タグ:遺伝子間相互作用

[出典] "Exploring genetic interaction manifolds constructed from rich single-cell phenotypes" Norman TM, Horlbeck MA [..] Gilbert LA, Weissman JS. Science. 2019-08-08. bioRxiv 2019-04-07

背景
  • 多細胞生物を構成する細胞の多様性は、遺伝子の多さにではなく驚くほど少数の遺伝子の発現の組み合わせ (以下、遺伝子の協働)に由来する。遺伝子の協働がもたらすフェノタイプの特定は、遺伝子間相互作用 (genetic interactions: GIs)を定量的に測ることで実現する。GIの定量化は原理的には、一組の遺伝子AとBのそれぞれへの変異導入 (以下、perturbation)がもたらすフェノタイプと、ABの双方のperturbationがもたらすフェノタイムの比較に基づいて達成できる。しかし、ヒト細胞内で転写される~10,000種類の遺伝子のGIs定量化には、~5,000万組の二重変異体を作出し、その作用を迅速に判定することになり、簡単ではない。また、細胞集団バルクでの測定は、細胞間で変動するGIsの平均像しか捉えることができない。
  • UCSFのJ. S. Weissmanらは、2016年にCRISPR-Cas9により遺伝子にperturbationを加え、その作用をscRNAseqで見ていくPerturb-seqを開発し、何十万もの細胞集団を対象として、1遺伝子または複数遺伝子のperturbationが個々の細胞の遺伝子発現プロファイルに及ぼす作用の評価を可能としていた。(Cell, 2016; crisp_bio 2018/12/24と2016/12/19参照)。
概要
  • J. S. Weissmanらは今回、Perturb-seqから得られる多くの1遺伝子または1対の遺伝子ペアのperturbationに対応する各細胞のフェノタイプを点として多次元空間にプロットすることを繰り返していくことで多次元空間に点の集合としての表面が立ち現れてくる(原論文 Fig.1 A CRISPRa fitness-level genetic interaction (GI) map参照)。これは数学でいう多様体 (manifold)に相当し、研究グループはこのGI manifoldに基づいてGIsとフェノタイプの相関関係を探る手法を開発した。
[*] crisp_bio記事

[出典]
 タンパク質構造解析は、X線結晶構造解析、NMRならびにクライオ電顕法の進歩とともに加速されてきたが、複雑な複合体タンパク質や膜タンパク質の解析には特に、サンプル調整、巨大なシンクロトロン、強力な磁石、超低温といった専用そしてまたは巨額な専用装置を必要とする。

 タンパク質構造解析の別法は、アミノ酸配列の変異が他の分子との結合親和性などの機能に与える影響を見ることから、タンパク質の3次元構造を再構成する試みである。その代表的な手法が、タンパク質配列 (アミノ酸配列)の中で、折り畳まれて三次元構造上で接触あるいは近接している残基 (アミノ酸)は互いに制約しあう (co-constraint)ことで共進化 (co-evolution)してきたという仮説のもとに、多様な生物種にわたる多数の相同なタンパク質配列 (アミノ酸配列)のアライメントから共進化してきたアミノ酸ペアを同定することで、3次元構造を再構成する手法である (Figure 1: Marks et al. Nature Biotech. 2012 参照[*1])。この手法は、計算機上で実現可能であり専用の装置を必要としないが、構造未知のタンパク質ドメインの~70%には解析に十分な相同配列データが存在しないと言われている。

