タグ:トランスクリプトーム

[出典] An engineered CRISPR/Cas9 mouse line for simultaneous readout of lineage histories and gene expression profiles in single cell. Bowling S, Sritharan D [..] Hormoz S, Camargo FD. bioRxiv. 2019-10-17

 Harvard Universityを主とする研究グループがGESTALT[*]に基づいて表題を可能とするCARLIN (CRISPR Array Repair LINeage tracing)マウスを樹立した。

CARLIN ES細胞
  • ES細胞のセーフ・ハーバー領域Col1a1に、tetO-Cas9、ならびに、pU6-sgRNA 10組とCAG配下にEGFPとsgRNAsの標的になるアレイを配したコンストラクトを、導入する。
  • アレイは、13-bpの保存領域、10種類のsgRNAsのターゲットとなる7-bp領域および3-bpのPAMと4-bpのリンカーからなる。このアレイをCARLINアレイと称する
  • CARLINアレイとは別に、リバーステトラサイクリン調節性トランス活性化因子(M2-rtTA)を、ES細胞のセーフ・ハーバー領域Rosa26遺伝子座に導入する。
  • こうして作出したES細胞において、DoxでCas9の発現を誘導するごとに、CARLINアレイに、Cas9による二本鎖DNA切断からのエラーが起きやすいNHEJ修復過程を経て、極めて多様な変異が刻まれていくこと、および、Cas9発現のレベルと期間によって、変異の様相が変わることを確認した。
CARLINマウス
  • CARLINアレイ/Col1a1を導入したES細胞由来マウスと、tetO-Cas9/Col1a1とrtTA/Rosa26を導入したES細胞由来マウスを交配することで、CARLINマウスを作出し、シングルセル・ドロップレット・シーケンシングを介して44,000種類までのCARLINアレルの読み取りを実現した。
  • また、CARLINマウスにおいて、造血幹細胞の分化の過程と5-FUによる損傷からの修復の過程それぞれにおけるクローンの動態について新たな知見を得るに至った。
[crisp_bio関連記事]
2019-05-15 マウス胚形成時の細胞運命マップを描く  [a homing guide RNA (hgRNA)]
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CRISPRメモ_2019/05/17-1 [第5項] LinTIMaT: CRISPR-Cas9バーコード編集とscRNA-seqの融合による

[出典] "Proximity-CLIP provides a snapshot of protein-occupied RNA elements in subcellular compartments" Benhalevy D, Anastasakis DG, Hafner M. Nat Methods. 2018-11-26.
  • RNAの細胞内小器官局在を解析する手法として、APEX-RIP (RNA immunoprecipitation)やRaPIDなどが開発されてきたが、網羅的な解析はまだ困難である。例えば、APEX-RIPで採用された化学的架橋は、RNA抽出過程での偏り発生やタンパク質から比較的遠い位置に存在するRNAを架橋するリスクを、RNA分子をビオチンリガーゼ (BirA)で標識しRNAに結合するタンパク質をビオチン化・プルダウンするRaPIDは比較的長いRNAへの偏りが生ずるリスクを、それぞれ伴っている。
  • 米国National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseaseの研究チームは今回、RNA結合タンパク質 (RBPs)ひいてはRNAの細胞内局在を網羅的に解析する手法、Proximity-CLIP (UV crosslinking and immunoprecipitation)、を開発した。
  • Proximity-CLIP手法 (原論文 Fig. 1):(1) APEX2に細胞内局在化因子 (localization element, LE)を融合し、細胞内RNAを4-チオウリジン (4-SU)で標識; (2) ビオチンフェノール (BP)液体培地で30分培養後に過酸化水素を加え、APEX2からのビオチン-フェノキシルラジカル (BPラジカル)生成、続いて、紫外線照射によりタンパク質とRNAを架橋; (3) BPラジカルは、近接タンパク質と共有結合するか消失; (4) 細胞区画に特異的なRNPsとタンパク質をストレプトアビジン・アフィニティー精製; (5) 溶出液を3分割し、それぞれ、細胞区画内プロテオームのMS解析、RNaseフットプリント解析およびRNA-seqを施す
  • Proximity-CLIPにより‘RBPome’実現:局所的トランスクリプトームの定量;RBPが結合したRNA領域 (シスエレメントとRNA代謝部位を含む)の同定
  • HEK293細胞の核、細胞質および細胞間界面を対象とする実証実験:数キロベースにおよぶ転写リードスルーを同定;核内と細胞質でのRBP占有パターンの差異を同定;細胞間界面に局在するmRNAsの多くが調節因子をコードし3'UTR領域にタンパク質に占有されるCUG配列を帯びていることを同定
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(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/30から転載)

