出典
  • [論文] "Cracking the DNA Code for V(D)J Recombination" Kim MS, Chuenchor W, Chen X, Cui Y, Zhang X, Zhou ZH, Gellert M, Yang W. Mol Cell. 2018 Apr 19;70(2):358-370.e4. Published online 2018 Apr 5.
  • [構造] PDB-6CIL Pre-Reaction Complex (PRC) (intact/intact);PDB-6CIK PRC (intact/nicked);PDB-6CIM PRC (nicked/intact);PDB-5ZDZ Hairpin Forming Complex (HFC), RAG1/2-Nicked 12RSS/23RSS complex in Ca2+;PDB-5ZE0 HFC complex (dideoxy, Mg2+);PDB-5ZE1 HFC complex (Mn2+, substrate);PDB-5ZE2 HFC complex (Mn2+, hairpin product);PDB-6CG0/EMD-7470 (3.17Å) HFC complex (E962Q, Ca2+);PDB-6CIJ/EMD-7480(3.90Å) HFC complex (E962Q, Ca2+) 
背景
  • 脊椎動物の獲得免疫応答を担うV(D)J遺伝子再構成は、リコンビナーゼのRAG1/2ヘテロ二量体が、V, D, Jの各遺伝子セグメントに隣接する一対の特異的な塩基配列(recombination signal sequences: RSS)を認識することから始まる。
  • RAG1/2は、7量体 (CACAGTG) 、12-bpまたは23-bpのスペーサ、および9量体 (ACAAAAACC)で構成されるRSSのペア、すなわち12 RSSと23 RSSのペア、に限って(12/23 rule; YouTube解説動画~6分 )、それぞれのRSSに結合する。
  • RAG1/2-12 RSS複合体とRAG1/2-23 RSSの複合体が結合していくことで、組換え対象の遺伝子セグメントが近接し、遺伝子セグメントとRSSの間にニックが入り、遺伝子セグメントからRAG1/2-RSS複合体が切り離され、それぞれの遺伝子セグメント末端にDNAのヘアピン構造が形成され、RSS末端にはDSBが残る。
  • その後、RAG1/2以外の酵素群が関与してそれぞれのセグメントのDNAヘアピンが開裂し、DNA修復過程を経て、2つのセグメントが結合され遺伝子再構成が完了する。ペアのRSS末端は、結合して環状DNAを形成するが、遺伝子再構成には関与しない。(VDJ遺伝子再構成 YouTube解説動画~2分)。
成果
  • 米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のMin-Sung Kim, Mikalai Lapkouski, Wei Yang、Martin Gellertらの研究チームは、RAG1/2と切断前のDNAおよびヘアピンDNAとの複合体の構造を、X線結晶構造解析とクライオ電顕法で決定し、RAG1/2がくるみ割りのように開閉することでDNAに結合してDNA開裂に至ること、その際、12-RSSと23-RSSがそれぞれ60°と150°と大きく折れ曲ること、また、DNAヘアピンの構造とヘアピン開裂の過程など、RAG1/2を介したVDJ遺伝子再構成の素過程を詳らかにした (原論文 Figure 7. Cartoon Diagrams of the Reaction Process of RAG1/2 from the Apo Form to the PRC and the HFC 参照)
  • また、クライオ電顕法とX線結晶構造解析のそれぞれの特徴も論じた。
関連文献 (2018/08/16追記)