出典
  • "Delivery of a Pro-apoptotic Peptide to EGFR-positive Cancer Cells by a Cyclic Peptide Mimicking the Dimerization Arm Structure of EGFR" 外山 桂, 野村 渉, 小早川 拓也, 玉村 啓和. Bioconjugate Chem. May 15, 2018.
背景
  • チロシンキナーゼ型受容体の一種であるEGF受容体 (EGFR)は多様な細胞で発現し細胞の分化、増殖などに重要な役割を果たしているが、一方で、その遺伝子変異や異常発現は癌の発生と悪化を引き起こす。このため、抗癌剤としてEGFRの細胞外領域を標的とするセツキシマブや、EGFR細胞内のチロシンキナーゼを標的としたゲフィチニブエルロチニブさらにオシメルチニブなどが開発されてきたが、副作用や耐性の発生などの課題さらには医療費の高騰などの課題を伴い、新たなEGFR阻害剤が模索されている。
  • EGFRは二量体化することで活性化する(下図参照)。EGRF
    セツキシマブの抗癌性はEGFに競合してEGFRに結合することでEGFRの二量体化を阻害しかつEGFRを細胞内へ内在化することに拠る。
  • EGFRの二量体化には、リガンド結合時に腕のように伸びる特徴的な構造二量体化アーム(dimerization arm) が重要な役割を果たしている。
成果
  • 東京医科歯科大学の研究チームは、 EGFRの二量体化アームをミミックする環状ペプチド CYBPTTYQMC とその誘導体を作出し、それによってEGFRの二量体化ひいてはEGFRの活性化を阻害可能であることを報告していたが(*)、今回、EGFRの二量体化アームをミミックする環状ペプチドCQTPYYMNTC (1)が、EGFR陽性細胞への細胞内輸送担体足り得ることを示した[* 創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/05/26 - EFGR二量体化を阻害するペプチドからEGRF阻害剤のリード化合物になり得るペプチドを誘導]。
  • アポトーシス促進性ドメイン(PAD)ペプチドであるKLAKLAKは、陽イオン性のために細胞膜透過性を欠きまた癌細胞への選択性も欠いているため、癌細胞の細胞死への誘導などの活用が阻まれていた。
  • 今回、EGFR陽性の肺癌細胞株A549に対してPAD単独の投与は何の影響も及ぼさなかったが、PADペプチドにプロテアーゼで開裂するリンカーを介してペプチド1を結合したペプチド2は、EGFR陽性の肺癌細胞株A549の増殖を顕著に抑制することを見出した。