1.[特許公開] Cas9変異体 (HypaCas9)とその利用法
  • [出典] "Reporter Cas9 variants and methods of use thereof" US20180142222. PubDate 2018-05-24. Inventors: Sternberg SH, Doudna JA, Lafrance B, Chen JS. 
  • Assignee: The Regents of the University of California
  関連論文と参考crisp_bio記事
  • HypaCas9 :"Enhanced proofreading governs CRISPR-Cas9 targeting accuracy" Chen JS, Dagdas YS, Kleinstiver BP, Welch MM, Sousa AA, Harrington LB, Sternberg SH, Joung JK, Yildiz A, Doudna JA. Nature. 2017 Oct 19;550(7676):407-410. Published online 2017 Sep 20.SpCas9-HF1eSpCas9(1.1)は、ヒト細胞におけるオフターゲット編集を顕著に抑制したが、Jennifer A. Doudnaらは今回、不明であったその機構を一分子FRET計測により解明し、さらなる精度向上が可能なことを示した。;SpCas9-HF1とeSpCas9(1.1) はいずれも、ミスマッチ・ターゲットに結合した時には不活性なコンフォメーションをとっている。Cas9のローブ構造の一つであるRECドメイン内のREC3ドメインが標的の相補性を認識しREC2のコンフォメーション変化を介してHNHヌクレアーゼドメインを活性化することで、Cas9全体としての活性を規定する。;この構造情報に基づいてREC3に変異を入れることで、ヒト細胞ゲノムワイドにおいてオンターゲット活性を損なうことなくオフターゲット編集を最小限に止める超高精度なCas9変異体、HypaCas9、を作出した。
  • 2017-08-07 CRISPRメモ_2017/08/07 1. Cas9は、DNA結合から、gRNAとDNAの相補性をチェックするコンフォメーションを経てDNA切断に至る (Dagdas YS, Chen JS, Sternberg HS, Doudna JA, Yildiz A論文)
  • "Conformational control of DNA target cleavage by CRISPR-Cas9" Sternberg SH, LaFrance B, Kaplan M, Doudna JA. Nature. 2015 Nov 5;527(7576):110-3. Published online 2015 Oct 28.:分子内FRET計測によって、オンターゲットサイト結合とオフターゲットサイト結合時でCas9のHNHヌクレアーゼ・ドメインのコンフォメーションが異なり、HNHドメインがそのコンフォメーション変化を介してRuvCヌクレアーゼ・ドメインをアロステリックに調節することを見出した。
  • 2018-04-19 CRISPR-Cas9活性ドメインの振る舞いを一分子FRETでリアルタイム観察 (東京大学論文)
2.KRASのmRNAを標的とするCRISPR-Cas13aシステムに膵臓癌療法の可能性
  • [出典] "A CRISPR-Cas13a system for efficient and specific therapeutic targeting of mutant KRAS for pancreatic cancer treatment" Zhao X, Liu L, Lang J, Cheng K, Wang Y, Li X, Shi J, Wang Y, Nie G. Cancer Lett. 2018 Jun 2.
  • 膵臓癌のドライバー遺伝子であり“アンドラッガブル”なKRASに対して、KRASの発現をmRNAレベルで阻害する戦略が考えられる。中国科学院の研究グループは今回、哺乳類細胞においてmRNAの発現を選択的にノックダウン可能なCRISPR-Cas13a (Leptotrichia wadei由来)の最適化を経て、膵臓癌の変異KRASのノックダウン効率94%を実現。
  • Cas13aをガイドするcrRNAに点変異を挿入することで、野生型KRAS mRNAを認識・編集することなく、KRA-G12D変異 mRNAの選択的認識・編集を実現。
  • 注目すべきことに、CRISPR-Cas13aを介したKRAS-G12D mRNAノックダウンは、in vitroで細胞死を誘導し、マウスin vivoで癌を顕著に縮小した。
3.低分子による阻害実験とCRISPR/Cas9による変異誘発実験は、SMYD2とSYMYD3がin vitroでの癌の自律的増殖の必須因子ではないことを示した。
  • [出典] "Small molecule inhibitors and CRISPR/Cas9 mutagenesis demonstrate that SMYD2 and SMYD3 activity are dispensable for autonomous cancer cell proliferation" Thomenius MJ et al.(Epizyme, Inc.) PLoS One. 2018 Jun 1;13(6):e0197372.
  • SETドメインMYNDドメインを帯びたSMYDファミリー・タンパク質の中で、SYMD2は食道扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌および小児急性リンパ性白血病で過剰発現し、SYMD3は乳癌、肝臓癌および大腸癌で高発現している。このため、SYMD2をSYMD3に対する低分子阻害剤の開発およびRNAiによるノックダウン実験やモデルマウスでのノックアウト実験などが行われてきた。マウスin vivoでは発癌との関連を示す結果が蓄積されてきているが、低分子阻害剤やRNAiによる癌細胞株in vitro実験では必ずしも整合的な結果が得られていない。
  • 今回、240種類の癌細胞株を対象として、SYMD2とSYMD3を標的とする低分子による阻害とCRISPR/Cas9によるノックアウト実験を行ったところ、癌細胞の自律的増殖がSMYD2とSMYD3には依存しないことが明確に示された。SYMD2とSYMD3がin vitroin vivoで異なる作用を示すことを理解するにはさらなる実験研究が必要である。