 Chris SanderとDebora S. Marksが率いる Harvard Medical School, Dana-Farber Cancer InstituteならびにBroad Instituteの研究グループ [以下、USグループ;論文1]と、 スペインBarcelona Institute of Science and TechnologyのJörn M. SchmiedelとBen Lehner [以下、SPグループ;論文2]は今回、 互いに独立に、進化の結果であるアミノ酸配列データのアライメントに基づく変異プロファイルと機能の相関を解析する手法に続く網羅的な変異誘発実験に基づく遺伝型と表現型の相関解析に基づくタンパク質機能解析の手法 (Deep mutational scanning)を、タンパク質三次元構造の再構成へと展開した:
  • USグループもSPグループも、Ren SunらのUCLAの先行研究(Current Biology, 2014 [*2])に基づいている:Sunらは始めに、Streptococcus由来プロテインGのIgG結合ドメイン (GB1) を対象として、その全ての56アミノ酸の飽和変異に相当する1,045種類のDNAライブラリと、アミノ酸のほぼ全ての組み合わせ (95.1%)に相当する二重変異に相当する 509,693種類のDNAライブラリを用意し、バクテリアで発現させ、各変異体のヒトIgG-Fcへの結合親和性を評価した。次いで、この遺伝子/アミノ酸変異と機能のデータをもとに、二重変異体に見られる機能の変動が、それぞれの単一変異体に見られる機能の変動からの想定よりも顕著に大きい遺伝子(タンパク質)ペアは、その遺伝子間相互作用によって表現型に影響を及ぼすエピスタシスな関係にあると、判定した。
  • 両グループ共に、GB1のαヘリックスとβシートに見られた遺伝的相互作用の明確なパターンに注目して二次構造を予測した上で、USグループは、上方制御が最も強く現れる遺伝的相互作用に基づいて三次元構造上で接触ありと判定し、SPグループは、上方制御に加えて下方制御をもたらす遺伝的相互作用も加えたスコアにより三次元構造上で接触ありと判定した (News & Views Fig. 1参照)。
  • 両グループはこの2次構造予測と接触ペアのデータをもとに、立体構造予測プログラムを介してGB1の三次元構造を再構成し、GB1タンパク質の主鎖のコンフォメーションが、X線結晶構造解析で明らかにされていたコンフォメーションと、1.8-1.9 Åの範囲内で一致すること示した。また、hYAP65 WWドメイン (PNAS, 2012 [*3])について、全ての二重変異のわずかに~4%のデータで三次元構造を再構成可能なことを示した。
  • また、SPグループは二重変異の~33%のデータをもとにFosとJunの物理的相互作用を予測していたところ (eLIFE, 2018 [*4])、USグループは今回、FosとJunの複合体構造を再構成した。
  • 両グループは、GB1の二重変異データを5~10%までダウンサイズする実験も行ない、三次元構造に関するある程度の情報を得られることを示したが、数千万組の二重変異が想定される多くのタンパク質への展開に、ハイスループットの変異誘発法、表現型のアッセイ法、スケーラブルなアルゴリズムの開発が待たれる。
 参考文献

