タグ:エピゲノム編集

[出典] "Casilio-ME: Enhanced CRISPR-based DNA demethylation by RNA-guided coupling methylcytosine oxidation and DNA repair pathways" Taghbalout A [..] Cheng AW. bioRxiv 2019-05-19. >> Nat Commun. 2019 Sep 20;10(1):4296
  • The Jackson Laboratory for Genomic Medicine (JAX)とUniversity of Connecticut Healthの研究グループは今回、A W Cheng (JAX)らが先行研究*で開発したCasilio法に基づいて、DNA脱メチル化を亢進するCasilio-DNA Methylation Editing (Casilio-ME)プラットフォームを開発した (*先行研究:CRISPR関連文献メモ_2016/01/21 Casilio法:dCas9に基づくゲノム・エピゲノム編集と染色体標識;addgene Webサイト"Cheng Lab CRISPR Casilio Plasmids")。
  • 遺伝子発現を抑制する5-メチルシトシン (5mC)の脱メチル化は、TET (Ten-eleven translocation)を介して5mCが、5-ヒドロキシメチルシトシン (5-hmC)、5-フォルミルシトシン (5-fC) そして5-カルボキシルシトシン (5-caC)へと酸化され、5-fCと5caCから塩基除去修復 (BER)を経て実現する。Casilio-MEとして、TET1単独 (CasilioME1)、TET1とGADD45A (Casilio-ME2) 、および、TET1とNEIL2 (Casilio-ME3)の3種類を構築し、TET1とDNA修復機構に寄与するタンパク質を同時に送達することで、標的CpGアイランドにおける5mCの脱メチル化と遺伝子発現活性化の亢進を実現した。
  • 他のシステムとの比較 (原論文Fig.1- dから引用)Casilio-ME1
 dCas9-Tet1の利用関連crisp_bio記事

[出典] "Epigenetic editing by CRISPR/dCas9 in Plasmodium falciparum" Xiao B [..] Jiang L. PNAS. 2018-12-24

 CRISPR/Cas9技術によって、相同組み換え効率が低くRNAiが欠損している熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の機能ゲノミクスが進み始めていたが、中国科学院大学 (上海)、上海科技大学、サウスフロリダ大学ならびにNIAIDの研究チームは今回、ヒストンアセチル転移酵素 (HAT)またはヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)を融合したCRISPR/dCas9によるエピゲノム編集を介して、これまでになく効率的かつ特異的に標的遺伝子発現を調節可能なことを示した。
  • P. falciparumのHAT、PfGAN5、の活性部位を融合したエピジェネティック活性化システムCRISPR/dCas9-GCN5と、P. falciparumのHDAC、PfSir2a、のコーディング領域を融合したエピジェネティック・ノックダウン・システムCRISPR/dCas9-Sir2aを構築。
  • P. falciparumの赤血球侵入に重要な網状赤血球結合タンパク質 (reticulocyte binding protein homolog 4, rh4)と赤血球結合タンパク質 (erythrocyte binding protein 175, eba-175) の転写開始領域のアセチル化と脱アセチル化によって、それぞれ、rh4の活性化とeba-175の抑制を実現。
  • CRISPR/dCas9-Sir2aを利用し、P. falciparum必須遺伝子PfSET1の発現を抑制することで、PfSET1がその標的遺伝子群の発現抑制ひいては栄養体と分裂体においてP. falciparumの成長に与える影響の解析を実現。

Epigenome Editing.
Jeltsch A., Rots M. (eds)
Methods in Molecular Biology, vol 1767.

pp 3-18 Editing the Epigenome: Overview, Open Questions, and Directions of Future Development. Rots MG, Jeltsch A.

pp 19-63 Zinc Fingers, TALEs, and CRISPR Systems: A Comparison of Tools for Epigenome Editing. Waryah C.B, Moses, Arooj M, Blancafort P.

pp 137-146 Allele-Specific Epigenome Editing. Bashtrykov P, Jeltsch A.

pp 167-185 CRISPR/dCas9 Switch Systems for Temporal Transcriptional Control. Gjaltema RAF, Schulz EG.

pp 215-225 Stable Expression of Epigenome Editors via Viral Delivery and Genomic Integration. Kroll C., Rathert P.

pp 227-239 Purified Protein Delivery to Activate an Epigenetically Silenced Allele in Mouse Brain. Pyles B, Bailus BJ, O’Geen H, Segal DJ.

