タグ:生命倫理

1. ロシアのDenis Rebrikovが目指している難聴を予防するヒト胚ゲノム編集を巡るロシア国内外の議論と、子を持とうとしている両親の思い
[出典] "Crossing the line" Cohen J. Science. 2019-11-01;Parents weigh promise and risks of germline editing. Cohen J. Science. 2019-11-01
2. [書評] How to Grow a Human: Adventures in How We Are Made and Who We Are.
[出典] What does it mean to be alive? Fisher MA. Science. 2019-11-01
  • 書評の対象となったPhilip Ballが著した著書 は、脳オルガノイドや胚オルガノイドの形成、iPSCからの卵子と精子の作出、着床前遺伝子診断による重篤な遺伝子疾患以外の観点からの選別、ヒト胚ゲノム編集、などなど、バイオテクノロジーの急速な進歩を巡る考察
  • [関連crisp_bio記事] 2018-05-01 ヒト脳に'あまりに近い'モデルをどう受け止めていくのか?
3. [レビュー] CRISPRスクリーニング案内
[出典] [REVIEW] CRISPR: A Screener’s Guide. Le Sage C,  Lawo S,  Cross BCS. SLAS Discov. 2019-10-29.
  • Horizon Discovery社のチームが、製薬企業におけるCRISPRスクリーニング技術の開発動向をレビューし、進化し続けるスクリーニングプラットフォームの次の段階を探った。
4. CRISPR-Cas9によりヒト肝細胞でSPRY2をノックアウトするとグルコースの取り込みと脂肪滴の蓄積が亢進する
[出典] CRISPR-Cas9-mediated knockout of SPRY2 in human hepatocytes leads to increased glucose uptake and lipid droplet accumulation. Cook NL [..] Castillejo-López C, Ingelsson E. BMC Endocr Disord. 2019-10-29
  • SPRY2はGWASから体脂肪率と2型糖尿病 (T2DM)と相関する遺伝子として同定され、また、膵β細胞におけるインスリン産生と相関することが最近報告された。
  • Uppsala UniversityとStanford Universityの研究グループは今回、CRISPR-Cas9ノックアウト実験と遺伝子過剰発現実験から、SPRY2が代謝疾患に相関する一連の遺伝子の転写を制御することを同定した。
5. CRISPR/Cas9による血友病B患者由来iPSCsび遺伝子修復とその肝細胞への分化
[出典] CRISPR/Cas9-mediated gene correction in hemophilia B patient-derived iPSCs. Morishige S [..] Nagafuji K. Int J Hematol. 2019-10-29
  • 久留米大学、九州大学ならびに熊本大学の研究グループは今回、第IX因子 (F9)の第2エクソンのインフレーム欠損を帯びたiPSCsにおいて、CRISPR/Cas9システムを介した相同組換え修復過程により正常な修復し、正常なF第IX因子を発現する肝細胞iPSCs由来肝細胞を得た。
6. CRISPR-CasによるRpe65遺伝子編集によりレーバー先天性黒内障 (LCA)モデルrd12マウスの病態改善
[出典] CRISPR-Cas9–mediated therapeutic editing of Rpe65 ameliorates the disease phenotypes in a mouse model of Leber congenital amaurosis. Jo DH, Song DW [..] Kim JH, Lee JM. Sci Adv. 2019-10-30
  • Seoul Nataional U. HospitalとToolGen Incなどの韓国の研究グループは今回、Cas9と、sgRNAならびにドナーDNAを、2種類のAAVsを介してLCAモデルマウスに網膜下注射し、網膜色素上皮細胞においてRpe65上の責任変異である未成熟終止コドンを修復し、網膜電図の上で野生型の20-40%に相当するレベルまでの回復を実現した。相同組換え修復の効率は1%を超え、変異修復率は~1.6%であり、7ケ月にわたり組織の異常と癌化は見られなかった。
  • [関連crisp_bio記事] 2019-07-27 レーバー先天性黒内障10型のCRISPR-Cas9 in vivo遺伝子編集による治療の第1/2相試験'Brilliance'、患者の受付を開始

[出典] Could editing the DNA of embryos with CRISPR help save people who are already alive? Joseph A. STAT News 2019-09-16.

