1.DMSOがゲノム編集を効率化
  • [出典] "DMSO increases efficiency of genome editing at two non-coding loci" Stratigopoulos G, De Rosa MC, LeDuc CA, Leibel RL, Doege CA. PLoS One. 2018 Jun 4;13(6):e0198637.
  • CRISPR/Cas9による非コーディング DNAの精密編集は低効率に止まっている。コロンビア大学の研究チームは今回、ヒトES細胞 (hESC)においてFTO遺伝子座の2箇所のイントロン内のSNPsの精密置換 (近傍の非コーディングDNAの配列には影響を与えない置換)を試みた。
  • CRISPR/Cas9の送達 (Nueclofection)に先立ち、細胞を毒性を示さないレベルのDMSO (1%)で24時間処理することで (下図左 原論文Fig.2 Overview of experimental setup 参照)、置換効率が4~10倍に上昇することを見出した (下図右 原論文Table 1のHDRのカラム)。また、このDMSO処理は、オフターゲット編集を亢進することなく、また、hESCの染色体安定性にも影響を与えなかった。
DMSO 2 DMSO Table 1
2.CRISPR/Cas9技術でデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)ウサギモデルを作出
  • [出典]"A novel rabbit model of Duchenne muscular dystrophy generated by CRISPR/Cas9" Sui T [..] Li Z, Han R. Dis Model Mech. 2018 Jun 4;11(6).
  • DMDモデル動物として広く利用されているMdxマウスはDMD患者の病態を忠実に再現していない。イヌやブタといった大型動物のDMDモデルが作出されているが、経費の問題もあり利用が広がっていない。今回、DMD遺伝子の第51エクソンを標的とするCas9 mRNAとsgRNAを接合体に注入することで作出したDMDウサギモデルは身体活動阻害、血清中クレアチンキナーゼレベル上昇、および進行性の筋壊死と筋線維症を呈した。加えて、5月齢でDMD患者に見られるような病変が横隔膜と心臓に見られ、心エコー検査にも異常が見られた。DMDウサギモデルは前臨床検査に有用である。
  • DMDウサギモデル関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/05/27 - 4. 筋ジストロフィーのモデルとなるウサギを開発
3.CRISPR-Cas9技術とpiggyBac組換え技術により作出したCXCR4変異細胞におけるHIV-1阻害
  • [出典] "HIV-1 inhibition in cells with CXCR4 mutant genome created by CRISPR-Cas9 and piggyBac recombinant technologies" Liu S [..] Guo D, Chen S. Sci Rep. 2018 Jun 5;8(1):8573.
  • CXCR4はHIV-1感染に必要な共同受容体でありHIV-1阻害の標的分子であるが、造血幹細胞 (hematopoietic stem cells: HSC)の維持・分化に必須である。一方で、CXCR4の自然突然変異体P191Aが、HSCの分化を阻害することなくHIV-1感染を阻害することが知られている。
  • 今回、HIV-1レポーター細胞株に、外来遺伝子の痕跡を残すことなく、また、オフターゲット編集を誘起ことなくCXCR4 P191A変異を生成:CXCR4を標的とするsgRNA-Cas9によりP191近傍にDSBを誘導し、191A変異を供するpiggyBacテンプレートを相同組換えで挿入、ピューロマイシン選択などを経て変異体を生成。
4.[ミニレビュー] CRISPR技術による遺伝性およびウイルス性肝疾患の研究と療法の最新動向
5.6月4-5日ボストン開催の"Conversations on Science, Society and the future of Gene Editing"  第1日の議論概要
  • [出典] "What we heard at CRISPRCon: talk of designer babies, IP battles, and scientific colonialism" Grade D. STAT News 2018-06-05
  • ボストンで開催されたCRISPRconから聞こえてきた事:ゲノム編集を巡る倫理は未解決な課題である;CRISPR特許係争はほぼ収束;科学者はCRISPRコロニアリズムに留意している (例えば、遺伝子ドライブ技術の実用化と対象地域コミューニティーの受容性);CRISPR技術の民主化の意味は個人ごとに異なる。