pp 241-254 Non-viral Methodology for Efficient Co-transfection. Kretzmann JA, Evans CW, Norret M, Blancafort P, Swaminathan Iyer K.

pp 419-428 Editing of DNA Methylation Using dCas9-Peptide Repeat and scFv-TET1 Catalytic Domain Fusions. Morita S, Horii T, Hatada I.

pp 429-445 Chemical Inducible dCas9-Guided Editing of H3K27 Acetylation in Mammalian Cells. Gao D, Liang FS.      

pp 447-480 Screening Regulatory Element Function with CRISPR/Cas9-based Epigenome Editing.  Klann TS, Crawford GE, Reddy TE, Gersbach CA.

(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/26から転載)
  1. [論説] CRISPR/Cas9は異種間臓器移植を促進するか:Daniel R. Salomon (Scripps)
    • 米国では現時点で120,000人が臓器移植を待ち、年間23,000件の移植が行われる一方で、臓器移植を必要とする患者が毎年50,000人増加する.この厳しい現実のもと、異種移植の研究にドライブがかかっている.
    • ヒトへの臓器移植に最も現実的な動物はブタである.家畜化され、無菌飼育が可能であり、その利用が比較的社会に受容されるからである.
    • 異種移植には、免疫拒絶反応と感染症伝搬のリスクが伴う.免疫拒絶反応の回避については、その分子機構の理解を深める必要がある.感染症リスクについては、Luhang YangとGeorge Churchらはヒトに感染する恐れがあるブタ内在性レトロウイルス(PERVs)60コピーをCRISPR/Cas9によって1ステップで除去し、感染リスクの大幅な抑制を実現した.今後、CRISPR/Cas9システム送達法の改良、遺伝子編集効率の向上およびオフターゲット作用の抑止が必要である. また、免疫拒絶反応の回避と同様に、CRISPR/Cas9技術を活かすには疾病発症の機構の理解を深めることがなによりも重要である.
    • 「バクテリアの免疫機構の因子として発見されたCRISPR/Cas9の応用展開は、極めて基礎的な研究が医学にも大きな転換をもたらす好例である」ことを指摘しておきたい.
  2. [論文] CRISPR/Cas9によるエピゲノム編集:Vlatka Zoldoš (U. Zagreb)
    • エピゲノム編集技術は、DNAメチル化酵素やヒストン脱アセチル化酵素の阻害により非選択的手法から、ZFNs、TALEsあるいはCRISPR/Cas9システムによる特定領域を標的とする手法へ広がってきている。中でも、CRISPR/Cas9による編集が、gRNAsの設計により標的設定とその多重化が容易であり、CpGメチル化に影響されてないことから、特に広がってきている.
    • 研究チームは今回、不活性型Cas9(dCas9)と、DNAメチル化酵素DNMT3Aの触媒ドメインとを、フレキシブルなGly4Serリンカーを介して融合したdCas9-DNMT3Aを開発.
    • BACH2 とIL6ST の2種類の遺伝子座のプロモーター領域内のCpGアイランドのメチル化を高効率かつ高選択性で実現.多重sgRNAを使用することでメチル化レベルが上がり、発現レベルが低下.
    • BACH2 とIL6ST は炎症性腸疾患(IBD)におけるIgGの免疫抑制機能欠損に関与することが示唆されていることから、今回の結果から、CRISPR/Cas9による遺伝子座選択的エピゲノム療法を展開可能と考えられる.
  3. [論文] ゼブラフィッシュ遺伝子機能のクローン解析ツールの開発:Filippo Del Bene (Inst. Curie, PSL Research U.)
    • ゼブラフィッシュにおいてもCRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトはすでに実現しているが、遺伝子破壊を時空間的に制御することは実現していなかった.今回、Tol2 トランスポゾンを用いたGAL4/UASシステムによるCas9 の組織特異的発現による組織特異的遺伝子破壊と、Cre/loxP部位特異的組換えを利用したCas9 発現細胞のラベリングを組見合せた2C-Cas9 (Cre-mediated recombination for Clonal analysis of Cas9 mutant cells)法を開発した.
    • 2C-Cas9法によって網膜前駆細胞のチロシナーゼを標的としたTyr 変異クローンの配列:[KU751772 - KU751776]
  4. [論文] 化学合成crRNA/tracrRNAを使用した変異マウス作出高田修治 (国立成育医療研究センター)
    • CRISPR/Cas9で通常使用されるsgRNAの受精卵へのマイクロインジェクションに替えて、クローニング、シーケンシング、加えて、in vitro 転写と精製も不要な、化学合成crRNA/tracrRNAを、Cas9ニッカーゼ(D10A)またはfCas9(FokI-dCas9)のmRNAとともに受精卵にマイクロインジェクションしてハイスループットでの変異マウス作出が可能に.
    • 変異導入効率とオフターゲット編集の頻度は、Cas9との組みわせにも依存するがほぼ同等.しかし、合成crRNA/tracrRNAは、sgRNAに比べてコストがかかり、RNA量に限界があり、合成に日数がかかる.
  5. [レビュー] CRISPR/Cas9による脳腫瘍モデル動物の作出:Xiao-Yuan MaoZhao-Qian Liu (中南大学); Wei-Lin Jin(上海交通大学)
    • 脳腫瘍動物モデル(CDX, PDX, GEMM)の現状;CRISPR/Cas9(システムの概略);CRISPR/Cas9による脳腫瘍モデリング(標的遺伝子などの提案);課題(送達方法/オフターゲット作用/安全性);将来展望(CRISPR/Cas9による脳腫瘍モデル作出に期待)

