1.DSB修復パスウエイを標的とする低分子セット“CRISPY mix”を調合、iPSCにおいて、HDRを介したゲノム編集を精密化する
  • [出典] "Targeting repair pathways with small molecules increases precise genome editing in pluripotent stem cells" Riesenberg S, Maricic T. Nat Commun 2018 June 4.
  • 哺乳類ゲノム編集に、「ヌクレアーゼCRISPR/Cas9とCIRPSR/Cpf1またはニッカーゼCRISPR/Cas9nを利用してDSBを誘導し、このDSBを、導入したい変異を帯びたDNAドナーと相同組換え修復 (HDR)パスウエイを介して修復する」手法が、日常的に利用されるようになってきたが、HDRの効率の向上と、indelsの混入などを排除した精度の向上が、課題となっている。
  • マックスプランク研究所の研究チームは今回、DSB修復過程を阻害あるいは亢進する低分子を組み合わせることで (CRISPY mixと呼称)、Cas9nによるiPSCの精密ゲノム編集を2.8-から7.2-倍へと改善し、ひいては、染色体のほぼ50%の領域または細胞内の青色蛍光タンパク質の27%において、目的とした塩基置換を実現した。これらの効率はヒトiPSCsにおいて過去最高である。
  • CRISPY mixを利用することで、Cpf1ヌクレアーゼによる精密ゲノム編集も2.3-から4.0倍になり、染色体のほぼ20%で目的とした塩基置換が実現した。
  • CRISPY mixに利用した低分子は、必ずしも不死化細胞または初代細胞のHDR編集効率を改善しなかったことから、DSB修復過程は細胞型特異的あることが示唆された。
  • [注]今回のHDR編集は、ドキシサイクリン誘導 (iCRISPR)型のCas9nまたはCpf1で誘起した5'末端オーバーハングを、ssODNとして導入したDNAで修復する過程が対象;二種類のヒトiPSCs (男性由来と女性由来)、チンパンンジーiPSCおよびH9 hESCの二種類の細胞型で実験
  • 下図は、DSB修復過程のNHRJとHDRの鍵となる一連のタンパク質とそれを阻害あるいは活性化する低分子の模式図 (低分子原論文のFig.1 )
CRISPY
2.sgRNAsの5'キャップ形成と3'ポリアデニル化がCRISPR-Cas9システムの効率を300倍にまで向上
  • [出典] "5' capped and 3' polyA-tailed sgRNAs enhance the efficiency of CRISPR-Cas9 system" Mu W, Zhang Y, Xue X, Lei L, Wei X, Wang H. Protein Cell 2018 June 4.
  • In vitro転写 (IVT)* sgRNAの安定性を向上させひいてはCRISPR/Cas9システムの効率を改善することを目指した;種々の工夫の中で、mRNAをミミックした掲題改変**が最も効果的 (*adding 5′ cap and 3′ polyA tail to sgRNA: CTsgRNAと命名)
  • K562細胞にエレクトロポレーション後2時間で野生型sgRNAsの3.1倍、12時間後に2時間後の野生型sgRNAsのレベルまで減少
  • CTsgRNAとCas9 mRNAをK562細胞にエレクトロポレーションしindel効率、野生型の15.29%に対して26.90%;ヒト初代T細胞の場合は、野生型sgRNAでは編集非検出に終わったが、CTsgRNAは15.23%の編集効率を達成
  • CTsgRNAは、K562細胞におけるOCT4、NANOGおよびKLF4のdCas9-P65HSF1*による転写活性化を亢進
  • ヒト初代T細胞においても、dCas9-P65HSF1によりOCT4とFOX3の転写活性化を亢進;CTsgRNAのsgRNAをテトラループにMSD-VP64を結合したsgRNA1.1***に変更するなどの最適化を経てOCT4遺伝子の活性を300倍以上まで向上
 参考文献と参考記事