タグ:エクソソーム

  1. 2018-08-10 腫瘍由来エクソソーム発現PD-L1レベルが、抗PD-1抗体癌療法選択の指標となる
  2. 2018-06-04 [レビュー] 癌細胞が放出する細胞外小胞が癌治療に貢献する
  3. 2018-05-19 交流動電現象を利用したマイクロチップによるリキッドバイオプシー:患者全血由来エクソソームからの膵臓癌迅速診断
  4. 2018-02-28 腫瘍細胞から分泌される新たなナノ粒子'exomeres'
  5. CRISPRメモ_2018/02/07-2 [第9項] エクソソーム - リポソームのハイブリッド・ナノ粒子で、CRISPR/Cas9システムを間葉系幹細胞(MSCs)に導入
  6. 2017-04-27 エクソソームをサイズに応じて分離可能とするLab-On-A-Chipを開発
  7. 2017-04-11 技術展望:リキッドバイオプシーによる精密診断が実現・普及するまで
  8. 2017-04-10 Science 誌「転移」特集から (メモ)

[出典]"Exosomal PD-L1 contributes to immunosuppression and is associated with anti-PD-1 response" Chen G, Huang AC [..] Guo W. Nature 2018 Aug 8.

背景

  • 腫瘍細胞は、活性化T細胞表面に発現するPD-1受容体に対するプログラム細胞死リガンド-1 (PD-L1)を表面に発現し、PD-1/PD-L1 チェックポイント・シグナル伝達を介して、免疫監視機構を回避する。このシグナル伝達を阻害する抗PD-1抗体は、転移性メラノーマを含む癌に対して画期的な治療効果を示すが、奏功する患者は限られている。このため、免疫チェックポイント阻害剤の研究開発と共にコンパニオン診断 (Companion diagnostics; CDx)薬の研究開発が進められている。
成果概要
  • ペンシルベニア大を中心とする米・中の共同研究チームは今回、転移性メラノーマから分泌される細胞外小胞、主としてエクソソーム、がPD-L1を表面に発現することを同定し、加えて、抗PD-1抗体療法の早期にエクソソーム発現PD-L1のレベルを、転移性メラノーマ患者を抗PD-1抗体癌療法対するresponderとnon-responderに層別化の指標として利用可能なことを示した。
  • メラノーマ由来のエクソソームがPD-L1を帯びている;転移性メラノーマ由来エクソソームが初代メラノーマ由来エクソソームよりも高レベルのPD-L1を帯びている。PD-L1はマイクロベシクルでも検出されるが、エクソソームに比べると低レベル。
詳細
  • 腫瘍細胞表面のPD-L1は、活性化T細胞により分泌されるIFN-γに応答して、上方制御され、PD-L1が細胞外ドメインを介してT細胞のPD-1に結合しT細胞を不活性化することが、知られている。エクソソームのPD-L1も、腫瘍細胞表面のPD-L1と同じトポロジーをとり、細胞外ドメインがエクソソームの表面に露出し、T細胞のPD-1に結合する。
  • エクソソームPD-L1のPD-1への結合は、濃度に依存し、PD-L1抗体によって阻害される。さらに、メラノーマ細胞が分泌するエクソソームのPD-L1のレベルがIFN-γによって顕著に上昇し、エクソソームのPD-1への結合も増加する。
  • エクソソームの生成と放出に関わるESCRT(endosomal sorting complex required for transport)関連因子をノックダウンすると、腫瘍細胞内のPD-L1が増加し、エクソソームPD-L1レベルが低下する。
  • メラノーマ患者と健常者の血中循環エクソソームの比較:エクソソームの数とエクソソームのタンパク質の総量には差異が見られない;PD-L1レベルについては、メラノーマ患者が有意に高い。
  • メラノーマ患者におけるペンブロリズマブ投与がエクソソームPD-L1レベルに与える影響と治療効果の解析から、エクソソームPD-L1が患者の層別化に有効と結論。
 エクソソーム関連解説・crisp_bio記事

