出典
D2 Dopamine Receptor Bound to the Atypical
背景
  • 統合失調症 (schizophrenia)の治療は、D2Rに対する拮抗作用を持つ抗精神病薬の処方が頼りである。近年、従来の薬剤よりも副作用が軽減され、陰性症状にも有効とされるリスペリドンといった非定型抗精神病薬と称される第2世代抗精神病薬が開発されてきたが。しかし、D2R阻害薬がD2R以外のGPCR(ドーパミン受容体、セロトニン受容体、ヒスタミン受容体、αアドレナリン受容体など)と相互作用する (オフターゲット) ことから発生する副作用が、依然として課題として残っている。
  • D2Rは予測できない変化を起こしやすいタンパク質であり、これまで、薬剤と結合した状態での構造が解かれていなかった。UNCとUCSFの研究チームは、D2Rとリスペリドンの複合体構造を分解能2.867Åで解き、D2R阻害剤の選択性を高める手がかりを明らかにした。
  • D2Rの内在性リガンドは神経伝達物質ドーパミンである。ドーパミン受容体は5種類 (D1様受容体ファミリーのD1RとD5R;D2様受容体ファミリーの D2R、D3RおよびD4R)が知られているが、統合失調症の陽性症状 (妄想、幻覚、思考障害など) の改善には、D2R阻害が必要かつ十分と見られている。また、D3R特異的あるいはD4R特異的化合物は開発され、D3Rとエチクロプリドの複合体構造D4Rとネモナプリドの複合体構造も解かれていた。一方で、D2Rに対して高選択性を示す(オフターゲットが最小限の)薬剤の開発は遅れており、D2Rと薬剤との複合体構造も解かれていなかった。
成果
  • 研究チームは今回、D2Rとリスペリドンの複合体構造から、リスペリドンのベンゾオキサゾール基が、内在基質ドーパミンが結合するサイト (オルソステリック部位)の下へと伸びており、D3RとD4Rには見られない疎水性ポケットに深く入り込み、また、オルソステリック部位の上に伸びているポケットにテトラヒドロピリドピリミジノン基が収まり、2種類の細胞外ループのコンフォメーションがD3RおよびD4Rと大きく異なることを、見出した。また、リスペリドンの結合部位のすぐ上に存在し、D3RとD4Rには存在しない疎水性のセグメント (パッチ)が、リスペリドンのD2Rからの遊離 (ひいていは結合時間)を制御しているという仮説のもと変異導入実験を行い、結合時間の短い薬剤による副作用である錐体外路症状 (EPS)の低減を論じた。
B. L. Roth研究室最新論文
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