1. GEMINI: 変分法的ベイズ推定法に基づいて、プール型CRISPRコンビナトリアル・スクリーンから遺伝子間相互作用を再構成するアルゴリズム
[出典] "GEMINI: a variational Bayesian approach to identify genetic interactions from combinatorial CRISPR screens" Zamanighomi M, Jain SS, Ito T, Pal D, Daley TP, Sellers WR. Genome Biol 2019-07-12.
  • CRISPR-Cas9技術の登場によって、ヒト細胞において多重遺伝子を同時に編集するコンビナトリアル・スクリーンが可能になった。Broad InstituteとStanford Uの研究グループはは今回、2種類の遺伝子を標的とするsgRNAを組み合わせたライブラリーによるペアワイズ・ノックアウトスクリーンから、gRNAsやプロモータ強度の変動や、ライブラリー設計の如何に左右されずに遺伝子間ネットワークの再構成を可能とし、ひいては合成致死ペアの同定も可能とする、スケーラブルなアルゴリグムGEMINIを開発し、Rパッケージとして公開した。
  • GEMINI Rパッケージ入手先:https://github.com/sellerslab/gemini
2. Bindel-PCR: CRISPR/Cas9を介した両アレルノックアウト細胞を同定する新手法を、Thermus aquaticusDNAポリメラーゼを利用するPCRを介して実現
[出典] "Bindel-PCR: a novel and convenient method for identifying CRISPR/Cas9-induced biallelic mutants through modified PCR using Thermus aquaticus DNA polymerase" Sakurai T et alSci Rep2019--07-09.
  • Bindel-PCRは、biallelic KO mutants harbouring indels using PCRに因んだ命名 (原論文 Figure 1参照 ):マウスのEt1TyrRamp1Ramp3およびRosa26遺伝子で実証
3. レンチウイルス・カプシドに基づくバイオ・ナノ粒子でCas9/sgRNA RNPを送達することで、効率的な‘hit-and-run’ ゲノム編集を実現
[出典] "Delivering Cas9/sgRNA ribonucleoprotein (RNP) by lentiviral capsid-based bionanoparticles for efficient ‘hit-and-run’ genome editing" Lyu P, Javidi-Parsijani P, Atala A, Lu B. Nucleic Acids Res 2019-07-12.
  • CRISPR/Cas9システムの発現を一時的にすることでオフターゲット作用と免疫応答のリスクを低減可能である。
  • SaCas9 mRNAを100コピーまでパッケージ可能なレンチウイルス様バイオ・ナノ粒子 (lentivirus-like bionanoparticle, LVLP)を開発した[*]Wake Forest University Health Sciencesの研究グループは今回、LVLPによるSaCas9/sgRNA RNPの送達を実現し、Cas9 mRNA LVLPsと同等以上のindels生成効率を発揮することを確認した (原論文Figure 1引用下図参照)。Packaging sgRNA in LVLPs
  • [*] CRISPRメモ_2019/02/28-1 [第2項] SaCas9 mRNAをレンチウイルス様バイオ・ナノ粒子で送達することでmRNAによる一時的かつ効率的ゲノム編集を実現
4. [レビュー] CRISPR/Cas9を介した突然変異誘発と優性突然変異トランスジーンによる病原性線虫の機能ゲノミクス
[出典] REVIEW "CRISPR/Cas9 mutagenesis and expression of dominant mutant transgenes as functional genomic approaches in parasitic nematodes" Lok JB (U Pennsylvania). Front Genet 2019-07-16.
  • C. elegansで実証されたCRISPR/Cas9技術のStrongyloides属とParastrongyloides属の機能ゲノミクスの成果と課題*および将来の展開をレビュー。特に、Strongyloides stercoralisの多機能調節因子Ss-DAF-16は、単なるノックアウト実験では、解析するにはあまりに複雑な表現型が生成され、そしてまたは、対象線虫が宿主感染能を失ってしまうことから、その機能解析を実現できない。この限界を超えるドミナントネガティブ作用をおよぼす遺伝子編集技術をとりあげた。
  • 下図は原レビューのFigure 1とFigure 2からそれぞれ引用した病原性線虫への核酸送達戦略の図と優性突然変異導入による機能ゲノミクスのワークフローNematodes 1 Nematodes 2
5. [プロトコル] CRISPR-Cas9を介した酵母染色体融合
[出典] "Creating functional chromosome fusions in yeast with CRISPR–Cas9" Shao Y, Lu N, Xue X, Qin Z. Nat Protoc 2019-07-12.
6. 非モデル昆虫ホシカメムシへのCRISPR/Cas9ゲノム編集の展開と最適化
[出典] "CRISPR/Cas9 Genome Editing Introduction and Optimization in the Non-model Insect Pyrrhocoris apterus" Kotwica-Rolinska J [..] Dolezel D. Front Physiol 2019-07-15.
  • CRISPR/Cas9の非モデル生物への展開は、経験豊富な研究者にとっても、簡単では無い。特に、変異誘導効率が上がらないことが課題である。Biology Centre Czech Academy of Sciencesの研究グループは今回、ホシカメムシへの最適化に必要な条件を同定し(胚注入時期、ヘテロ二本鎖移動度分析による表現型に依存しない変異スクリーニング、sgRNAの効率のin vivo検証、G0世代モザイクスクリーニングなど)、他の昆虫にも、胚注入時期を除いて、展開可能とした (ワークフローの全貌について原論文Figure 5引用下図参照)。Pyrrhocoris apterus
7. [特許公開] CRISPR/Cas9システムをアデノウイルスベクターで送達する肺疾患の遺伝子治療
  • 公開日 2019-07-04. 発明者 Curiel D. 権利者 Washington University (Saint Louis)
8. [特許公開] 核酸の5'リン酸に共有結合するCRISPRタンパク変異体の作出とタギングへの利用
  • 公開日 2019-07-04. 発明者 Davis GD, Talglicht D, Chen F. 権利者 Sigma-Aldrich. 
9. [特許公開] BCL11Aex vivo/in vivo遺伝子編集を介した異常ヘモグロビン症治療
  • 公開日 2019-07-04. 発明者 Cowan CA et al. 権利者 CRISPR Therapeutics AG

