1.CRISPR/Cas9 HDRを介して哺乳類細胞での抗体ハイスループット・スクリーニングを実現
  • "High-throughput antibody engineering in mammalian cells by CRISPR/Cas9-mediated homology-directed mutagenesis"  Mason DM, Weber CR, Parola C, Meng SM, Greiff V, Kelton WJ, Reddy ST. bioRxiv. Posted March 19, 2018. → Nucleic Acids Res. 2018 Aug 21;46(14):7436-7449.
  • 抗体医薬は、ファージディスプレイや酵母ディスプレイによる抗体の断片 (scFvとFab)の発現とハイスループットスクリーニング、翻訳後修飾であるグリコシル化を加えた全長抗体 (full-length glycosylated IgG (以下、flg-IgG))への変換、さらに、哺乳類細胞における最適化を経て、最終評価段階に辿り着く。このため、哺乳類細胞におけるflg-IgGのハイスループットスクリーニングと最適化が模索されてきた。
  • ETH Zürichの研究チームは今回、Cas9が誘導する二本鎖DNA切断 (DSB)のhomology-directed repair (以下、Cas9-HDR)過程に基づくhomology-directed mutagenesis (HDM)法を開発し、次世代シーケンシング (NGS)の解析と組み合わせて、哺乳類細胞でのハイスループットスクリーニングを実現した。
  • 抗体ディスプレーのプラットフォームは、著者らが先行研究で開発していた抗体の可変領域の改変をCas9-HDRで可能にしたハイブリドーマ 'plug-and-(dis)play (PnP) hybridomas'とした。
  • 一般に効率が低いHDRについては、HDR用のドナーテンプレートとしてdsDNAではなくssODNを利用するなど種々の実験条件を最適化することで、その効率を~35倍近くまで向上させた。
  • ssODNテンプレートとして縮退コドン(NNKとNNB; N=A, C, GまたはT)を帯びたssODNを利用することで、重鎖可変領域 (VH)の相補性決定領域3(以下、CDRH3)を対象として、105の規模を超える変異体ライブラリーを構築し、モデル抗原に対してスクリーニングし、新奇変異体を同定;HDMによってCDRH3に対する飽和突然変異誘発ライブラリーを構築し指向性進化と親和性成熟を実現;HDMを介したdeep mutational scanning (DMS)により、抗体の抗原結合配列ランドスケープを同定
2.シロイヌナズナの機能ゲノミクスの改良
  • "A dual sgRNA approach for functional genomics in Arabidopsis thaliana" Pauwels L, De Clercq R, Goossens J, Iñigo S, Williams C, Ron M, Britt A, Goossens A. bioRxiv. Posted April 9, 2018.
  • ゲント大学を中心とするベルギー・米の研究グループは今回、プロモーターの最適化などによりCRISPR/Cas9によるシロイヌナズナの遺伝子編集を効率化し、T2世代で両アレル・ノックアウト個体を得ることが可能なことを示した。また、遺伝子を一対のsgRNAsで標的することでより信頼性の高い機能喪失実験が可能なことを示した。
3.一組みのCIRSPRシステムを利用することで遺伝子と染色体の環状化をヒト細胞で再現
  • "Circularization of genes and chromosome by CRISPR in human cells" Møller HD, Lin L, Xiang X, Petersen TS, Huang J, Yang L, Kjeldsen E, Jensen UB, Zhang X, Liu X, Xu X, Wang J, Yang H, Church GM, Bolund L, Regenberg B, Luo Y. bioRxiv. PostedApril 19, 2018.
  • 遺伝子疾患や癌において染色体外 (extrachromosomal)の環状DNA (eccDNA)やリング状の染色体が同定されているが、それらの特性を解析可能にする遺伝子工学の手法が存在していなかった。
  • デンマークと中国の研究チームは今回初めて、eccDNAとリング状染色体をヒト細胞で再現し、二重蛍光eccDNAバイオセンサーを開発して、ヒト胎児由来腎臓上皮由来293T細胞とヒト乳腺線維芽細胞にて、eccDNAの動態から始まり、CRISPRによる遺伝子の削除、転座および環状化の動態を追跡した。
4.ゲノムワイドCRISPRiスクリーンにより、E. Coliの必須遺伝子とファージ宿主因子を同定
  • "Genome-wide CRISPR-dCas9 screens in E. coli identify essential genes and phage host factors" Rousset F, Cui L, Siouve E, Depardieu F, Bikard D. bioRxiv. PostedApril 26, 2018.
  • パスツール研究所からの成果;E. coli染色体のサイトをランダムに標的する~92,000 sgRNAsを使用して必須遺伝子を同定、少数ではあるが、鋳型鎖を標的とすると適応度が低下するが暗号鎖を標的とした場合は適応度が低下しない遺伝子も同定;三種類のファージ (ラムダ, T4および186)によってE. coliが溶菌に至るに必須な宿主因子を同定;λファージがパッケージ可能なプラスミドでsgRNAライブラリーをE. coliにデリバーした後に、λファージを感染させる手順で、機能性カプシド形成に必須な遺伝子を同定
5.E. coliのゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーンにより、バクテリアの効率的ゲノム編集を実現する設計戦略を同定
  • "Genome-wide CRISPR-Cas9 screen in E. coli identifies design rules for efficient targeting" Soriano BG, Ng JW, Cui L, Becavin C, Bikard D. bioRxiv. Posted April 30, 2018.