'Saviour sibling' - 他に治療法が無い遺伝病の兄姉のドナーとなる目的とした誕生に至った弟妹
  • ファンコーニ貧血 (Fanconi anemia、FA)は様々な臓器の発育不全や悪性腫瘍などを発症する遺伝子疾患である。責任遺伝子としてDNA修復遺伝子19種類 [1]が知られているが、効果的な治療法が確立されておらず、造血器腫瘍に対する造血幹細胞の移植が唯一長期的な治療効果をもたらす可能性がある療法である。
  • 造血幹細胞移植 [2]には、患者のHLA型と一致するHLA型を帯び、かつ、FA変異その他の遺伝子疾患変異を帯びていない細胞のドナーの協力が必要である。HLA型が一致するドナーが存在する確率は、非血縁者の間では極めて低く、同じ両親から誕生した兄弟姉妹の間では4分の1の確率で存在するが、現実にHLA型が一致する兄弟姉妹が存在する例は稀である。
  • こうした状況の中で、体外受精 (IVF)と着床前診断 (PGD)を経て、2000年に"The Miracle of Molly" [3-4]が公になった。Molly Rose NashはFA患者で兄弟姉妹が存在しない一人っ子であり、FA変異をそれぞれ帯びていた両親は第2子も常染色体劣性遺伝病FAであるリスクを恐れていたが、4回のIVF (US$15,000)とPGD (US$6,000)を経て5回目で24個の受精卵から唯一、MollyとHLA型が一致しFA関連変異を帯びていない受精卵を得て、2000年8月29日にMollyの弟Adamを出産するに至った。その際に臍帯血を採取保存し、Mollyの骨髄細胞を破壊した後に骨髄移植が行われた。移植した骨髄細胞はMollyにて正常に機能し始めたが、FAの症状は続き、食欲を感じないことから経鼻チューブを介して栄養を摂り、毎年35-40回、固形腫瘍のスクリーンに通院している。
  • Adam Nashは公開された'saviour sibling'の初めての例とみられるが、英国では、英国人家族が米国で'savior sibling'による遺伝病治療が行われた後、2008年にIVF-PGDを介した'saviour sibling'が臓器移植を排除した形で合法化され [5]、2010年に英国における'savior sibling'によるFA治療の成功例が公になった [6] 
  • 'Savior sibling'これまでに数百例あるとされているが、兄姉の救済を目的とする行為*、IVF-PGDを経て「受精卵を選別する行為、誕生した弟妹の自己認識などの観点から生命倫理の議論が続いている [* 'saviour sibling' は'donor baby'とも称される]。
ヒト胚ゲノム編集
  • CRISPR技術の発見以来、ヒト胚ゲノム編集により遺伝病の責任変異を修復するアイデアが議論されてきたところ、ヒト胚ゲノム編集により'CRISPRbabies' [7]が現実に誕生した。しかし、倫理的にも、手続き的にも、医学的にも、あまりに杜撰であったことから、それ以後、ヒト胚ゲノム編集に関する議論が沸騰し、現在、その実験研究はモラトリアムに位置付けられている。
  • その議論の中で、ヒト胚ゲノム編集実験研究の対象として「他に治療法の無い致死的遺伝疾患の予防」が挙げられているが、'savior sibling'はこの議論の陰に隠れていた「他に治療法の無い致死的遺伝子疾患を帯びている患者の治療」の観点を浮上させる。
  • 骨髄細胞の不全を修復するドナーからの骨髄移植には自家造血幹細胞移植同種造血幹細胞移植の2種類の手法がある。'Savior sibling'は同種造血幹細胞移植にあたるが、CRISPR遺伝子編集技術は、HLA型の編集と遺伝子変異の修復を介して、患者自身も含むドナーの範囲を広げる可能性を秘めている。
  • 2015年の第1回ヒト遺伝子編集国際サミット [8] で、ヒト胚ゲノム編集の研究開発を進めるという文脈の中でGeorge DaleyはIVF-PGDの限界を指摘している。
  • 遺伝病の遺伝子治療の研究開発がCRISPRゲノム編集技術の誕生によって加速し、FAについてもCRISPR/Cas9によるFA発病の分子機構解析や遺伝子治療の研究開発が始まっているが [9-12]、生命倫理を巡る議論の成熟とともに、技術の成熟も待たれる。
[引用資料]
  1. 分子レベルで見たファンコーニ貧血. Wikipedia
  2. 造血幹細胞移植とは. 国立がん研究センターガン情報サービス 2019-09-23.
