオプシーが、ADの超早期診断や日々の経過診断および創薬に貢献していくことを期待できる。