1.HIV-1増殖に必須な調節遺伝子tatrevを標的とするCRISPR/Cas9編集により、ウイルス感染T細胞におけるウイルス複製を阻害

出典
  • "CRISPR/Cas9 system targeting regulatory genes of HIV-1 inhibits viral replication in infected T-cell cultures" Youdiil Ophinni, 井上真里, 小瀧将裕, 亀岡正典 (神戸大). Sci Rep. 2018 May 17;8(1):7784
gRNAの設計と送達
  • tat遺伝子第1エクソンの、N末端酸性ドメイン、保存性が高いRKGLGIモチーフの短いコアドメイン、および両ドメインの中間を標的とする3種類のgRNAs (下図 Figure 1-A 右上);rev遺伝子第2エクソンの、核移行シグナルにおけるアルギニン・リッチなモチーフとRNA結合ドメイン、多量体化ドメイン、およびロイシン・リッチな核外移行シグナル・エフェクタードメインをそれぞれ標的とする3種類のgRNAs(下図 Figure 1-A 右下);計6種類のgRNAsが標的とする配列は、HIV-1の主要なサブタイプ6種類 (A, B, C, D, 01AE, および02AG)97株の間で比較的保存性が高い(下図 Figure 1-B);各gRNAはコトランスフェクションに先立ってlentiCRISPRv2にクローニングし、レンチウルスベクターで標的細胞へ導入
HIV-1
Cas9-gRNAによる遺伝子編集結果
  • TatとRevを安定発現させたHEK293T細胞とHeLa細胞にてTatとRevがほとんど消滅;tat標的gRNAによってHIV-1プロモータによるレポーターのルシフェラーゼ発現が顕著に低減し、rev標的gRNAによってgp120発現が低減
  • Cas9切断部位にはNHEJ修復によるとみられる多様な変異が発生したが、オフターゲット候補部位には変異が見られず、細胞生存性に対する影響も見られなかった。
  • HIV-1持続感染および潜在感染CD4陽性T細胞への導入は、サイトカイン再活性化後であってもHIVコアタンパク質にあたるp24抗原のレベルを顕著に低減;6種類のgRNAsを併用することで低減効率向上。
CRISPR技術によるHIVゲノム編集関連crisp_bio記事
  • CRISPRメモ_2018/04/05 - 6.  [レビュー]HIV持続感染に取り組む:"shock and kill"療法には薬理かCRISPR技術か
  • CRISPRメモ_2018/03/14 - 3. [展望]ウイルス疾患に対するCRISPR/Cas9ゲノム編集 - 無駄な抵抗か?
  • CRISPRメモ_2018/02/02-1 - 2. CRISPR/Cas9によるHIVの治癒(cure)には、ウイルスの多様性を勘案することが必須
  • CRISPRメモ_2017/11/22-1 - 4. [展望]CRISPR-Cas9技術が復活させるTRIM5αを標的とするHIV-1免疫療法;- 5. SaCas9によるCXCR4の遺伝子改変が、HIV-1感染に対する耐性をもたらす
  • CRISPR関連文献メモ_2016/03/16 - 1. [解説] CRISPRシステムによる潜在HIV-1の再活性化
2.モデル生物酵母における高速機能ゲノミクスの基盤構築
  • 出典:"High-throughput creation and functional profiling of DNA sequence variant libraries using CRISPR–Cas9 in yeast" Guo X, Chavez A [..] Church GM. Nat Biotechnol 2018 May 21; bioRxiv 2017 Sep 29. 
  • 明確な遺伝変異を帯びた細胞のライブラリーは機能ゲノミクスを大きく前進させるが、真核生物の変異体ライブラリーの構築は困難であった。遺伝子改変モデル生物として広く利用されている酵母のノックアウトライブラリーも、そのメンバーの多くに意図しない二次的変異が存在することや選択マーカの必要性がもたらす問題が存在した。
  • George M ChurchとAlejandro ChavezらWyss Institute/HMSの研究チームは今回、ハイスループットな酵母変異細胞ライブラリー構築ならびに変異細胞の環境への適応度判定を実現した。
  • ライブラリー構築はCas9切断のHDR修復機構を利用するが、今回の手法は著者らがguide+donor strategyと称した「予め設計した変異を帯びたHDR用ドナーとsgRNAを一対として組み込んだプラスミド」を利用する点が特徴である。この戦略には3つの利点がある (原論文 Figure 1 : Guide+donor genome-editing platform for engineering and phenotypically characterizing programmed mutations in pool 参照):ライブラリーの全ての変異メンバーを1回の反応で生成;guideとdonorが分散しないことから非効率そしてまたは不完全な修復を回避;guide+donorのプラスミドが編集された(変異を誘発された)細胞のバーコードとして機能することで次世代シーケンシングによるハイスループット・フェノタイピング実現
  • 予備実験の結果、当初のguide+donorの環状プラスミドを、選択マーカURA3を除くguide+donorを含む主要な部分を分割し線形プラスミドとして機能可能とし、選択マーカー部分には環状プラスミドへの復元に必要な~150 bpの相同アームを接続する方式を取ることで、形質転換効率が6-14倍になり、目的とした変異が誘導される編集効率が0-30%から80-100%へと向上することを見出した (原論文 Supplementary Figure 1: Enhanced transformation efficiency with engineered guide-donor approach 参照)。
  • ADE2SGS1, SRS2およびARS214遺伝子座への点変異導入、欠失および置換で性能を検証し、Cas9切断部位から遠位での編集効率低下や61-bpを超えると削除効率が低下することを見出す一方で、一定の条件内でいずれの遺伝子座といずれの変異についても90-100%の編集効率実現;1-2塩基のミスマッチに対応するオフターゲット編集非検出
  • DNA損傷修復ヘリカーゼSGS1については、タンパク質全域にわたり隙間なく導入した短い欠失変異および保存性が高い残基に導入した点変異が機能に及ぼす影響を解析し、加えて、酵母ゲノム全域に分散している機能がほとんど不明な100 アミノ酸より短い小規模なオープンリーディングフレーム (smORFs) 315種類を標的とするゲノムワイドでの変異ライブラリーを構築し、さまざまな環境条件下での成長にかかわるsmORFsを同定した。
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