  3. The Mirale of Molly. 5280 Denver's Mile High Magazine 2005-08-01.
  4. Case Study in Savior Siblings. Scitable by Nature Educataion 2013-06-11.
  5. UK Parliament legislates 'saviour sibling' treatment. BioNews 2008-05-27.
  6. First complete 'saviour sibling' transplant carried out in the UK. The Telegraph 2010-12-22 
  7. 2019/08/02 'CRISPRbabies'に至るまでと'CRISPRbabies'のこれから 
  8. International Summit on Human Gene Editing (2015) The National Academies of Sciences,  Engineering and Medicine.
  9. CRISPRメモ_2019/02/01_2  [第1項] CRISPR/Cas9によるファンコーニ貧血遺伝子治療の可能性
  10. 2018-08-07 FANCAが一本鎖アニーリングと相同鎖交換を触媒することで、DSBの相同組換え修復を亢進する
  11. CRISPRメモ_2018/12/19 - 1  [第4項] ファンコーニ貧血症の分子機構解析の基盤となるゼブラフィッシュ変異体の作出
  12. CRISPRメモ_2017/09/03 [第2項] [レビュー] 血液疾患CRISPR/Cas9遺伝子治療の最新動向

1. これまで語られなかった賀建奎にとっての'信頼の輪'
[出典] "The untold story of the ‘circle of trust’ behind the world’s first gene-edited babies" Cohen J. Science 2019-08-01
  • Science誌スタッフライターのJon Cohenの記事のタイトルにある'circle of trust'は、Heの広報を担当していたRyan Ferrellの言葉の"He's circle of trust"に由来し、「胚ゲノム編集の行為自体には関与していなかったが、事が公になる前から、賀建奎の行為を知っていたまたは怪しんでいた科学者 (ノーベル賞受賞者を含む)、経営者、起業家、NASEM報告関係者、IVF専門医ならびに政治家」の'輪'を意味している。'輪'の何人かはHeの計画を厳しく批判したが、他は、歓迎あるいは沈黙した。
  • Heを知る人々の何人かはScienceに対して、「Heの秘密を打ち明けられる人 (confidantes)の輪がどのように形成され、科学コミュニティーと一般社会との間のより大きな輪がどのように壊れたか」を明らかにすべきとした。
  • Heの計画を止めさせようとしたスタンフォード大学の生命倫理学者William Hurlbutは、「Heは彼が信頼していた人々から裏切られた (was "thrown under the bus")」「(関係者は)出口に殺到しているが("ran for the exit")、何を知っていたか、何をしたか/何をしなかったか」を公にした上で、「どうしてよいかはっきりしたことはわからない、誰も来たことのない道なのだから」とすべきである、とコメントした。
  • Cohenは、Henの故郷での生活から始まり、合肥市の中国科学技術大学、米国Rice大学 (Deem研)、Stanford大学 (Stephen Quake研)、深圳市南方科技大学、 深圳市のPeacock planから600万US$の資金を得てDirect Gemomics設立の経緯を辿り、Direct Genomicsからの輪の拡がりを明らかにた。
  • また、2017年6月10日深圳市南方科技大学にて、賀建奎が不妊の問題を抱えていた夫婦を胚ゲノム編集へ誘導する50分間の会合 (Science誌はそのビデオの一部を確認済み)を経て、その17ヶ月後の2018年11月の上海第2回ヒトゲノム編集国際サミットに至るまで、'輪'の内外の関係者とのやろとりを詳らかにした。
2. LuLuとNanaが引き受けさせられたこと
[出典] Did CRISPR help—or harm—the first-ever gene-edited babies? Cohen J. Science 2019-08-01.
