タグ:可視化

[出典] Dynamic Imaging of RNA in Living Cells by CRISPR-Cas13 Systems.Yang LZ, Wang Y [..]  Chen LL. Mol Cell 2019-11-9. > 2019 Dec 19;76(6): P981-997.E7.
[# 2020-01-17追記] [SPOTLIGHT] Put on Your Para-spectacles: The Development of Optimized CRISPR-Cas13-Based Approaches to Image RNA Dynamics in Real Time. Davis BJ, O’Connell MR. Mol Cell. 2020-01-16.

 生細胞内でのRNA可視化にこれまで、MS2-MCPシステム、RNAアプタマー [1]、モレキュラービーコン [2]、RCas9 (RNA-targeting Cas9) [3]などが開発されてきたが、RNAの構造や機能への影響、煩雑な操作、経費、信頼性などの観点から一長一短であった。

 中国科学院分子細胞生物学研究所 (上海)を主とする研究グループは今回、RNAにガイドされてRNAを標的とするCRISPR-Casタンパク質であるCas13 [4-5]を利用することで、MS2-MCPシステムのように特定のDNA領域にMS2リピートを挿入するなどの遺伝子操作を必要とせず、RNA標識効率は従来の手法に匹敵する使い勝手の良い生細胞内RNA動態可視化法を実現した。
  • RNAを切断することなく標識するに最適なdCas13を同定するために、「相分離を介して核内構造体であるパラスペックルの形成をひき起こす長鎖非コードRNA」であるNEAT1を標的として、比較的多数の1細胞あたり~10-20個)パラスペックル/Paraspeckleを含みパラスペックルあたり~50-60個のNEAT1を含むHeLa細胞において、8種類のdCas13ホモログを評価し、選択性と感度の観点から、Prevotella sp. P5-125 (Psp)Cas13bとPorphyromonas gulae (Pgu) Cas13bを選択した。
  • 続いて、dPspCas13bによるNEAT1の標識を最適化するsgRNAsを同定し、さらに3xEGFPによる標識が最も効果的であることも同定した。
  • dPspCas13b-3xEGFPにより、NEAT1の他に、SatIIIMUC4およびGCNも可視化し、パラスペックと相関するNEAT1の動態の解析が可能なことを示した。
  • また、dPspCas13b-3xEGFPとMCP-mBuby3:MS2-KIの併用、または、dPguCas13b-3 × EGFPとPspCas13b-3xEGFPの併用により、一細胞内でのRNAsの2色標識が可能なことを示した。
  • さらに、dCas13による標識とdCas9による標識を組み合わせることで、一生細胞でのRNA転写物とゲノムDNAの同時可視化も実現した。
[参考crisp_bio記事]

[出典] Optimised insert design for improved single-molecule imaging and quantification through CRISPR-Cas9 mediated knock-in. Khan AO [..] Thomas SG, Morgan NV. Sci Rep. 2019-10-02.

 英国Centre of Membrane and Protein and Receptorsを主とする研究グループは、安定した定量的SMLM (Single-Molecule Localization Microscopy、1分子局在顕微鏡法)に適した高品質なサンプル調整法として、CRISPR-Cas9 HDRを介した標的タンパク質をコードする遺伝子へのタグのノックインを試みてきた。

 先行研究 [*]にて、3種類のヒト細胞株 (HEK293T、A549およびHel92.17)のチューブリン遺伝子TubA1Bに、mEGFPまたはPALMフォトスイッチタグmEosをCRISPR-Cas9 HDRを介してノックインし、超解像のSMLM (Single-Molecule Localization Microscopy/1分子局在顕微鏡法:PALM, dSTORMおよびSRRF)による可視化を評価し、PALMタグとしてmEGFPがmEosに優ることを見出していた [* CRISPR-Cas9 Mediated Labelling Allows for Single Molecule Imaging and Resolution. Khan AO, Simms VA, Pike JA, Thomas SG, Morgan NV. Sci Rep. 2017 Aug 16;7(1):8450]。