        • [出典] "Extracellular vesicles in cancer — implications for future improvements in cancer care" Xu R, Rai A, Chen M, Suwakulsiri W, Greening DW, Simpson RJ. Nat Rev Clin Oncol. 2018 May 23.
        • 癌細胞の持続的成長、浸潤、および転移は、複雑な組織環境内の双方向細胞間コミュニケーションに依存する。この細胞間コミュニケーションは主として腫瘍微小環境 (TME)内での癌細胞そしてまたは間質細胞から分泌される可溶性因子に依存するが、癌細胞/間質細胞はまた、細胞間コミュニケーションのメッセージに相当する分子を内包する細胞外小胞 (extracellular vesicles: EVs)を放出する。
        • La Trobe Institute for Molecular Science の研究チームは今回、EVsの生物物理学的特性と生理学的機能について議論し、癌診断法と癌療法への応用をハイライトした。
        • EVsはそれぞれ独自の機構で生成されるエクソソームと分泌マイクロベクシルの2つのクラスを包含し、各クラスはタンパク質やRNAで特徴付けされるサブタイプ(サブポピュレーション)を包含する。
        • EVsは、オンコプロテインとオンコペプチド、さまざまなRNA種 (μRNAs, mRNAs, lncRNAsなど)、脂質、DNA断片を、ドナー細胞から受容細胞へ運搬し、TMEの表現型に顕著な変化をもたらす。近年、EVsが前転移ニッチ (pre-metastatic niche) の形成や転移を含む癌形成過程に決定的な役割を果たすことを示すデータが蓄積されている。
        • 癌細胞が悪性ではない細胞よりも多くのEVsを分泌し、また、EVsを体液から分離可能になってきたことから、癌特異的分子マーカ(オンコプロテイン、mRNAs、lnsRNAsおよびDNA断片)を内包する循環エクソソームを、リキッドバイオプシーによる癌の診断、予後判定 (prognostication)、および癌のサーベイランス (定期的検査)ための次世代バイオマーカーへと展開可能である。
        • 研究室間のでデータの比較共有と臨床応用を促進するために、EV亜集団の分離プロトコルの標準化が必要である。
        • エクソソームは、治療分子のデリバリーの担体としても有力であり、また、癌ワクチンへの展開も可能であり、臨床診療の革新を牽引する。
          細胞外小胞関連crisp_bio記事

        論文
        背景
        • 交流動電学 (AC electrokinetics: ACE):電場が溶液や溶液中の粒子に力学的作用を及ぼす機構とその利用を研究する分野である。ACEは、AC electro-osmosis (交流電気浸透)、dielectrophoresis (誘電泳動)およびelectrothermal effect (交流熱動電流)の3種類の現象を対象としているが、ACE現象に基づいた微小な電極による電場調節を介した体液や生体高分子の操作も可能になり、ACEバイオチップの研究開発が進められている。[本項参考文献] Hart R, Oh , Capurro J, Noh HM. "AC Electrokinetic Phenomena Generated by Microelectrode Structures" J Vis Exp. 2008 Jul 28;(17):813.;佐々木直樹「交流動電現象のマイクロチップバイオ分析への応用」分析化学 2015;64(1):1-8.
        • エクソソーム:細胞から血液中へ分泌されるナノスケール(~30-200 nm)の細胞外小胞であり、mRNA, miRNA、タンパク質、脂質などが内包されている。腫瘍由来のエクソソームに内包されている生体高分子は、非侵襲的はリキッドバイオプシーの基盤となるバイオマーカとして注目を集めているが、全血からバイオマーカとともにエクソソームを迅速に分離・解析する技術については模索が続いていた。
        成果
        • UCSDの研究チームは今回、エクソソームその他の細胞外小胞を全血、 血漿または血清から直接分離し解析するまでを短時間で実現可能とするACEバイオチップを開発;サンプルの前処理や希釈あるいは抗体などによる精製が不要であり、オンチップでの蛍光免疫染色分析によるバイオマーカの同定・定量まで30分程度で完了。
        • 検証実験:膵臓癌の早期発見バイオマーカとして注目を集めたglypican-1 (Nature, 2015)とエクソソーム表面タンパク質マーカとして代表的なCD63によって、20名のPDAC患者と11名の健常者のコホートにおけるPDACの有無を感度99%/特異度82%で判定;小規模な大腸癌患者コホートで、非転移癌に比べて転移癌でglypican-1レベルが上昇
        • 全血を対象としてエクソソーム分離からバイオマーカ定量まで短時間で完了可能なACEバイオチップは、癌早期診断のシームレスなリキッドバイオプシーとして有力である。
        [注] CRISP_SCIENCE Tweet