  • Heの胚ゲノム編集は、HIV患者の父から子へのHIV感染防止とHIVに対する耐性をもたらすことを目的としたとされている。しかし、父から子へのHIV感染防止は、ゲノム編集を行うまでもなく精子洗浄によって可能である。
  • HIV耐性の遺伝型として北欧集団の中からCCR5遺伝子のホモ型32-bp欠損CCR5Δ32が知られているが、CCR5にはHIV以外のウイルスに耐性をもたらす、CCR5Δ32は短命になる傾向がある、などCCR5およびCCR5Δ32の生物学的意味が定まっていない。
  • Heらは32-bpの欠損ではなく、その一部の15-bpの削除を目指したが、CCR5Δ15がもたらす可能性があるタンパク質の機能は不明である。
  • Heらの胚ゲノム編集結果はヘテロ型CCR5変異であり (CCR5全長アレルが1コピー存在)、また、モザイク (両アレルともCCR5全長)が発生したと推定される。
  • LuLuとNaNaのその後の健康状態は不明なままである。
関連crisp_bio記事

1. 癌細胞株に見られる変異を標的とするCIRPSR/Cas9ノックアウト実験により癌細胞の増殖・生存の必須変異を同定
[出典] "CRISPR/Cas9 as a tool to dissect cancer mutations" Sayed S [..] Buchholz F. Methods 2019-05-09.
  • TU Dresdenのグループは、結腸癌細胞株RKOに見られる各変異を特異的に標的とする100種類のsgRNAsを設計し、プール型スクリーンを経て、UTP14A: S99delSをドライバー遺伝子と同定
2. キノーム (kinome)ワイドCRISPR/Cas9により、胃癌のFGFR阻害剤に対する感受性を調節するキナーゼを同定
[出典] "A functional CRISPR/Cas9 screen identifies kinases that modulate FGFR inhibitor response in gastric cancer" Chen J [..] Ji HP. Oncogenesis 2019-05-20.
  • Stanford University School of Medicineの研究グループは今回、FGFR2が増幅している胃癌細胞株 KatoIIIのFGFR阻害剤AZD4547に対する感受性を制御するキナーゼ20種類をILK、SRCおよびEGFRシグナル伝達パスウエイから同定した。
  • さらに、AZD4547とILKを標的とする低分子阻害剤Cpd22の組み合わせが、KatoIII及びその他3種類のFGFR2増幅胃癌細胞株に対して、相乗効果を示すことを見出した。
3. 鼻咽頭癌が依存する細胞因子とパスウエイをゲノムワイドCRISPR遺伝子ノックアウトスクリーンで同定
[出典] "Genome-wide CRISPR-based gene knockout screens reveal cellular factors and pathways essential for
nasopharyngeal carcinoma" Wang C [..] Zeng MS, Zhao B. JBC 2019-05-09.
  • Brigham and Women's Hospitalと中大腫瘤防治中心などの米中の研究グループは、CRISPRスクリーンで同定した鼻咽頭癌の必須因子とパスウエイを阻害が、鼻咽頭癌の増殖を抑制する一方でSV40で不死化した正常な鼻咽頭上皮細胞を障害しないことを確認
4. CRISPR/Cas9でRDR6遺伝子をノックアウトすることで、ベンサミアナタバコでのタンパク質の効率的発現を実現
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated knockout of the RDR6 gene in Nicotiana benthamiana for efficient transient expression of recombinant proteins" Matsuo K, Atsumi G (産総研).Planta 2019-05-07.