1. 深層ニューラルネットワークモデルSeqCrisprを開発し、sgRNAの活性はsgRNAの配列に加えて標的遺伝子の遺伝子間相互作用のコンテクストにも依存することを同定
[出典] "Identifying Context-specific Network Features for CRISPR-Cas9 Targeting Efficiency Using Accurate and Interpretable Deep Neural Network" Liu Q, He D, Xie L. bioRxiv. 2018-12-24.;SeqCrisp入手Webサイト:https://github.com/qiaoliuhub/seqCrispr
  • CRISPR-Cas遺伝子編集のデータが蓄積されてきたことから、2018年に入って機械学習によるgRNA活性の予測精度の向上が報告され始めたが(*1)、細胞株によってデータの蓄積量が異なること、深層学習モデルがブラックボックス(**2)であり、生物学的解釈が難しく、オンターゲットの編集効率を支配する要素の特定が困難なこと、および、機能や必須性が異なる遺伝子を標的とするgRNAの効率を比較する合理的な手法が存在しないこと、といった課題が残っている。
  • (*1) CRISPRメモ_2018/02/04:3. CRISPR-Cpf1 gRNA活性予測精度を、深層学習(deep learning)により向上;CRISPRメモ_2018/07/02-1:7. DeepCRISPR:深層学習によるCRISPR gRNAの最適設計
    (**2) 2017-05-02 
    ブラックボックスである人工知能を開けて見たい
  • The City University of New Yorkの研究チームは今回、これらの課題解決を目指して、以下の特徴をもつ新たな深層ニューラルネットワークモデルSeqCrisprを開発した:Word2vec に倣った3-merヌクレオチドの表現 (隠れ層);局所的な生物学的特徴 (DNA-sgRNA融解温度、DNaseピーク、CTCFピーク、RRBSピーク、H3K4me3)と遺伝子間相互作用の特徴)の取り込み;再帰型ニューラルネットワーク (RNN)と畳み込みニューラルネットワーク (CNN)の融合;学習結果のデータ量が少ない細胞株への展開可能性 (K562, A549, NB4; HL60, HCT116, HeLa);CRISPR-Cas9のオンターゲット編集効率を支配する生物学的特徴を決定するランキングシステム
  • SeqCrisprは先行研究のgRNA設計支援システムの性能を上回り、また、SeqCrisprにより、sgRNAの3'末端の3-ntに加えて、遺伝子間相互作用(近接する遺伝子と発現量のデータ)が、CRISPR-Cas9のオンターゲット編集効率に決定的な影響を与えることを同定
2. 哺乳類細胞においてERADが分解すべきタンパク質を認識する機構をゲノムワイドCRISPR解析で同定
[出典] "Genome-wide CRISPR Analysis Identifies Substrate-Specific Conjugation Modules in ER-Associated Degradation" Leto DE [..] Kopito RR. Mol Cell. 2018-12-20.

背景
  • ERAD (endoplasmic-reticulum-associated degradation, 小胞体関連分解)は、小胞体内で天然構造へと折りたたまれなかったミスフォールドタンパク質を基質として、小胞体から細胞質への分泌経路の早期に、選択的に分解するタンパク質品質管理システムである。
  • ERADの基質は3種類のクラス、“-L” (lumen)、“-M” (membrane)“または-C” (cytosol)、に分類され、酵母では3種類のERAD全てを2種類の膜内在ユビキチンE3リガーゼ (Hrd1とDoa10)が担っていることが示されている。一方で、哺乳類細胞のERADにはHrd1とDoa10のオーソログ (HRD1とDoa10)を含む多数のE3と補助因子が関わっており、これまでの生化学的解析からはその分子機構の全貌はまだ明らかになっていない。
成果
  • スタンフォード大学の研究チームは今回、プール型ゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーニングにタンパク質のターンオーバーを定量的かつ高感度でアッセイする手法を組み合わせて、ヒト細胞株において、GFPで標識した多様なERADの基質 (以下、クライエント)についてそのターンオーバーを促進あるいは抑制する遺伝子同定を試みた。
  • 具体的には、ERADの2種類のクラス、ERAD-LとERAD-M、のクライエントとしてそれぞれ確定されているA1ATNHK-GFPとINSIG1-GFP、および、酵母では逆行輸送機構が明らかにされているリシンA毒素 (RTAE177Q)、細胞質におけるユビキチン・プロテアソームシステム (UPS)活性のレポーターとして利用されるGFPU*の4種類のクライエントについて、実験を進めた。
  • それぞれのクライエントについて、ERADに直接関与する遺伝子に加えてERADパスウエイ直近の上流と下流に位置する遺伝子を含む〜499-700遺伝子を同定し、クライエント間の共通性と特異性を比較解析し、凝集する傾向にあるタンパク質の効率的な分解が、ERADの各クラスに特異的な膜内在Ub E3モジュールと細胞質内のUb鎖結合機構の間の新奇な協働作用によることを見出し、ERADの3種類のクラスおよび4種類のクライエント認識・分解のモデルを提唱した(原論文 Figure 5参照)。