 研究グループは今回、CRISPR-Cas9ノックインにおいて、同一条件 (gRNA、リンカー、相同アーム)で様々なタグをノックインし、タグと標的遺伝子の発現およびSMLMでの可視化の比較評価を可能とするワークフローを開発した (原論文Fig. 1引用下図参照)。Fig. 1
  • このワークフローに基づいてTubA1BのCRISPR-Cas9タギングを再度比較し、単量体性(monomericity)を高めコドン最適化したmEos 4b COによって、mEos 3.2のPALMでの可用性が高めた。
  • 加えて、GPCRの一種であり治療標的として注目されているケモカイン受容体CXCR4のC末端タギングがCXCR4の分布と機能に与える影響を、mEos 4b CO、mEGFPおよびHaloTagについてHEK293T細胞で評価した。TubA1BについてもCXCR4についても、mEGFPがPALMタグとして優れているとした。
  • また、CXCR4の過剰発現よりも、CRISPR-Cas9による遺伝子タギングの法が、CXCR4のリガンド応答をより精密に捉えられることを示した。
  • crisp_bio注:研究グループは先行研究以来"CRISPR-PALM"という表記を使用している。

[出典] FRET-assisted photoactivation of flavoproteins for in vivo two-photon optogenetics. Kinjo T, Terai K [..] Matsuda M. Nat Methods 2019-09-09

背景
  • 光誘導・光活性化二量体形成 (light-induced/light-activated dimerization; LID/LAD)技術の開発によって、光操作によるタンパク質間相互作用ひいてはシグナル伝達経路の調節と解析が可能になった。例えば、シロイヌナズナ由来の光受容体フラボタンパク質クリプトクロム2 (CRY2)と同じくシロイヌナズナ由来のCIB1またはCIB1変異体CIBNのセットにより、青色光照射によって、CRY2を融合したタンパク質と、CIB1/CIBNを融合したタンパク質の、細胞内での相互作用の可視化が可能になった。
  • 一方で、2光子励起顕微鏡 (2P excitation microscopy: 2PEM)の開発によって、生体組織の深部の可視化も可能になった。
成果

 京都大学を主とする研究グループは今回、2P励起によるCRY2の活性化効率が極めて低いことを見出したが、CPY2の2P励起の効率を高める技術を開発してCRY2の2P励起を実現し (2P-activatable CRY2: 2paCRY2)、2paCRY2と2PEMによる細胞/組織内でのシグナル伝達の調節と解析を実現した。

 2paCRY2は、CRY2の光回復酵素相同領域 (CRY2PHR (photolyase homology region))に、リンカーを介してmTagBFP2を連結した構成であり、mTagBFP2が2P励起のエネルギーを吸収し、Förster共鳴エネルギー移動(FRET)を介してCRY2PHRに含まれている青色光吸収余因子であるフラビンアデニンジヌクレオチド (flavin adenine dinucleotide: FAD)に効率良く移動する仕組み (FRET-assisted photo activation: FRAPA)に基づいている。
  • 2paCRY2にRAF1タンパク質を結合した2paRAFを介して、3次元細胞培養系において、シングルセル分解能で、2P励起によって細胞外シグナル調節キナーゼ (Extracellular Signal-regulated Kinase: ERK)活性化を実現。
  • 2paRAFを発現させたマウス皮膚においても、ERKの2P励起を実現し、また、ERKの細胞間伝播の追跡も実現。
  • さらに、FRAPAを他のフラボタンパク質にも展開可能なことを、mTFP1とLOVドメインに基づく光誘導性核外移行因子 (light-inducible nuclear exporter: LINX)の組み合わせ2paLINXが、2p励起によって細胞核から細胞質へ移行することで、実証。

[出典] Live imaging of mRNA using RNA-stabilized fluorogenic proteins. Wu J, Zaccara S, Khuperkar D, Kim H, Tanenbaum ME, Jaffrey SR. Nat Methods. 2019 Sep;16(9):862-865. Online 2019-08-30.