  • ベンサミアナタバコのRDR6遺伝子をCRISPR/Cas9でノックアウトすると、組み換えタンパク質の効率的な一時的発現が実現する。
5. 脂質とカルテノイドの生産微生物工場として有望な担子菌酵母Rhodosporidium toruloidesのCRISPR/Cas9ゲノム編集法を確立
[出典] "Developing a CRISPR/Cas9 system for genome editing in the basidiomycetous yeast Rhodosporidium toruloides" Jiao X [..] Zhang S, Zhao ZK. Biotechnol J 2019-05-08.
  • 大連化学物理研究所の研究グループが、コドン最適化したSaCas9を十分発現する系統において、Ub6プロモーターでsgRNAを発現させることでindels変異誘導率~60%を実現し、ドナーDNAを加えることでHDRを介した遺伝子ノックアウトを実現。
6. PAMを拡張したxCas9(*1)とSpCas9-NG(*2)によるシロイヌナズナへの変異誘導を検証
[出典] "Engineered xCas9 and SpCas9-NG variants broaden PAM recognition sites to generate mutations in Arabidopsisplants" Ge Z [..] Qu LJ. Plant Biotechnol J 2019-05-09.
  • 吉林大学を主とする研究グループは今回、NGG以外のPAMを伴うゲノム領域の編集効率について、xCas9 3.7は野生型のトウモロコドン最適化した野生型Cas9 (ZmCas9)に及ばず、SpCas9-NGはZmCas9に優ったが、ZmCas9によるNGG PAMを伴うゲノム領域の編集効率には及ばなかった。xCas9 3.7とSpCas9-NGによる機能喪失変異誘導は実現した。
  • 哺乳類細胞のような編集効率が得られなかった原因はアグロバクテリウムによる形質導入に起因すると推定。
参考crisp_bio記事
  • (*1) 2018-03-02 xCas9:PAMの拡張とオフターゲット抑制を両立
  • (*2) 2018-08-31 SpCas9-NG:SpCas9の標的範囲をさらに広げる合理的な変異導入
7.  科学コミュニティーのリーダは、'CRISPR babies'に対処すべきか?
[出典] "How Should Science Respond to CRISPR'd Babies?" Greely HT*. Issues Sci. Technol. 2019 35, no. 3 (Spring 2019): 32-37.
(*) Deane F. and Kate Edelman Johnson Professor of Law and a professor, by courtesy, of genetics at Stanford University
  • He Jiankuiの追放を先導すべき;Heの計画・行動を知りながら黙して語らなかった関係者は、情報を公知すべきであったのか、公知すべきとしてどのような枠組みで行うべきであったか、今後、危険な、倫理に反する、あるいは、違法な研究の通報を促す仕組みを熟慮すべき;第2回ヒトゲノム編集国際サミット終了時の報告や主要な主催者のコメントには、生殖細胞系列のゲノム編集に関する当初の議論に見られた「社会的受容を前提として」といった意識が見られない;モラトリウムを言うのであれば、モラトリウムを解除する条件を明確にすべし

出典
  1. "China’s CRISPR twins might have had their brains inadvertently enhanced" Regalado A. MIT Technology Review. 2019-02-19.
  2. Zhou et al. "CCR5 is a suppressor for cortical plasticity and hippocampal learning and memory"  Zhou M, Greenhill S [..] Fox K, Silva AJ. eLife 2016-12-20
  3. Joy et al. "CCR5 Is a Therapeutic Target for Recovery after Stroke and Traumatic Brain Injury" Joy MT [..] Carmichael ST. Cell. 2019-02-19.
  4. YouTube 2018-12-03 International Summit on Human Genome Editing - He Jiankui presentation and Q&A. Society and Ethics Research Wellcome Genome Campus. YouTube 2018-12-03 
  5. "How do HIV elite controllers do what they do?" Saag M, Deeks SG. Clin Infect Dis. 2010-07-15.
