タグ:遺伝子ドライブ

[出典] A transcomplementing gene drive provides a flexible platform for laboratory investigation and potential field deployment. López Del Amo V [..] Gantz VM. Nat Commun 2020-01-17

 UCSDとUC Berkeleyの研究グループは論文冒頭で、遺伝子ドライブ (以下、GD)には、full GDgRNA GDの2種類がある、とした。
  • Full GDは、標的とする遺伝子の一方のアレルにCas9遺伝子配列とgRNA配列の1セット (以下、GD因子)を挿入し、GD因子が野生型アレルにDSBを誘導し、内在相同組み換え修復機構がGD因子を帯びたアレルをテンプレートとしてDSBを修復することで、GD因子がメンデルの法則を超えて伝播していく仕組みである。
  • 一方で、gRNA GDは、伝播されるGD因子はgRNAだけであり、例えば、gRNAを帯びたオスとCas9を帯びたメスを交配することで遺伝子ドライブを抑制可能にする手法である [*]。
  • Full GDは、遺伝子ドライブは想定外の伝播が発生するリスクを伴い、gRNA GDは標的生物集団内の多くの個体がCas9を帯びていることが前提となり、実験室では可能であっても、野外の大規模な生物集団へ適用は現実的でない。
  • [*] gRNA GDの例:2019-01-26 哺乳類動物遺伝子ドライブの試み 
 研究グループは今回、ショウジョウバエにおいて、full GDとgRNA GDのいいとこ取りをしたtGDを開発した。この手法は、Cas9とgRNAを異なるトランスジェニック (transgenic)系統に分けて (split)おくことで、2系統が分離されていればgRNA GDと同等の安全性を帯び、交配によってCas9とgRNAが揃えばfull GDと同等の効果を発揮する [tGDシステムついてFig. 1引用下図の模式図 (a)と、ショウジョウバエでの例示(b, c)参照]。tGD
 Cas9とgRNAをスプリットしたことで、Cas9とgRNAそれぞれの調節が容易になり、低分子を介したCas9の活性の誘導と抑制も可能になったtGDは、full GDよりも可塑的なシステムとなり、また、数値シミュレーションにより、生物集団の改変についてtGDがfull GDと同等と以上であることも示された。

[出典] Mathematical modeling of self-contained CRISPR gene drive reversal systems. Heffel MG, Finnigan GC. Sci Rep. 2019-12-27

 生物集団の遺伝子型を全て改変さらには絶滅にいたらしめる可能性をもった技術である遺伝子ドライブ(GD)を制御するシステムが多々提案されてきた。Kansas State Universityの研究チームは今回、外部刺激を、GDに組み込まれたヌクレアーゼの機能そしてまたは生物集団全体のフィットネスの調節機能へ変換するモデルを構想し、外部刺激で自己破壊のメカニズムを誘導するsgRNAを組み込んだGDの数理モデルを開発した。
 このモデルは進行中のGDの制御用に新たなGD個体を導入する必要がない自己完結型 (self-contained)である [Figure 3引用下図参照]。Gene Drive
遺伝子ドライブ一般向け解説WEB記事

[出典] A bacterial gene-drive system efficiently edits and inactivates a high copy number antibiotic resistance locus. Valderrama JA, Kulkarni SS, Nizet V, Bier E. Nat Commun. 2019-12-16. 
 微生物に由来するCRISPR-Casシステムにより、微生物のゲノムそしてまたはプラスミドのDNAを編集することで、病原性や薬剤耐性の遺伝子を除去する試みが続いているが [1]、実用化には、多コピーのプラスミドを効率的に標的する必要がある。CRISPR-Casシステムは一方で、自己増殖するCas9-gRNAカセットを介した遺伝子ドライブ (Wikipediaから引用した下図模式図参照)遺伝子ドライブ機構
による感染症媒介昆虫集団や侵入外来種集団の制御への展開が試みられ [2-3]、遺伝子ドライブの性能がショウジョウバエ、酵母さらにはマウスといった二倍体生物において実証されている。
 UCSDの研究チームは今回、λRedリコンビナーゼの助けを借りて、Cas9切断部位に相同組み換え修復過程を介して活性なgRNAカセットをコピーしていく微生物版遺伝子ドライブシステム"pro-active" genetic system (Pro-AG)を開発し、薬剤耐性遺伝子を帯びたプラスミドを多コピー帯びたE. coliモデルにおいて、アンピシリン耐性遺伝子β-ラクタマーゼ (bla)を、CRISPR-Cas9による単なる切断の~100倍の効率で不活性化することに成功した (原論文Fig. 1引用下図参照)。Fig. 1
 上図は、Cas9切断部位へのgRNAの挿入を伴わない通常のCRISPR-Cas9による編集 (a)と、Cas9切断部位へのgRNA挿入を伴うPro-AGによる編集 (c)の模式図と、選択培地でのアンプリシン耐性 (Amp(R))を帯びたコロニー形成能の比較 (b と d)を示している (図の中のaTCはtetプロモーターを介したpCas9からのCas9の発現を誘導するアンヒドロテトラサイクリンの略)。
 研究チームは、Pro-AGがサイズの大きなプラスミドに対しても有効であることを示し、また、遺伝子ターゲッティングに利用可能なことをGFPのノックインで実証し、Pro-AGは汚水、養魚池、肥育場などの環境における微生物集団の制御に展開可能とした。

