(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/31から転載)


  • [出典]Sarah A. Stanley et al. "Bidirectional electromagnetic control of the hypothalamus regulates feeding and metabolism." Nature. Published online 2016 Mar 23.
  • Corresponding author: Jeffrey M. Friedman (Rockefeller U.)
  • Friedmanらは2015年に、鉄貯蔵タンパク質フェリチン・ナノ粒子を非選択的カチオンイオンチャネルの一種TRPV1(Transient receptor potential channel subfamily V member 1)に係留することで、電磁波(ラジオ波)または磁場によるTRPV1の活性化を介して、Caイオンの流入と遺伝子発現を調節可能なことを示した.今回は、この磁気遺伝学の手法の汎用性を検証することを目的として神経細胞の活性化に加えて阻害を試みた.具体的には、満腹中枢が存在する視床下部に存在するグルコース感知ニューロンを標的とした.
  • 電磁波または磁場によるTPRV1制御の準備
    • 活性化:Creをグルコース感知ニューロンで発現しているマウス(GK-Creマウス)の視床下部腹内側核(ventromedial hypothalamus: VMH)に、Cre依存で発現する抗GFP-TRPV1/GFP-フェリチンを送達.
    • 活性抑制:TRPM2をカチオンチャネルから塩素チャネルに変換する変異導入にならって、TRPV1のS6領域に変異(I679K)を導入して作出したTRPV1mutantを作出し、抗GFP-TRPV1mutant/GFP-フェリチンのコンストラクトを送達
  • 電磁波または磁場によるTPRV1制御の効果
    • 活性化の効果:血中のグルコース上昇・インスリン半減・グルカゴン増加;摂食亢進;細胞内カルシウムイオン濃度上昇
    • 活性抑制の効果:血中のグルコース減少・インスリン増加・グルカゴン一定:摂食抑制;肝臓グルコース-6-ホスファターゼの減少
  • ラジオ波遺伝学(radiogenetics)であり磁気遺伝学(magnetogenetics)であるこの手法は、光遺伝学に比べて非侵襲的であり、化学遺伝学(designer receptors exclusively activated by designer drug: DREADDs)よりも反応が速く、光遺伝学や外来性のナノ粒子を利用する手法が局所的になるのに対して、分散した細胞群も操作可能である.
  • [CRISPR_BIO 注] 磁気遺伝学関連ブログ記事 神経系を磁気で制御可能にする合成イオンチャネル" Magneto2.0"