  • Cas9によるバクテリアのゲノム編集がCas9-sgRNAの標的配列に大きく依存することが知られているが、その依存性を決定づける配列の特徴や分子機構はほとんどわかっていない。
  • パスツール研究所の研究チームは今回、ゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーンの結果、染色体上にsgRNAsの分布パターンが存在することを見出した。すなわち、その標的sgRNAsが急速に失われていく領域(~100kb)と数時間維持される領域が存在した。
  • しかし領域のパターンは意外にも、E. coliのクロマチン構造やE. coliの細胞死とも相関せず、gRNAライブラリーをデリバリーするプラスミドのコピー数が、Cas9による切断後、領域に依存することから生じていた。すわなち、特定の領域の切断がプラスミド複製を阻害する一方で他の領域の切断はプラスミドの複製に影響を与えず結果的にコピー数を増した。
  • この興味深い現象の影響を除いた上で、E. coliを破壊するgRNAのニューラルネットワークモデルを構築し、標的配列からCas9の編集効率を予測するWebサイトを構築・公開した。また、編集効率に対して、gRNAの5'末端のGC含量が高くことがポジティブに、5'末端のチミジンがネガディブな影響を与えることを見出した。
  • バクテリアのゲノム編集に適合したgRNAライブラリー設計支援システム Webサイト:CRISPRGp - CRISPR design tools for bacteria
6.CRISPR/Cas9によるショウジョウバエY染色体の部位特異的遺伝子組換え
  • "Site-specific transgenesis of the D. melanogaster Y-chromosome using CRISPR/Cas9" Buchman A, Akbari O. bioRxiv. Posted April 27, 2018.
  • Y染色体はヘテロクロマチン性で反復配列が多く分布しそのシーケンシング遺伝子操作も困難であった。UCSDの研究チームは今回、CRISPR/Cas9が誘導するHDR過程を介して、蛍光標識した遺伝子をY染色体の2箇所に挿入し、このY染色体を利用して、ダウン症などの病因となる稀な染色体不分離 (nondisfunction)の検出と定量化を実現した。
7.CRISPRCloud2:CRISPRスクリーン結果を解析するクラウド環境を構築・提供
  • "CRISPRCloud2: A cloud-based platform for deconvoluting CRISPR screen data" Jeong HH, Kim SY, Rousseaux MWC, Zoghbi HY, Liu Z. bioRxiv. Posted April 27, 2018.
  • ベイラー医科大学など米国研究チームの成果
  • 既存の解析ツールと比較 (Table 1とTable2):caRpools, CRISPRAnalyzeR, MAGeCK-VISPR, PinAPLPy2, HitSelect, ScreamBEAM, PBNPA, sgRSEA
8.CRISPR/Cas9ゲノム編集によって、Aspergillus fumigatusのアゾール耐性獲得に寄与するCyp51A変異を同定
  • "Cas9/CRISPR genome editing to demonstrate the contribution of Cyp51A Gly138Ser to azole resistance in Aspergillus fumigatus" Umeyama T, Hayashi Y, Shimosaka H, Inukai T, Yamagoe S, Takatsuka S, Hoshino Y, Nagi M, Nakamura S, Kamei K, Ogawa K, Miyazaki Y. bioRxiv. Posted May 1, 2018. → Antimicrob Agents Chemother. 2018-08-27.
  • 国立感染症研究所など国内研究グループの成果;抗菌薬ボリコナゾール (Voriconazole)を長期間処方されていた肺アスペルギルス症患者からの分離株で、アゾール耐性に寄与するCyp51AにおけるSNPsを解析:E-testにより、アゾール系抗菌薬 (ボリコナゾールに加えてイトラコナゾールなとポサコナゾール)に対して感受性が低い株がGly138Ser (GGC→AGC) とAsn248Lys (AAT→AAA) の二種類のSNPsを帯びていることを見出した。
  • さらに、CRISPR/Cas9による変異修復と変異導入実験から、Cyp51AにおけるGly138Serの変異がアゾール耐性に寄与していることを特定した。
9.大規模なCRISPRアレイの1段階アッセンブリー法CRATESの開発と利用
  • "One-step assembly of large CRISPR arrays enables multi-functional targeting and reveals constraints on array design" Liao C, Ttofali F, Slotkowski RA, Denny SR, Cecil TD, Leenay RT, Keung AJ, Beisel CL. bioRxiv. Posted May 2, 2018.
  • ノースカロライナ州立大学の研究チームは今回、CRATES (CRISPR Assembly through Trimmed Ends of Spacers)法を開発し、CRISPR12aによる多機能ターゲッティングを実証し、また、gRNAの活性がCRISPRアレイの形態に依存することを見出した。
  • CRATESでは、~60-ntのリピートとスペーサーのユニットを、各スペーサーにおいてgRNA生成時にヌクレアーゼで切り取られる領域内で連結することで、スペーサー7種類までの規模のCRISPRアレイを実現した。
  • CRATESで構築したCRISPRアレイを利用して、E. coliS. cerevisiaeおよび細胞タンパク質合成系の一種であるセルフリー転写-翻訳 (TXTL)システムにおいて、単一のヌクレアーゼ (Cas9、Cas12aの他に、Cas9とCas13aについても)による多重な遺伝子編集と遺伝子発現調節を実現した。
  • さらに、複数のヌクレアーゼで利用可能な複合CRISPRアレイも構築し、Cas9による標的サイトの切断と、不活性化したCas12aによる多重なオフターゲットサイトのブロックとにより、オンターゲットサイトの選択的編集効率を高めた。
  • また、CRATES多重CRISPRアレイにおいて、1スペーサのCRISPRアレイ由来であれば活性なsgRNAが多重CRISPRアレイから生成される場合は活性を失う現象、および、2つのリピート配列に囲まれていないCRISPRアレイ末端のスペーサ由来gRNAがオフターゲット編集を誘導することを見出した。