• 出典:"The cryo-electron microscopy structure of huntingtin" Gun Q, ~ Baumeister W, Fernández-Busnadiego R, Kochanek S. Nature. 21 Feb 2018.;EMDB-3984/PDB-6EZ8:Human Huntingtin-HAP40 complex structure (4Å分解能)
  • ハンチントン病は、Huntingtin (HTT)タンパク質遺伝子のアミノ末端におけるポリグルタミンの過剰な反復によって引き起こされることが明らかになっている。また、HTTタンパク質が、胚発生に必須であり、小胞体輸送、エンドサイトーシスおよび転写調節といった多様な細胞活動にも関わり、また、タンパク質間相互作用ネットワークにおけるハブことも示唆されているが、HTTが帯びている生物機能の全貌は未だ明らかになっていない。
  • 今回、MPI BiochemistryとUlm大学の研究チームは、ヒトHTTタンパク質全長の立体構造モデルをクライオ電顕単粒子構成法により構築し、HTTの生物機能解明ひいてはハンチントン病治療標的の解明の構造基盤を築いた。
  • これまで、HTTは巨大(348 kDa)かつフレキシブルなことで立体構造解明を拒んできたが、研究チームはHTTを安定化するタンパク質HTT-associated-protein 40 (HAP40)を同定することで、HTTとHAP40の複合体の構造を分解能4Åで再構成するに至った。
  • HTTはほとんどαヘリックスであり、クライオ電顕像にモデルを重ねた下図にあるように、カルボキシ末端ドメイン(図中 HTT C-HEAT)とアミノ末端ドメイン(図中 HTT N-HEAT)を第3のドメイン(図中 HTT bridge)が連結した形をとり、その間にHAP40が入り込んむことで複合体が形成されたことが明らかになった。
The cryo-electron microscopy structure of
  • ここで、C-HEATドメインは2,092–3,098の残基/HEATリピート12回、N-HEATドメインは91-1,684残基/HEATリピート21回、bridgeドメインは1,685-2,091残基/αヘリックスタンデム反復6回、にそれぞれ対応する。HAP40もHTT同様ほとんどαヘリックスであるが、HEAT繰り返しではなく酵母の細胞周期タンパク質のタンパク質相互作用モチーフとして同定されたTPR(tetratricopeptide repeat)様の構造をとっていた。なお、HTTと相互作用するタンパク質はHTTのN末端ドメインに結合することに対して、HAP40は3ドメインが揃ったHTTにのみ結合し、HTTの安定化に寄与した。
  • [注]今回の構造モデルで最終モデルにおいて表現されなかった領域が多々あることに留意が必要:HTT (1–90, 323–342, 403–660, 960–977, 1,049–1,057, 1,103–1,120, 1,158–1,222, 1,319–1,347, 1,372–1,418, 1,504–1,510, 1,549–1,556, 1,714–1,728, 1,855–1,881, 2,063–2,091, 2,325–2,347, 2,472–2,490, 2,580–2,582, 2,627–2,660, 2,681–2,687, 2,926–2,944 and 3,099–3,138);HAP40 (1–41, 217–257, 300–313 and 365–371)