背景
  • 発蛍光性RNAアプタマー (以下、RNAアプタマー)によって標的mRNAの動態を細胞内で追跡することが可能になった。mRNA内に組み込んだ発蛍光性RNAアプタマーは、単独では蛍光を発しない蛍光体に結合することで、蛍光を発生する (OuelletのレビューFigure 1引用下図左参照)。これまでspinach (ほうれん草)、コーン、マンゴーといったRNAアプタマーが開発され、いつしか'Aptamer Soup'という表現も使われ始めた (addgene blog引用下図右参照)。
2019-09-15 15
  • Cornell UniversityとオランダOncode Instituteの研究グループは、これまでRNAアプタマーに利用されてきた蛍光色素が、細胞内の脂質やDNAによって非選択的に活性化される問題や、なによりも、ゲノムに組み込むことが不可能で細胞外からの導入を必要とする問題を伴っているとし、より多彩で、ゲノムにコード可能な蛍光タンパク質 (以下、FP)を利用するRNAアプタマーを開発し、'Aptamer Soup'の味を広げるに至った。
デグロン技術とRNAアプタマー技術の融合
  • FPは恒常的に蛍光を発する。研究グループは、アルギニンに富むRNA結合ペプチド (Tatペプチド: 'SGPRRPRGTRGKGRRIRR') のC末端にRGを融合することで、デグロン配列'RRRG'も帯びた二機能性ペプチド‘tDeg’を設計・合成し、FPに融合する手法に至った。
  • FP-tDegはデグロン配列を介して細胞内プロテアソーム系により分解される ('消光'に相当)。一方で、このtDegのTatペプチドに、trans-activation response element (TAR)と呼ばれる28 ntの長さのRNAヘアピンが結合すると、tDegのデクロン配列が細胞内プロテアソーム系から遮蔽され、ひいてはFPが分解せずに安定して蛍光を発生する。
  • はじめに、HEK293細胞においてtDegを結合したEYFPが設計通り細胞内で分解し、また、プロテアソーム阻害によって安定化することを確認した。
  • 続いて、TARを加えることで、EYFP-tDeg系の中のEYFPが安定して蛍光を発することを確認した。さらに、TARの中でもVariant-2が最も強力に蛍光を誘導し (コントロールの36倍)、他のFP*-tDegについても、コントロールでは蛍光が非検出であるがミニマルであるのに比して強力に蛍光を誘導することから、TAR Variant-2を多色の植物の名称を借りてPepper RNAと命名した (* mNeonGreen, mCherry, NanoLuc, tetracycline repressor protein (TetR), EZH2ならびにNF-κB)。
MS2-MCP系との比較など
  • これまでmRNAsの可視化は主として、3'-UTRsに24-48重のMS2 RNAヘアピンを挿入し、細胞内に導入したMCP-FPが多重MS2に結合する現象を利用してきた。この際、細胞質内から非結合FP(バックグラウンド)を除去するために、MCP-FPに核移行シグナル (NLS)配列を融合する必要がある。FP-tDegとPeppe RNAの系では、Pepper RNAが存在しない状態でFPが高効率で分解されることから、NLSを介したバックグラウンド抑制を必要とせず、NLSが標的mRNAの動態に影響するリスクを回避することができる。
  • U20S細胞株におけるER指向性のmRNAやβ-actin mRNAをモデルとする実証実験において、Pepper RNAの3'-UTRへの挿入がmRNAsの安定性、翻訳および局在にほとんど影響を及ぼさないことも確認した。

[出典] "CRISPR-mediated live imaging of genome editing and transcription" Wang H [..] Qi LS. Science 2019-09-05.  <<< bioRxiv. 2019-08-14
# 本記事は、bioRixv版に準拠したcrisp_bio記事「CRISPR LiveFISH: 染色体再配列のリアルタイム可視化を、初代培養細胞をはじめとする多様な生細胞 (live cell)内で実現」を改訂し、Science版独自のツール"Dual CRISPR DNA/RNA LiveFISH"を加えた内容となります。
[# 2020-01-17追記] [SPOTLIGHT] Put on Your Para-spectacles: The Development of Optimized CRISPR-Cas13-Based Approaches to Image RNA Dynamics in Real Time. Davis BJ, O’Connell MR. Mol Cell. 2020-01-16.

