出典
  • "Controlled cycling and quiescence enables homology directed repair in engraftment-enriched adult hematopoietic stem and progenitor cells" Shin J, ~ Corn JE. bioRxiv Posted April 13, 2018.
背景
  • 造血幹細胞 (HSCs)の遺伝変異が引き起こす重篤な複合型免疫欠損や鎌状赤血球症に対する理想の療法は、自己増殖能と多分化能を備えた正常な長期造血幹細胞の移植 (Long-Term engrafting HSC: LT-HSC)である。
  • CRISPR/Cas9によるDNA二重鎖切断 (DSB)と細胞に内在するDSB修復機構を利用することで、遺伝変異を人為的に修復することが可能になってきたが、HSCsにおけるDSB修復機構解明は進んでいなかった。Institute/UC Berkeleyの研究チームは今回、CD34陽性HSPCsの混合細胞集団を対象として、CRISPR/Cas9によりDSBを誘導し、次世代シーケンシングとFACSを組み合わせて各種細胞型におけるDSB修復過程と細胞周期の相関を探った。
成果
  • CRISPR誘導DSBは、CD34陽性HSPCsのさまざまな細胞型においてNHEJによって修復された。HDRによるDSB修復は、比較的分化した細胞と静止期から抜け出した免疫表現型からみて未分化な細胞で発生し、静止状態の未分化細胞では見られなかった。また、GSK-3とmTORを阻害する低分子を組合わせて、CD34陽性HSPCsを静止期に誘導すると、全ての細胞型においてHDRが失われた。
  • 先行研究から、in vitro培養時にCD34陽性HSPCsにおいて高効率なHDRが比較的短時間発生するが、長期のin vivo移植ではHDRが極端に低下し、この現象は、Cas9、gRNA、DSB修復用HDRドナーには依存しないことが、報告されていた。今回得られた知見から、in vivoでHDRが失われる現象は、本来HDRが発生しない静止期にある幹細胞集団に由来することが示唆される。
  • HSCsの幹細胞性は静止状態で維持されていることから、 LT-HSCsにおいて、幹細胞性の維持とHDRによる遺伝変異修復の維持を両立させることは、二律背反的である。この課題に対する解として、研究チームは、HSPCsが細胞周期の静止期 (G0期)から抜け出すように誘導し、ゲノム編集を加えてHDRアレルを蓄積し、その後、前述化合物と共に培養して静止期に戻すことで (re-quiescence strategy)、結果的に、静止状態で幹細胞性を維持している細胞集団においてHDRを6倍まで亢進する手法を開発した。
参考