1.機能喪失 (LOF)実験の3手法、RNAi、架橋型核酸 (LNA)およびCRISPRi (dCas9–KRAB)、のオフターゲット編集を比較評価
  • [出典] "Specificity of RNAi, LNA and CRISPRi as loss-of-function methods in transcriptional analysis" Stojic L, Lun ATL et al. Nucleic Acids Res. 2018 Jun 1.
  • 紡錘体形成に関与し抗癌剤の標的とされている微小管結合タンパク質をコードするCh-TOG/CKAP5遺伝子とlncRNA遺伝子MALAT1のLOF実験の結果を比較検証し、次いで、機能未知、クロマチン修飾因子により転写が活性化され、転写物の翻訳が見られず、核局在化する、といった一定の基準で選択したlncRNAの一種であるSLC25A25-AS1をモデルとしてLNAとCRISPRiによる機能推定を試み、また、RNAiとCRISPRiのオンターゲット編集結果も比較解析した。
  • オフターゲット編集は3手法いずれにおいても発生し、RNAiとLANの方がCRISPRiよりも高頻度であり、RNAiとLNAではオリゴヌクレオチド配列に依存し、CRISPRiでは標的遺伝子の編集に先立ちdCas9-KRABによるトランスクリプトームの擾乱に起因することを見出した。
  • HeLa細胞におけるSLC25A25-AS1のLOF実験において、SLC25A25-AS1のノックダウンの影響を受けた遺伝子群と表現型を比較解析し、LANの結果に基づいて、CRISPRiからは得られなかった結論「SLC25A25-AS1が有糸分裂を制御する」を導いた。
  • RNAiとCRISPRiのオンターゲット編集活性も比較解析し、Ch-TOG/CKAP5に対しては双方とも想定通りの有糸分裂表現型をもたらすが、影響される遺伝子セットはほとんど相互排他的であることを見出した。MALAT1についても同様の結果を得た。
  • これらの結果に基づいて、RNAiとLAN実験での複数種類のオリゴヌクレオチドの利用や、CRISPRiのコントロール実験としてgRNAを伴わないdCas9-KRABの結果を見るなどの、オフターゲット編集の評価法を提案
2.ヒト細胞のゲム編集におけるCRISPR-Casシステム選択ガイド
  • [出典] "Systematic evaluation of CRISPR-Cas systems reveals design principles for genome editing in human cells" Wang Y, Liu KI [..] Tan MH. Genome Biol. 2018 May 29;19(1):62
  • SpCas9、SaCas9、NmCas9、AsCpf1ならびにLbCpf1によるNEHJあるいはHDRを介したゲノム編集効率を比較し、その結果に基づいて、実験目的に合わせたシステムの選択肢を提案 (下図参照)
  • クロマチンアクセシビリティの影響をみるためにHEK293T細胞において発現レベルが大きく異なる (4,000倍)遺伝子の90サイトを標的として実験:小型のSaCas9とNmCas9は大型のCas9よりも遺伝子発現レベルの影響を受けない;Cpf1は、17-ntの相同アームを伴うssODNを利用することで多くの遺伝子座を効率的に精密編集;Cpf1は、非標的鎖のssODNsを好み、SpCas9は標的鎖ssODNsを好む;Cpf1とSpCas9は、5'末端側が長い非対称な相同アームを利用することでHDR効率向上。
Flowchart
3.CRISPR/Cas9によりCHOで遺伝子を多重に過剰発現させるMAARGE法を開発
  • [出典] "A CRISPR/Cas9 based engineering strategy for overexpression of multiple genes in Chinese hamster ovary cells" Eisenhut P, Klanert G, Weinguny M, Baier L, Jadhav V, Ivansson D, Borth N. Metab Eng. 2018 May 28.
  • バイオ医薬品開発に有用なCHOの高性能化を目的として、4種類の遺伝子の組合せ効果を判定可能とするMAARGE (multiplexable activation of artificially repressed genes)法を開発;初期状態では、プロモーターと転写開始点の間に抑制因子 (RE)で転写抑制した3種類の遺伝子を含む4遺伝子を導入し、Cas9によりREを削除することで遺伝子単独あるいは複数遺伝子発現を誘導
4.内在プロモーターとマイクロホモロジー媒介末端結合 (MMEJ)を利用することで、ゼブラフィッシュ遺伝子コーディング配列直下にmCherryをシームレスに導入
  • [出典] "CRISPR/Cas9-based genome engineering of zebrafish using a seamless integration strategy" Luo JJ, Bian WP, Liu Y, Huang HY, Yin Q, Yang XJ, Pei DS. FASEB J. 2018 May 28.
 MMEJ関連crisp_bio記事
5.[特許] DNA-guided CRISPRシステム
  • CRISPR HYBRID DNA/RNA POLYNUCLEOTIDES AND METHODS OF USE. US20180142263
    公開日 2019-05-24. 発明者 May AP, Donohoue PD. 権利者 PIONEER HI-BRED INTERNATIONAL. INC. 
  • DNA-RNAキメラガイド関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/02/02-3 7.crRNA/sgRNAの一部をDNAに置換したDNA-RNAキメラガイドによりオフターゲット作用抑制
6.[ハイライト] 細胞バーコーディングとscRNA-seqによる細胞型同定と細胞系譜追跡の3手法 (LINNAEUS, ScarTrace, scGESTALT)への期待