[参考記事]
  1.  crisp_bio 2017-05-08 CRISPR-Casヌクレアーゼを設計して、ゲノム配列特異的に機能し、抗生物質耐性菌にも有効な抗菌剤を創出する
  2. crisp_bio 2019-01-26 哺乳類動物遺伝子ドライブの試み
  3.  crisp_bio 2018-06-22自己増殖型CRISPR遺伝子ドライブシステムは、野生集団への侵襲性が高い可能性がある

[出典] Design and analysis of CRISPR-based underdominance toxin-antidote gene drives. Champer J,  Champer SE, Kim J, Clark AG, Messer PW. bioRxiv. 2019-12-02.

 ショウジョウバエで初めて実装された従来のCRISPRホーミング遺伝子ドライブにTA (toxin-antidote/毒素-抗毒素) の概念を取り入れたCRISPR TA遺伝子ドライブ [1]の研究開発を精力的に進めている [2-4]コーネル大学の研究グループから、CRISPR TA遺伝子ドライブの新なモデルがbioRxiv に投稿された。

 CRISPR TA遺伝子ドライブは主として従来のCRISPRホーミング遺伝子ドライブに伴う耐性の発生回避を目指していたが、今回は、ヘテロ型の適応度を下げる手法 [*]を採用した遺伝子ドライブの地域的封じ込めの強化を図り、従来および今回開発した種々のCRISPR TA遺伝子ドライブの性能を比較評価した [* underdominance: drive/wild-type heterozygotes are less successful than either drive or wild-type homozygotes (bioRxiv投稿から引用)]:Table 1から引用した下図のCRISPR TA遺伝子ドライブのタイプの一覧表参照
Table 1
[略号:TARE, Toxin-Antidote Recessive Embryo drive;  TADE, Toxin-Antidote Dominant Embryo drive;  TADS, Toxin-antidote dominant sperm drive; TADDE, Toxin-Antidote Double-rescue Dominant Embryo drive; TAHRE, Toxin-Antidote Half-rescue Recessive Embryo drive; TADE Underdominance (Figure 5引用下図参照)を含むTADE派生型]
Figure 5
[参考crisp_bio記事]
  1. CRISPRメモ_2019/02/22 [第3項] 合成利己的遺伝要素, CleaveR (Cleave and Rescue (ClvR), による遺伝子ドライブ
  2. CRISPRメモ_2019-05-06 [第1項] 相同組み換えに替えて毒素-抗毒素システムに基づくCRISPRドライブシステムにより、耐性発生と無制限な拡大を回避する
  3. 2019-05-29 抵抗は無駄だ:ハプロ致死性遺伝子を標的とするCRISPRホーミング遺伝子ドライブ
  4. 2019/06/28 _CRISPRメモ [第3項] 多重gRNAsを利用したCRISPRホーミング遺伝子ドライブをシミュレーションと実験により評価

[出典] Winning the Tug-of-War Between Effector Gene Design and Pathogen Evolution in Vector Population Replacement Strategies. Marshall JM [..] Akbari OS. Front Genet. 2019-10-30. 

 疾病を媒介する生物に抗する集団置換戦略 (Population replacement)は、媒介生物へのバクテリア感染や病原体の伝播を阻害するエフェクター遺伝子の導入を介して、標的集団の縮小・絶滅や病原体伝播の阻害を目指す。
  • バクテリア感染の手法については最近、昆虫共生細菌ボルバキア (Wolbachia) を利用して、特定の島の中のヒトスジシマカの集団を90%以上縮小したとする論文がNature誌に掲載された [1]。
  • エフェクター遺伝子の利用については、CRISPR技術に基づく遺伝子ドライブの開発が急速に広がりつつある。
  • UC BerkeleyとUCSDの研究グループは今回、熱帯熱マラリア原虫 (Plasmodium falciparum)を媒介するガンビエハマダラカ (Anopheles gambiae)や、デングウイルス、ジカウイルス、チクングニアウイルスなどのアルボウイルスを媒介するネッタイシマカ (Aedes aegypti)を標的とするエフェクター遺伝子に対して、媒介蚊とウイルスが獲得する耐性と、それを、ゲノム上の多数のサイトそしてまたは感染・発生段階の多くの段階を標的とするエフェクターの利用により解決する手法をレビューした (Figure 2/3 引用下図参照)。2019-11-01
  1. NEWS AND VIEWS: Tiger mosquitoes tackled in a trial. Armbruster PA. Nature 2019-07-17. https://dx.doi.org/10.1038/d41586-019-02000-0; Incompatible and sterile insect techniques combined eliminate mosquitoes. Zheng X, Zhang D [..] Xi Z. Nature. 2019-07-17

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