1.CRISPR RNAsに架橋化核酸を組込むと、Cas9のオフターゲット編集が抑制される
  • "Incorporation of bridged nucleic acids into CRISPR RNAs improves Cas9 endonuclease specificity" Cromwell CR,~ Hubbard BP. Nat Commun. 13 April 2018.
  • Cas9のDNA切断の選択性は標的領域の配列と結合するcrRNA配列に依存する。アルバータ大学とソウル国立大学の研究とチームは今回、野生型RNAよりも安定性と結合親和性が向上している架橋化核酸 (Bridged Nucleic Acid: BNA) をcrRNAの特定の位置に挿入することで、Cas9によるDNA切断のオフターゲット編集をin vitroでも細胞内でも大きく抑制可能なことを示した。具体的には第1世代BNAに当たるLocked Nucleic Acid (LNA)と次世代架橋化核酸 (Bridged Nucleic Acid: BNA) '2′,4′-BNANC[N-Me]' を試行した (下図左Fig.1-a)。
  • 一分子FRET実験により (下図右Fig. 4-a)、’BNANC’組込によってCas9はオフターゲット配列上で“open”コンフォメーションと“zipped”コンフォメーションの間を高頻度で遷移するようになり、DNA切断可能な“zipped”コンフォメーションの状態をとる時間が短縮され (下図右 Fig.4-c,d)、オンターゲット配列での切断への選択性が高まる。
Incorporation of bridged nucleic acids -1 Incorporation of bridged nucleic acids -4
2.[プロトコル]アレイ型とプール型CRISPRゲノム編集実験の設計・実行・解析
  • "Integrated design, execution, and analysis of arrayed and pooled CRISPR genome-editing experiments" Canver MC, ~ Pinello LC. Nat Protoc. 12 April 2018.
  • アレイ型sgRNAsまたはプール型sgRNAsのライブラリーに基づくCRISPR技術は強力なゲノム編集ツールである。オンターゲット編集の最適化とオフターゲット編集を最小限にすることを目指したsgRNA設計コンピュータプログラムが多数開発され、ゲノム編集実験から生産されるディープシーケンシングデータ (以下、出力)を解析するコンピュータプログラムも多数開発されてきた。しかし、これらのプログラムは互いに独立に個別に開発されてきており、また、研究室での実験環境に簡単には融合できないものが多い。
  • Luca Pinello (MGH-HMS)を責任著者とするチームは今回、sgRNAの設計・評価およびクローニングを支援するin silicoツール CRISPOR(http://crispor.org)、実験、および、出力を解析するin silicoツールCRISPResso(http://crispresso.rocks/)を統合的かつ簡易に利用可能とする詳細なプロトコルを発表した。このプロトコルによって、非専門家が4〜5週間の実験と1〜2日の計算機処理によってCRISPRゲノム編集実験を済ませることができる。
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