        出典
        エクソソーム
        • エクソソームは、各種の正常細胞や癌細胞から分泌される脂質二重膜に囲まれた不均質なナノスケールの小胞であり、細胞間コミュニケーションを担い、腫瘍細胞由来エクソソームは癌の悪性化や転移に関わるとされ、バイオマーカや治療標的として注目を集めている。PubMedによれば2017年にexosomes関連論文が1,794報刊行されている(2018/02/28時点)。
        細胞から分泌されるナノ粒子3種類、Exo-L, Exo-Sそして'exomere'を同定
        • David Lyden (Weill Cornell Medicine)を始めとする国際研究チームは今回、非対称流フィールドフローフラクショネーション(Asymmetrical flow field-flow fractionation (AF4);下図参照)法により、25種類のマウスまたはヒトのメラノーマ、膵臓癌、結腸腺癌、非小細胞肺がん、前立腺癌、乳癌、白血病由来細胞株およびNIH3T3細胞とET2B細胞の計27種類の細胞からの分泌ナノ粒子を分画・測定し、いくつかの細胞については透過電顕解析で検証した。AF4
        • その結果、脂質二重膜に囲まれていない大量のナノ粒子(サイズ 〜35 nm)も細胞から分泌されることを見出してこれを'exomere'と命名した。また、エクソソームが、サイズ90-120 nmの大きなエクソソーム(Exo-L)とサイズ60-80 nmと小さなエクソソーム(Exo-L)の2種類のサブセットに分類できることを明らかにした。
        細胞分泌ナノ・マイクロ粒子の概要
        • Lyden論文をハイライトしたUSLAのAndries ZijlstraとDolores Di VizioのNews & Viewsでは、細胞から分泌され細胞間コミュニケーションを担うナノ粒子〜マイクロ粒子のクラスとして、exomere、Exo-S、Exo-L、微小小胞体/microvesicle(1000 nm以下)、exopher(~4μm)、migrosome(1 μm以上)およびラージ・オンコソーム/Large oncosome(1~10 μm)を挙げ、それぞれのクラスのカーゴの発生源と生合成機構を図にまとめ、エクソソーム以外の生成過程の解明が進んでいないとした(News & Views Fig. 1)。
        3ナノ粒子の生物物理学的特性
        • 平均表面電荷:Exo-L (−12.3 mV ~ −16.0 mV) ;Exo-S (−9.0 mV ~ −12.3 mV) ;exomere (−2.7 mV ~ −9.7 mV)
        • 剛性 (AFM測定):exhumer (~145–816 MPa);Exo-S  (~70–420 MPa);Exo-L (~26–73 MPa)
        3ナノ粒子はサイズを異にするだけでなく、カーゴ(核酸、脂質、グリカン、タンパク質)を異にする
        • ラベルフリーMSによりマウスメラノーマ株B16-F10、マウス膵臓癌細胞株Pan02、マウス乳癌細胞株4T1、ヒト膵臓腺癌株AsPC-1およびヒト乳癌細胞株MDA-MB-231-4175のプロテオーム解析し、exomere、Exo-SおよびExo-Lについて、それぞれ、165-483種類、433-1,004種類、247-1,127種類のタンパク質を同定し、また、ナノ粒子それぞれに特有なタンパク質を同定。
        • ECRT複合体の構成因子がExo-S/Lにはエンリッチされていたが、exomereにはほとんど見られなかった。Exo-SとExo-Lの間にも差異はあり、Exo-Sにはエンドソーム、多胞体、液胞、貪食胞のタンパク質がエンリッチされ、
        • Exo-Lには細胞膜、細胞間接着/結合、後期エンドソーム、トランス・ゴルジ網のタンパク質がエンリッチされていた。
        • Exomerには、特に代謝系(中でも、解糖系とmTORC1代謝パスウエイ)に関与するタンパク質がエンリッチされており、また、低酸素症・微小管および凝固系に関するタンパク質、およびExo-SとExo-Lには見られない類の脂質がエンリッチされていた。
        • エクソソームに特異なマーカとしてされてきたフロチリン/flotillins、CD9, CD63, CD81, Alix1、Tsg101、HSC70(HSPA8)およびHsp90の発現を比較した結果、フロチリンのFLOT1とFLOT2がExo-Sのマーカであり、HSP90AB1が比較的exomereと相関し、また、CD9/CD63/CD81がいずれもExo-S/Lと相関するがその発現パターンが細胞型とExo-SかExo-L如何に依存することを見出した。
        • マウスメラノーマ、ヒト膵臓腺癌株およびヒト乳癌細胞株については、N-結合型グリコシル化のプロファイリングと脂質組成、核酸のプロファイリングも行った。その結果、N-グリコシル化の組成と構造のナノ粒子依存性、脂質量の細胞型依存性と組成のナノ粒子依存性、核酸(RNA/DNA)の量やサイズの細胞型とナノ粒子への依存性を同定した。
        3粒子の生体内分布
        • マウスメラノーマ由来ナノ粒子の生体内分布をマウスin vivoで分析した。エクソマーもexmeresも造血組織(肝臓、脾臓および骨髄)に取り込まれるが、Exo-Lはリンパ節向性を示し、exmeresは主として肝臓に取り込まれることから、Exo-Lが癌の転移にかかわり、exmeresが癌進行時に肝臓における代謝のリプログラミングに関与することを、著者らは示唆した。


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