1.CRISPR-Cas13d RNAガイド・リボヌクレアーゼの構造基盤
  • Cas13dを発見したSlak研究所のチーム*にD. Lyumkisらが加わって、不活性なアポ構造 (分解能 6.5 Å)、二者複合体構造 (crRNAが結合したサーベーランス構造:分解能 3.3 Å)および三者複合体構造 (crRNAと標的RNAが結合した切断活性構造: 分解能 3.4 Å) をクライオ電顕法で再構成;*) 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報
  • 構造再構成に加えて生化学的解析と機能解析を行い、バイローブ構造および、標的RNAの探索・結合・切断の構造基盤であるコンフォメーション変化を明らかにした
  • ツイッター由来の上図は、crRNAが結合した二者構造においてNUCローブとRECロブの間に生成された正に帯電したクレフトに、標的RNAスペーサーが入り込んでcrRNAと結合した三者複合体の模式図
  • さらに、再構成構造をもとに、活性を維持したまた削除あるいは改変可能な領域を同定し、具体的に50アミノ酸を削除し、AAVによるデリバリーをより容易にする小型のC13dを作出。
2.コンディナルノックアウトマウスの1段階作出法’CLICK'
  • "CLICK: one-step generation of conditional knockout mice" 宮坂佳樹 [..] 真下知士 BMC Genomics. 2018 May 2
  • 大阪大学の真下知士らは今回、Cas9 mRNAと2 sgRNAsおよびHDR用の長鎖ssODN (lssODN)により大規模なDNA配列ノックインを可能にした2H2OP (2ヒット2オリゴ法)*を利用して、マウス受精卵へのloxP配列の2箇所同時ノックイン (下図左 Fig. 2 参照)、ひいては効率的なコンディショナルノックアウトマウス作出を実現し (下図右 Fig. 3 参照) 、CLICK (CRISPR with lssDNA inducing conditional knockout alleles) 法と命名した。
Fig 2 Fig 3
3.ヒト集団を対象とする遺伝変異データと遺伝子発現プロファイルに拠るeQTLに対して、細胞集団を対象としたCRISPRi(dCas9-KRAB)とscRNA-seqに拠る'crisprQTL'でエンハンサーと標的遺伝子の相関を解析
  • "crisprQTL mapping as a genome-wide association framework for cellular genetic screens" Gasperini M [..] Shendure J. bioRxiv. Posted May 4, 2018.
  • 下図 (責任著者の一人J. Shendureのツイートを引用)参照
  • K562細胞47,650個のK562細胞集団において、1,119種類のエンハンサー候補を標的とするCRISPRiで遺伝子発現を制御し*、各候補の下流1-Mbpの領域の遺伝子の発現に与える影響を解析**: * 対立遺伝子頻度1.1%に相当する変異導入);** エンハンサー候補と遺伝子17,584組。
  • 105種類の遺伝子の発現を下方制御する128種類のcis crisprQTLsを同定;crisprQTLsは標的遺伝子の近位に集中 (中央値 34.3-Kb)し、H3K27ac、p300および細胞系譜特異的転写因子のChIP-seqのピーク強度と正相関。
4.キャッサバに感染するモザイク・ウイルスの33~48%が、CRISPR-Cas9によるゲノム切断に対する耐性SNPを生成する
  • "CRISPR-Cas9 interference in cassava linked to the evolution of editing-resistant geminiviruses" Mehta D [..] Vanderschuren H. bioRxiv. Posted May 4, 2018. → Genome Biol 2019-04-25.
  • 主食作物の一種であるキャッサバに感染する植物病原DNAウイルスであるAfrican cassava mosaic virusを標的とする実験;CRISPR-Cas9ゲノム編集がウイルス進化を加速するリスクに留意すべき
5.CRISPR/Cas9による標的ゲノム編集による単一遺伝子疾患モデル・ヒト多能性幹細胞 (hPSC)の開発
  • "[UNIT]CRISPR/Cas9‐based Targeted Genome Editing for the Development of Monogenic Diseases Models with Human Pluripotent Stem Cells" Gupta N, Susa K, Yoda Y, Bonventre JV, Valerius MT, Morizane R. Current Protocols in Stem Cell Biology.
  • 一過性発現後の薬剤選択によって、CRISPR/Cas9システムのhPSCヘの導入効率を改善し、フローソーティングの細胞傷害性の問題を回避し、また、単一細胞から多重なモデルhPSCを樹立する手法解説
6.ゼブラフィッシュのスクリーンから明らかにされてきた複雑な脳フェノタイプの細胞過程と分子機構
  • "Chapter 16 – Systematic Screens in Zebrafish Shed Light on Cellular and Molecular Mechanisms of Complex Brain Phenotypes" Melgoza A, Guo S. Molecular-Genetic and Statistical Techniques for Behavioral and Neural Research. 2018 April 27.
  • 次世代シーケンシングとGWASから脳神経疾患と相関する膨大な遺伝変異が同定される一方で、病因変異の特定は進んでいない。
  • 脊椎動物モデルであるゼブラフィッシュの順遺伝学と逆遺伝学による機能ゲノミクス解説(CRISPRによる変異導入とフェノタイプ・スクリーンを含む)