出典

1.          [論説] Daniel R. Salomon. "A CRISPR Way to Block PERVs Engineering Organs for Transplantation." N. Engl. J. Med.2016 Mar 17;374(11):1089-91.

2.          [論文] Aleksandar Vojta et al. "Repurposing the CRISPR-Cas9 system for targeted DNA methylation." Nucleic Acids Res. Published online 2016 Mar 11.

3.          [論文] Vincenzo Di Donato et al. "2C-Cas9: a versatile tool for clonal analysis of gene function." Genome Res.Published online 2016 Mar 8.

4.          [論文] 寺尾美穂, 玉野萌恵, 原 聡史, 加藤朋子, 木下政人 & 高田修治 "Utilization of the CRISPR/Cas9 system for the efficient production of mutant mice using crRNA/tracrRNA with Cas9 nickase and FokI-dCas9." Exp. Anim.Published online 2016 Mar 14.

5.          [レビュー] Xiao-Yuan Mao et al. "Brain tumor modeling using the CRISPR/Cas9 system: state of the art and view to the future." Oncotarget. 2016 Mar 14. 

1.CRISPR-Cas9 piggyBacシステム"CRONUS"とssODNにより、簡便・低廉・迅速な、ヒト細胞内ゲノムへの部位特異的ランダム変異導入を実現
  • Ishida K, Xu H, Sasakawa N, Lung MSY, Kudryashev JA, Gee P, Hotta A."Site-specific randomization of the endogenous genome by a regulatable CRISPR-Cas9 piggyBac system in human cells" Sci Rep. 2018 Jan 10;8(1):310
  • CRONUS (CRISPR-Cas9 regulated by transcription and nuclear-shuttling)システムを開発し、適切なssODNテンプレートを利用することで、iPSCsを含むヒト細胞において、HR(相同組み換え修復過程)を介した一塩基編集を高い効率で実現。
  • CRONUS法では、poggyBacトランスポゾンべクターによりTetO -Cas9-GR(グルココルチコイド受容体)-PuroRとgRNA-HygroRならびにpiggyBacトランスポザーゼを導入し、ピューロマイシンとハイグロマイシンで形質転換細胞を濃縮し、ドキシサイクリンでCas9+GRを発現させ、デキサメタゾンによりCas9の核移行を促し、ゲノム編集に至る(下図参照)。HRのテンプレート用ssODNはエレクトロポーレーションする。
CRONOS Fig 2
  • Cas9とsgRNAをゲノムから発現させることで、10%の効率で一塩基変異導入を実現(すなわち、10クローンにつき1クローンがランダム変異を帯びるという高い効率)。
  • ランダム化したssODNを利用して、ヒト404C2 iPSC、293T細胞およびHeLa細胞にて、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの病因遺伝子座DMDでのコドン・シャフリング(“CTC” から“NNC”へ)のランダム変異導入をそれぞれ23.3%、47.0%および10.8%の効率で実現。また、ヒトiPSC iPS cells 1383D2クローンにおいてHLA-A遺伝子座でのコドン・シャフリング効率44.1%を達成。
  • CRONUS とランダム化ssODNで、4箇所のコドンへの一塩基ランダム変異導入が可能であることも検証。
2.CRISPR gRNAsの設計に資するオフターゲット活性予測法"Elevation"を開発しクラウドサービスから公開
  • Listgarten J, Weinstein M, Kleinstiver BP, Sousa AA, Joung JK, Crawford J, Gao K, Hoang L, Elibol M, Doench JG, Fusi N. "Prediction of off-target activities for the end-to-end design of CRISPR guide RNAs" Nat Biomed Eng. 2018 Jan 10;  "Predicting off-target effects for end-to-end CRISPR guide design"bioRxiv. Posted December 2, 2016.