  • [出典] [技術プレビュー] Yihan Lin & Michael B. Elowitz "Central Dogma Goes Digital" Mol.Cell 2016 Mar 17;61(6):791-792. [技術報告] Cem Albayrak et al. "Digital Quantification of Proteins and mRNA in Single Mammalian Cells." Mol. Cell. 2016 Mar17;61(6):914-24.[Corresponding author] Savaş Tay (ETH Zürich/U. Chicago)
  • ETH Zürichの研究チームは、タンパク質コピー数のデジタル測定技術を、Proximity Ligation Assay(PLA)とDroplet Digital™ PCR (ddPCR™)を組み合わせて構築した.このデジタルPLA技術は、標的タンパク質に結合して近接したプローブとコネクター・オリゴヌクレオチドが形成するdsDNAを、ddPCR™でデジタル定量し、タンパク質コピー数へ換算する技術である.
  • 研究チームは、単一細胞を溶解したのち2分し、一方についてデジタルPLA法でタンパク質コピー数を測定し、もう一方について、2段階RT-ddPCR™によってmRNAコピー数を測定し、タンパク質とmRNAのコピー数の相関を検証した.具体的には、HEK293T細胞において内因性のCD147とICAM-1遺伝子および外因性GFP-p65を対象として測定・解析を進め、いずれの場合も、相関が極めて小さいことを見出した.
  • さらに、CD147のデータをもとに、遺伝子の活性化がランダムにオン・オフされ(プロモーターがオン・オフし)、タンパク質翻訳過程で外部環境からのノイズが入ることを仮定した二状態確率過程モデルによって、タンパク質のコピー数とmRNAのコピー数の間の相関の低さを再現可能なことを示した.なお、細胞集団としての平均的なmRNA量とタンパク質量の間には、確率過程の影響が失われるために、相関が見られる.
  • 近年、単一細胞のmRNAとタンパク質を同時に定量する技術の開発が続いている中で、研究チームが開発した手法の特徴や次のとおり:mRNAとタンパク質の絶対量を測定;タンパク質をフェムトモル濃度感度で測定可能でありダイナミックレンジが広い;市販のddPCR™装置を使うなど特別な装置を必要としない.

(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/22から転載)

  • [出典]Edroaldo Lummertz da Rocha et al. "NetDecoder: a network biology platform that decodes context-specific biological networks and gene activities.." Nucleic Acids Res. Published online 2016 Mar 14.
  • 生体分子の二状態(ON/OFF)を変えていく相互作用の連鎖が、表現型を決定する細胞ネットワーク内の情報の流れに対応している.Hu Li(Mayo Clinic College of Medicine)らはこの情報の流れの観点から、タンパク質間相互作用(PPI)データベースiRefIndexからPPIと、遺伝子発現データベースGEOからのコンテクスト(特定の表現型や疾患)に特有の共発現ネットワークを統合することで、コンテクストに特有のサブネットワークとその鍵となる遺伝子を抽出するネットワーク生物学解析プラットフォームを開発した.
  • 乳がん、脂質異常症およびアルツハイマー病を対象とするケーススタディーを行ってNetDecoderの有用性を実証:
    • コンテクストに特有のサブネットワークを割り出し、その中で、表現型に対して決定的な影響を与えるタンパク質/遺伝子を同定.
    • 特定の疾患に特有なサブネットワークに属する遺伝子群が、疾患に関連するシグナル伝達パスウエイに集積し、疾患表現型をもたらす.
  • 多くの遺伝子に影響を与える遺伝子“network routers”、多くの遺伝子の影響を受ける遺伝子“targets”、大きく変化する遺伝子“high impact genes”の指標を定義.
  • NetDecoderによるネットワーク解析を創薬標的の探索に展開することも想定.
  • [NetDecoder関連Webサイト]

