[crisp_bio注 2018/05/09にAddgeneプラスミド関連ツイートへのリンク追加]
出典
背景
  • タンパク質間相互作用 (PPI)はほとんど全ての細胞機能の基盤である。PPIは、強い相互作用あるいは安定な相互作用から弱い相互作用あるいは一時的な相互作用まで、多様な相互作用が織りなすネットワークを形成する。近年、この複雑なネットワークのマッピングが、アフィニティー精製質量分析 ( affinity purification mass spectrometry, AP-MS)と BioIDのような近位依存性標識を組み合わせることで可能になった。
  • AP-MSは、ベイト(bait)タンパク質にエピトープ・タグを融合することでベイトに結合するプレイ(prey)タンパク質を捉えていく。エピトープ・タグとしてこれまでFLAG3, His4, MYC5, HA6, GFP7、Strepなどが開発されてきたが、生理的条件下で高純度タンパク質の回収が可能でありまたビオチン競合溶出が可能なStrepタグがAP-MSのゴールドスタンダードになっている。
  • BioRADでは、ベイトタンパク質にビオチン・リガーゼ(BirA* (Arg118Gly変異体))を融合し、標識半径10 nmの範囲のタンパク質のアミン基ビオチン化を経てプレイタンパク質を捉えていく。BioIDによって弱い相互作用そしてまたは一時的相互作用を検出可能であるが、直接結合に加えて間接的にベイトタンパク質に結合するタンパク質も含まれる。ベイト・タンパク質の過剰発現に起因する見かけ上の相互作用を排除するために、大規模相互作用プロテオミクではFlp-In T-REx 293細胞株が利用される。
  • AP-MSとBioIDを併用することでハイスループットかつ高精度なPPI解析が可能になるが、これまでは大量の発現コンストラクトと細胞を必要とする難点があった。
効率的なパイプライン構築とMACタグ
  • Markku Varjosaloが率いるヘルシンキ大学の研究チームは今回、Gateway®コンパティブルなタグ、MAC (Multiple Approaches Combined)、を開発し、共通のMACタグと共通の親和性試薬(Strep-Tactin®) で、AP-MSとBioIDをサイド・バイ・サイドで実行可能とするパイプライン(下図Fig. 1参照)を確立し、PPI解析に必要な細胞数の半減とデータ再現性の向上を実現した。
MAC-tag 1
  • すなわち、Macタグを融合したベイトタンパク質を発現する細胞集団を用意し、ストレプトアビジンで1段階精製し、AP-MS用とBioID用に分割し、BioID用にはさらに50μMビオチンを添加し、MS後、双方のデータを統合する。Fig.1 ではMacタグは、StrepⅢタグとBirA*に加えて、ChIP-seqとXL-MSへの展開も可能とするHAタグで構成されている。
MACタグの実証実験
  • 18種類の細胞内局在マーカタンパク質を対象とする実験において、MACタグで標識したタンパク質の局在とin vivoビオチン化されたタンパク質 (ベイトと相互作用するインタラクター(interactors))の局在を同定し、AP-MSからのデータとBioIDからのデータを統合(下図 Fig 3 右上のベン図参照)したPPIマップを作成。
Mac-tag 3
  • 相互作用情報からマーカタンパク質の細胞内での機能も同定
  • 18種類のマーカの局在とタンパク質間相互作用1,911種類に基づき、細胞内分子環境参照マップを構築 (reference molecular context map; 上図 Fig 3. e)。このマップを基盤として新たに定義した'localization score'を計算することで問い合わせタンパク質の細胞内局在を同定可能とする‘mass spectrometry (MS) microscopy’も開発・提供
  • 18種類のマーカ以外に、4種類のキナーゼ (AURKB, CDK7, CDK8ならびにGSK3B)、新たな細胞内局在マーカ2種類 (BET1とRAB5A)を対象とする実験と、既報のBioID由来相互作用データで、MS microscopyの性能を検証。さらに、ミトコンドリアのシアン耐性呼吸酵素 (AOX)を含む13種類のミトコンドリアタンパク質の局在もMS microscopyで同定。
  • 転写因子TFIIHと転写メディエーター複合体をモデルとして、AP-MSとBioIDの一体化によって複合体内部でのサブユニット間の関係を明らかにできることを示した(下図Fig. 7参照)。
MAC-tag7
  • Addgene関連ツイート(2018/05/09追記)