  • オフターゲット活性予測は、(1)潜在的標的ゲノムワイド探索とフィルター、(2)ステップ(1)で検出した潜在的標的ごとの活性スコア付、および(3)ステップ(2)で計算したスコアをgRNAごとに集計、の3段階で進める。ステップ(1)についてはこれまでに多くのアルゴリズム(Cas-OFFinder、CRISPOR、CHOP-CHOPおよびe-CRISPR)が開発されてきたが、ステップ(2)と(3)については手薄であった。今回、マイクロソフト、USLAおよびBroad研究所の研究チームは、ステップ(1)についても独自の手法を開発するとともに、ステップ(2)と(3)についても機械学習によるアルゴリズムを開発しElevation(Elevation-search, Elevation-scoreそしてElevation-aggregate)オフターゲット活性予測システムを開発し、先行研究で開発していたAzimuthのオンターゲット活性予測システムとともに、クラウドサービスから公開した。
  • クラウド・サービス Webサイト:CRISPR ML "End-to-end guide design for CRISPR/Cas9 with machine learning - Azimuth and Elevation"
3.遺伝子間相互作用の方向依存性を、遺伝子活性化と遺伝子ノックアウトを組み合わせることで明らかに
  • Michael Boettcher, Ruilin Tian, James A Blau, Evan Markegard, Ryan T Wagner, David Wu, Xiulei Mo, Anne Biton, Noah Zaitlen, Haian Fu, Frank McCormick, Martin Kampmann & Michael T McManus. "Dual gene activation and knockout screen reveals directional dependencies in genetic networks" Nat Biotechnol. 2018 Jan 15.;"Decoding directional genetic dependencies through orthogonal CRISPR/Cas screens" bioRxiv. Posted March 25, 2017.  
  • 100,000組の遺伝子対について、S. pyogenes (CRISPRa) による遺伝子活性化と S. aureus (Cas9 nuclease)による遺伝子ノックアウトの効果を測定することで、ヒト白血病細胞K562における遺伝子間相互作用の有向ネットワークを再構成し、これまで機能不明であった遺伝子の良く知られたパスウエイへの組み込みおよび治療標的同定を実現した。
4.エピゲノム調節因子を標的とするアレイ型CRISPR-Cas9ライブラリー構築:ハイコンテントスクリーンからin vivoアッセイまで
Henser-Brownhill T, Monserrat J, Scaffidi P. "Generation of an arrayed CRISPR-Cas9 library targeting epigenetic regulators: from high-content screens to in vivo assays" Epigenetics. 2018 Jan 12:1-11.
450種類のエピゲノム調節因子を標的とする多重sgRNAsのアレイ型ライブラリーとプール型ライブラリーを構築し、遺伝子ノックアウトの誘導を試みた。アレイ型ライブラリーを利用することで、顕微鏡画像に基づくハイコンテントスクリーニングと、ノックアウト・クローンの分離を経ないタンパク質の機能解析が実現された。

5.CRISPR-Cas9ニッカーゼにより、Bacillus licheniformisゲノムの効率的編集ツールを開発
  • Li K, Cai D, Wang Z, He Z, Chen S. "Development of an Efficient Genome Editing Tool in Bacillus licheniformis Using CRISPR-Cas9 Nickase" Appl Environ Microbiol. 2018 Jan 12.
  • Bacillusは多様な生化学的産物を産生する産業上有用なバクテリアであるが、形質転換効率が低く効果的なゲノム編集ツールが存在していなかったが、今回、B. licheniformis DW2においてCRISPR/Cas9 ニッカーゼにより高効率なゲノム編集を実現:単一遺伝子(yvmC)の削除(100%)、多重遺伝子の破壊(11.6%)、大規模領域(42.7 kb)の削除(79%)、外来レポータ遺伝子の挿入(76.5%)を実現。

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