[crispr_bio注]ブログ記事の文字数制限のため、本記事は多重薬理に基づくGPCR創薬の構造基盤(1/2)からの続きとなります。

5-HT
2Cセロトニン受容体 
  • 5-HT2Cセロトニン受容体 は、5-HT2C受容体作動薬lorcaserin (Belviq)の例にあるように肥満症治療の標的であるが、うつ病、統合失調症 、薬物依存症などの疾患の治療標的でもありえる。5-HT2C受容体作動薬の開発は極めて困難であり、また、5-HT2Cと密接に相関している  5-HT2A5-HT2B受容体に対するオフターゲット作用を介して、それぞれ幻覚や心弁膜症を引き起こす。5-HT2C受容体にはRNA編集を介して数種類のアイソフォームが存在し、編集を受けなかったアイソフォーム (INI: non-edited isoform)は恒常的な高活性を示す。
  • セロトニン受容体の構造についてはこれまでに、 5-HT1Bおよび 5-HT2B受容体とエルゴタミンとの複合体構造と、 5-HT2B受容体とLSDの複合体構造が解かれている。エルゴタミンは、LSDを含む多彩な薬剤に共通のエルゴリン骨格をコアとし、各種セロトニン受容体に加えてアドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ヒスタミン受容体、ムスカリン受容体およびオピオイド受容体にも作用し (promicuous)、  5-HT2Bセロトニン受容体に作用して心弁膜症を誘導するなど重篤な副作用を伴う。エルゴタミンに対して、定型抗精神病薬リタンセリン5-HT2C受容体選択的逆作動薬 (インバースアゴニスト)であり、promiscuousなクロザピンにも見られる4‐ベンジリデンピペリジン骨格をコアとしている。
今回の成果
  • 上海科技大学をはじめとする中・米・デンマーク・スイスの国際研究チームは今回、X線結晶構造解析によって、5-HT2C受容体のINIアイソフォームと作動薬エルゴタミンおよび逆作動薬リタンセリンとの複合体の構造を解き、5-HT2CGPCR
    エルゴタミン(ERG)が結合した活性と見られる状態とリタンセリンが結合した不活性状態のコンフォメーションの比較解析から、ERGとリタンセリンの4‐ベンジリデンピペリジン骨格にGPCR多重薬理をもたらす構造上の特徴およびpromicuousな4‐ベンジリデンピペリジン骨格を帯びているリタセリンに選択性をもたらす特徴を明らかにした(以下の、参考図リンク先を参照)。
参考図