  • [出典] "A Next Generation Connectivity Map: L1000 Platform and the First 1,000,000 Profiles" Subramanian A, ~ Golub TR. Cell. 2017 Nov 30;171(6):1437–1452.e17. (bioRxiv. Posted May 10, 2017. )
  • Broad Instituteを中心とする研究チームは2006年に、遺伝子発現のシグナチャーの共通性を手がかりにして遺伝子、薬剤そして疾患の間の対応関係を詳らかにしていくことで、ヒトゲノムの機能的ルックアップテーブルを目指して564種類の遺伝子発現プロファイルを格納したConnectivity Map (CMap)を構築・公開した(Science, 2016)。このCMapの利用者数は18,000人以上におよび、肥満・糖尿病や筋萎縮症の治療薬開発や、炎症性腸疾患と癌の新たな療法の研究開発に活用されてきた。この第1世代CMapは、164種類の摂動因子(perturbagens、低分子)が3種類の癌細胞株に与える遺伝子発現変動をAffymetrix GeneChip microarrayで解析したデータをもとにしていた。
  • 第1世代CMapからの拡充が当初からの懸案事項であったが、市販の遺伝子発現マイクロアレーはいうまでもなく、RNA-seqでさえも摂動因子と細胞株を多様化しCMapをゲノムスケールへと拡充するには、あまりにコストが過重であった。そこで、今回、トランスクリプトームを978種類の’landmark transcripts’へと縮退させたプラットフォーム'L1000(この'L'はlandmarkに由来する)'を開発し、第1世代の〜1,000倍のプロファイルからなる第2世代CMapを構築・公開した。
  • L1000アッセイに必要な試薬のコストは2ドル程度である。
  • L1000は、Gene Expression Omnibus (GEO)から公開されている12,031のAffymetrix HGU133A発現プロファイルをもとに、生物学的意味による事前評価を加えることなく、多変量解析を介したデータ駆動型で抽出した。L1000はヒト・トランスクリプトーム全情報量の82%をカバーしており、特定の機能クラスやタンパク質のクラスへの偏りがなく、また、30種類の組織にわたり特定の細胞系譜への偏りがないことも確認した。
  • L1000プラットフォームを対象として、42,080種類の摂動因子 (19,811 低分子、5,075遺伝子を標的とする18,493 shRNAs/3,462 cDNAs, および 314 バイオロジック)から1,319,138プロファイルを獲得し、これをCMap-L1000v1と命名し、全データをGEO(GSE92742)およびCMap Webサイト(CMap linked user environment (CLUE) analysis environment)から公開した。
  • CMap-L1000v1のデータセットは、アノテーションが付されている低分子を9種類の細胞株で評価した Touchstone v1と、アノテーションが付されていない低分子を3〜77種類の細胞株で評価したDiscovery v1で構成されている。
  • CMap-L1000v1を対象遺伝子からみると、ユニークな遺伝子12,318種類を網羅している。そのうち978種類が'landmark genes (LM)'として遺伝子発現を測定した遺伝子であり、残る11,350遺伝子のうち9,196遺伝子がGTExプロジェクト由来のRNA-Seqプロファイルの裏付けが得られた信頼性の高いデータを伴っている。これら二群のべ10,174遺伝子をBest INFerred Genes (BING) と呼び、全遺伝子をAll Inferred Genes (AIG)と呼ぶこととし、CMapの利用者は解析の際に、LM、BINGあるいはAIGを選択可能である。
  • CMap Webサイトは解析機能を備えており、解析対象とする生物学的事象に対応する遺伝子発現データのセットを投入すると、CMap内の遺伝子発現プロファイルとの類似性を基盤とする解析を介して、shRNAのオフターゲット作用、低分子の作用機序、疾患遺伝子の機能アノテーションなどが、遺伝子群と低分子および疾患との相関関係をルックアップすることが可能になる。
  • CMapは今後、低分子群の拡張、疾患関連遺伝子変異群の拡張、細胞群のiPSCやゲノム編集細胞などへの拡張に加えて、ハイコンテントイメージ解析(Image analysis in high-content screening)やプロテオミクス・プロファイリングとの融合へと、さらに拡充していく。
  • Q&AなどCMap解説Webサイト:Connectopedia: The CLUE Knowledge Base

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