[crisp_bio注] 2018-04-30:第2項目に追記
1.[NEWS & VIEWS] 新たなバクテリアの防衛システム
  • [出典] "Mining for novel bacterial defence systems" Barrangou R, van der Oost J. Nat Microbiol. 09 April 2018.
  • メタゲノムの'dark matter'の解析から、バクテリアのファージ感染に対する新たな防衛システムが同定されてきている。これらの防衛システムは、CRISPRがそうであったように、分子生物学の新たなツールになる可能性を秘めている。
  • バクテリアとファージの軍拡競争の過程で生まれて来たバクテリアの防衛システムとして、制限修飾系 (restriction–modification: R-M)、不稔感染 (abortive infection: Abi)、CRISPR–Cas、ArgonauteBREX (bacteriophage exclusion)、DISARM(defence island system associated with restriction–modification)が報告されてきたが、最近も、Weizmann研究所のSorekらの研究チームが新たな防衛システムを比較ゲノム解析から発見した。当該論文*をR. Barrangou RとJ. van der Oostがハイライト。
  • バクテリアとアーケアの45,000ゲノム、1.2億遺伝子を解析
  • 防衛システムのR-M、CRISPRおよびAbiの同定から'defence island'を同定し、そこから335種類の防衛システム候補を検出後、既知の防衛システムやトランスポゾンなどのフィルターを経て、28候補システムに絞り込み
  • 28候補にクローニングし、E. coliとB. subtilisに導入し、多彩なファージとプラスミドに抗する耐性を示すことを確認、そのうち9種類を詳細に解析して命名:B. subtilis - Thoeris, Hachiman, Shedu, Gabija, Septu, Lamassu;E. coli - Zorya, Kiwa, Druantia (参照:以下のNature Microbiology誌からのツイートの引用)
  • (*) "Systematic discovery of antiphage defense systems in the microbial pangenome" Doron S, Melamed S, Ofir G, Leavitt A, Lopatina A, Keren M, Amitai G, Sorek R. Science. 2018 Mar 2;359(6379). Published online 2018 Jan 25.
  • 関連crisp_bio記事 CRISPRメモ_2018/03/03 - 10."Defense islands”に注目して45,000種を超えるバクテリアとアーケアのゲノムを解析し、微生物の抗ファージ防御システムを網羅的に探索し、9種類の新奇防御システムを実験検証
2.BroadとUCの特許係争、米国での第2ラウンド始まる
  • [出典]"All you need to know for round 2 of the CRISPR patent fight" Begley S. STAT APRIL 27, 2018.:2018年4月30日からワシントンDCの合衆国連邦巡回区控訴裁判所 (U.S. Court of Appeals for the Federal Circuit)にて、口頭弁論が始まる。
  • [出典]"Berkeley Fights Harvard, MIT Over Profits From Gene-Editing Tech" Decker S, Cortez M. Bloomberg 2018 Apr 29.:[特許審査過程] 2012年にUC Berkeley (Jennifer Anne Doudna)とVienna大学 (Emmanuelle Marie Charpentier)  は、任意の生物におけるゲノム編集技術としてCRISPRを特許申請し、その後、CRISPRを特許申請したBroadは、70US$の手数料で"accelerated review"の枠組みで、UC BerkeleyとVienna大学に先行して特許成立を達成;[特許申請内容] UC Berkeleyは、Broadの植物・動物・ヒト細胞におけるゲノム編集はUC Berkeleyの出願に含まれていると主張。Bloombergの記事は、USTPOでの審査時の J. A. Doudnaの “our patent will be for all tennis balls and Broad’s will be for green tennis balls.” を引用した上で、green tennis ballsが金の卵 (where the money is)を産む、と指摘。
  • crisp_bio記事にみるこれまでの経緯
  1. CRISPRメモ_2018/03/03 - 1.欧州における特許係争ではCharpentier / Doudna勢が優勢
  2. CRISPRメモ_2018/01/28 - 2.[特許]欧州特許庁(EPO)Broad特許を無効に
  3. 2017-05-13 CRISPRニュース:CRISPR特許合従連衡(2)
  4. 2017-05-10 CRISPRニュース:CRISPR特許合従連衡
  5. CRISPR特許:USTPOの裁定に抗してUC控訴(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/07)
  6. CRISPRニュース:CRISPR特許係争ヒアリング(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/07)
  7. CRISPR特許について考える(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/15)
  8. CRISPRニュース:特許、泥沼の争いに(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/22)