  6. "Frequencies of gene variant CCR5-Δ32 in 87 countries based on next-generation sequencing of 1.3 million individuals sampled from 3 national DKMS donor centers" Human Immunology. 2017-10-05.
CRISPRbabies
  • 賀建奎らの「HIV感染・予防を名目とするCRISPR技術によるヒト胚でのCCR5ノックアウト」については、ヒト胚ゲノム編集の本来的な倫理の観点から始まるさまざまな批判がされてきた (2018-12-04crisp_bio記事 ”CRISPR遺伝子改変ベビー中国で誕生か(4) 論点整理 - 関連記事を順次追加”参照)。その中には、恣意的で不十分なインフォームド・コンセントに対する批判、導入された変異プロファイルに対する批判、HIV感染から胚を守る手段がすでに存在しまたヒト胚ゲノム編集そのものおよびCCR5欠損がもたらす'影響'が未知であるところでの実施に対する批判、が含まれていた。
  • '影響'については例えば、第2回ヒトゲノム編集国際サミットでの講演後の質疑応答で、座長からCCR5のノックダウンまたはノックアウトによるマウス脳機能向上の論文 (Zhou et al, 2016)について問いかけがあり、賀建奎は、「(論文を知っているが) その内容には第三者の検証が必要である」とし、また「ゲノム編集を'enhancement'に利用することには反対する」と応じた(YouTube 2018-12-03)。
  • Zhou論文は、CCR5のノックダウン、ノックアウトおよび過剰発現実験から、CCR5が皮質可塑性と海馬による学習記憶を抑制することを見出し、HIV患者に見られる認知障害の一因が、ウイルスによるCCR5の過剰発現であることを示唆した。
  • CCR5阻害剤であるマラビロクは、2007年にHIV治療薬としてFDAに承認されたが、現在、脳卒中からの機能回復を目的とする第2/3相試験がUCLAにて進行中である (ClinicalTrials.gov)。
CCRB5と脳損傷の予後
  • UCLAとHebrew University of Jerusalemなどの米国・イスラエルの研究グループは今回 (Joy et al, 2019)、CCR5と脳卒中あるいは外傷性脳損傷 (Traumatic Brain Injury, TBI)の予後との相関を解析した。
  • マウスモデル:脳卒中後、CCR5が皮質ニューロン特異的に発現するが、運動前野においてCCR5をノックダウンすると、運動制御能力の回復が早まり、この回復は、基質的変化とCREBおよびDLKシグナル伝達の上方制御を伴う。CCR5ノックダウンはTBI後の認知障害も改善する。また、HIV治療薬のCCR5阻害薬マラビロクも、脳卒中後の運動能力回復と、TBI後の認知障害からの回復を誘導した。
  • ヒトにおけるCCR5変異:臨床試験のコホートにおいて、CCR5 (CCR5-Δ32)機能喪失変異を帯びている参加者の脳卒中後の運動能力と認知能力の回復が早いこと見出した。
CCR5-Δ32の意味
  • CCR5-Δ32はHIV感染耐性を帯びた'エHIV elite controllers'の遺伝的特徴であり、賀建奎らもそれを目指したヒト胚ゲノム編集を行った。しかし、得られた変異体はCCR5-Δ32でないことが指摘されていた (Searn Ryder 2018-11-29ツイート)。
  • Joy論文とZhou論文は、賀建奎らのゲノム編集がHIV elite controllersのCCR5変異を再現できなかった一方で、ヒトの'enhancement'を達成た可能性を示唆する。
  • ヒト胚ゲノム編集を巡る議論ではこれまでに、他に治療法が存在しない致死的な疾患の治療に限り認める一方で'enhancement'には認めないとする方向が見えてきている。今後こうした議論において、'疾患とは何か'、'enhancement'とは何か、'通常・正常'とは何か、治療効果と同時にenhancement効果をもたらすヒト胚ゲノム編集の位置付け、を改めて問われることになる。
関連crisp_bio記事:2019-02-27 賀建奎らによるヒト胚でのCCR5遺伝子編集の意味を改めて考える (2)

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