 CRISPR LiveFISHは、蛍光色素で5'末端を標識したcrRNAとtracrRNAの二重鎖gRNA (蛍光gRNA)とdCas9からなる蛍光RNP (fRNP)によりgRNAsが認識・結合した標的を可視化し、in situ FISHで必要なDNA変性、in vitroで蛍光標識したdCas9とsgRNA (CASFISH)は固定化組織限定、といった双方の弱点を解消した高精度かつ生細胞で染色体の動態を高精度で追跡可能としたツールである。

予備実験
  • U2OS細胞に、第3染色体 (Chr3)の反復配列 (Chr3q29, ~500 repeats)を標的とするdCas9とCy3標識gRNAからなるfRNPをエレクトロポーレションし、fRNPに組み込まれたgRNAがRNaseに分解されることなくfRNPが標的に迅速・精確・安定に結合することを確認した。
実証実験:1〜2遺伝子座の可視化
  • 健常者ならびに13トリソミー (パトウ症候群)患者由来の出生前羊水細胞に、第13染色体 (Chr13)の反復配列(Chr13q34, ~350 repeats)を標的とするdCas9-Atto565標識gRNAを導入し、迅速可視化と反復配列の定量化を実現した。
  • U2OS細胞と初代ヒトT細胞において、異なる蛍光色素を利用した2種類のfRNPsの併用により、Chr3とChr13の反復配列の同時可視化を、直交したdCas9sやsgRNA/RNAアプタマー/RNA結合タンパク質の系よりも簡便に、実現した。
実証実験:CRISPR-Cas9による二本鎖DNA切断 (DSB)のリアルタイム観察
  • DNA損傷応答タンパク質53BP1の短縮型を蛍光タンパク質Appleで標識したU2OS細胞においてDSB過程の可視化を実現した。
  • Chr3上のPPP1R2遺伝子を標的とするRNPs (Cas9/gPPP1R2)と、PPP1R2の36kb上流に位置する反復配列部位Chr3q29を標的とするfRNPs (Cas9/A488-gChr3) を用意し、fRNPsを導入後にCas9/gPPP1R2を導入し、53BP1のChr3q29への凝集と遊離を追い、DSBの発生と修復の可視化を実現した。
実証実験:染色体転座の可視化
  • 53BP1を免疫染色したH2OS細胞に、Chr3上のPPP1R2とChr13上のSPACA7を標的とするRNPsと、Chr3q29とChr13q34 (SPACA7の切断部位から82 kb)が標的とするfRNPsを送達し、染色体の転座に至るPPP1R2SPACA7の動態をリアルタイムで観察し、シーケンシングを介して転座したセグメントも特定した。
実証実験:Dual CRISPR DNA/RNA LiveFISH
  • dCas9を介したDNA LiveFISHに、dCas13d(dCasRx) [*]を介したRNA LiveFISHを組み合わせることで、DNAとRNAの同時リアルタイム観察を実現した (* 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報. Salk研;Arbor Biotechnologies/NCBI)
  • テトラサイクリン応答因子 (TRE)の上流にLacO 反復配列アレイを帯び、下流にMS2反復配列アレイを帯びたU2OS 2-6-3細胞にdCas13d を発現させておき、LacOアレイを標的とするfRANP (dCas9/A488-gLacO)とMS2アレイを帯びたRNAを標的とするgMS2とを送達し、LacOアレイDNAと、Doxにより転写が始まるMS2 mRNAの動態を共にリアルタイムで観察した (原論文 Figure 4参照)。

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