1. [News & Views] 一塩基編集 (BE)療法に向けて
[出典] "Towards therapeutic base editing" Seo H, Kim JS. Nat Med. 2018 Oct 8.
     BEの特徴
    • BEは顕微授精の際に、一細胞胚または卵母細胞にデリバー可能であり、編集を受けた細胞と編集が起こらなかった細胞が混在するモザイク現象を回避可能
    • BEは出生前の胎児にデリバー可能
    • BEは適切なベクターでデリバーすることで、新生児または成人in vivoでの遺伝子編集に利用可能
     BE3によるモデルマウスの遺伝子治療2報をハイライト
    2. ゲノムワイドCRISPRaスクリーンにより、ニューロンの運命決定とリプログラミングをドライブする因子の網羅的探索を可能に
    [出典] "CRISPR Activation Screens Systematically Identify Factors that Drive Neuronal Fate and Reprogramming" Li Y, Yu C, Daley TP [..] Wong WH, Wernig M, Qi LS. Cell Stem Cell. 2018 Oct 11.
    • 細胞のアイデンティティーは、コア転写因子 (TFs)その他の調節因子の活性に依存する。このため、個々の因子とそれらの相互作用の細胞運命決定への寄与を網羅的に解析することが、細胞運命決定の分子機構の解明、ならびに、臨床応用に有用な細胞の合理的設計・作出を促進する。
    • 遺伝子群と細胞運命の関係のプロファイリングはこれまで、遺伝子発現をゲノムワイドで細胞間で比較解析する手法や、cDNAライブラリーを利用した異所性過剰発現実験で試行錯誤を続ける手法が利用されてきた。前者は細胞運命関連因子の網羅的評価が可能であるが、遺伝型と表現型の間の因果関係の手がかりは得られない。後者は、その因果関係の手がかりを提供するが、ゲノムワイドへ拡張することは実際には不可能である。
    • Lei S. Qiグループは、ゲノムワイドCRISPRaスクリーンを利用して、ニューロン運命決定に関わる調節因子 (TFsとその他のDNA結合因子)を偏りなく網羅的に同定し、因子と運命決定の因果関係の手がかりも得られることを示した。
    • CRISPRaにより調節因子の全てのペアを活性化することにより、ニューロン分化に関わる遺伝子間相互作用マップを構築し、ニューロン運命決定の真正な誘導因子であるトップヒットの因子および因子ペアを同定し、Ezh/とMecomといった新奇ペアを発見した。
    • いくつかのペアが線維芽細胞をニューロンへと直接リプログラム*することを見出した。さらに、全ゲノムRNA-seqを実施し、分化し直接リプログラムされたニューロンと内在ニューロンがよく似た転写プロファイルを共有することを見出した。
    • *) "CRISPR technology turns skin cells into brain cells with high efficiency." Armitage H. SCOPE (Stanford Medicine) 2018 Oct 11.
    3. 大規模なゲノムデータセットから高速かつ網羅的に周期的反復配列を検出するSPADE (Search for Patterned DNA Elements)を開発
    [出典] "Fast and global detection of periodic sequence repeats in large genomic resources" Mori  H,  Evans-Yamamoto  D,  Ishiguro S,  Tomita M,   Yachie N. Nucleic Acids Res. 2018 Oct 10. (bioRxiv 2018-04-28)
    • 周期的に繰り返すDNA配列やアミノ酸配列は、ゲノム進化、遺伝子調節、タンパク質複合体形成、免疫など重要な生物学的事象に関与している。また、ZFNs, TALENsおよびCRISPRsといったゲノム編集システムは周期的反復配列に由来している。そこで、東京大学と慶應大学の研究チームは今回SPADEを開発し、GenBankからダウンロードした7,006種類の原核生物完全ゲノムと、NCBI RefSeqデータベースからダウンロードしたヒト参照ゲノムGRCh38.p10で、検証した (ソフトウエアの比較評価について原論文Table 1引用下図左参照;CRISPR検出について原論文Figure 1引用下図右参照)。
    SPADE 1 SPADE 2

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