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1. [レビュー] デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)のCRISPR遺伝子治療
[出典] REVIEW "CRISPR Correction of Duchenne Muscular Dystrophy" Min YL, Bassel-Duby R, Olson EN (U. Texas Southwestern Medical Center). Annu Rev Med. 2018-10-31.(2019年1月に最終版出版予定)
  • CRISPR技術によってDMDの病因変異を'迂回'することで、ヒト細胞とマウスDMDモデルにおいて、ジストロフィン発現回復が実現した。CRISPR技術によるDMD療法の可能性の広がりと課題をレビュー
2. [レビュー] デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)のCRISPRによるエクソン・スキッピング療法
[出典] REVIEW "Methods of CRISPR/Cas9 exon skipping for Duchenne muscular dystrophy" Lim KRQ, Yoon  C, Yokota T (University of Alberta). Preprint 2018-11-02 (not peer-reviewed)
3. [レビュー] CRISPR時代の癌診断と免疫療法
[出典] REVIEW "Cancer Diagnosis and Immunotherapy in the age of CRISPR" Cook PJ, Ventura A. Genes Chromosomes Cancer. 2018-11-10
4. 結腸腺癌細胞におけるCCAT1 lncRNAのCRISPR/Cas9 ノックアウト
[出典] "CRISPR/Cas9 Knockout Strategies to Ablate CCAT1 lncRNA Gene in Cancer Cells" Zare K, Shademan M, Seno MMG, Dehghani H.Biol Proced Online 2018-11-01.
  • イランFerdowsi University of Mashhadの研究チームによる3種類の結腸腺癌細胞株におけるCCAT1遺伝子のCRISPR/Cas9ノックアウト3法、NHEJを介したノックアウト (CRISPR Excision)、HDRを介したノックアウト、ならびにHITI法*に準拠したCRISPR du-HITIによるノックアウト (原論文Fig.1引用下図C参照)、を比較し、CRISPR du-HITI法を推奨du-HITI
    (*)HITI法関連crisp_bio記事:2017-05-06 非相同末端結合(NHEJ)によって、in vivo で非分裂細胞に外来遺伝子をノックイン
5. リンゴとブドウのCRISPR-Cas9ゲノム編集法
[出典] "CRISPR–Cas9-mediated genome editing in apple and grapevine" Osakabe Y, Liang Z [..] Kanchiswamy CN. Nat Protoc. 2018-11-02.
  • CRISPR-Cas9システムをプロトプラストにプラスミドを介して送達する手法またはRNPを直接送達する手法 (KanchiswamyグループのFront Plant Sci 2016年論文 Figure 3引用下図参照)に始まるゲノム編集の詳細プロトコル;変異体作出に要する期間はプラスミドで > 3ヶ月、RNPで2−3週間RNP

[出典] "Induction of resistance to chimeric antigen receptor T cell therapy by transduction of a single leukemic B cell" Ruella M, Xu J, Barrett DM [..] Lacey SF, Melenhorst  JJ. Nat Med. 2018 Oct 1.

背景
  • FDAとEPはそれぞれ2017年と2018年に、キメラ抗原受容体 (CAR)を発現させたT細胞による療法であるCAR-T療法として、 CD19を標的とするノバルティス社のCTL019 (キリアム/Kymriah: tisagenlecleucel) とカイトファーマ社(ギリアド・サイエンシズ社)のYescarta (axicabtagene ciloleucel)  を承認している。その間、CAR-T療法の解説やレビューが数多く発表され、最近では、CAR-T療法の先駆者の一人であり、今回報告の共著者の一人でもあるペンシルベニア大学のCarl H. JuneはM. Sadelainと共著で2018年7月5日のNew England Journal of Medicineにレビュー"Chimeric Antigen Receptor Therapy"を発表している。
  • 小児性再発/難治B細胞急性リンパ芽球性白血病 (以下、B-ALL)を標的として承認されたCTL019は、B-ALLに著効を示すが、再発率が高く完全寛解率が低く、再発事例の多くで、白血病細胞にCD19が検出されない。Carl H. Juneを含むUniversity of Pennsylvania,  Children’s Hospital of Philadelphia (CHOP), Novartis Institutes for Biomedical Research, Children’s Hospital Coloradoの研究チームは今回、CTL019を受けたのち再発した20歳のB-ALL患者1名の事例を報告した。
経緯
  • この患者は、化学療法と臍帯血移植を受け、三回目の再発後に、CTL019の第1相試験を受けた。CTL019を処置後28日で完全寛解したが、261日目に再発と診断され、CARが形質導入されたB細胞白血病 (CAR-transduced B cell leukemia, CARB)細胞が検出された。
  • 救済療法として、ビンクリスチン、プレドニゾン、メルカプトプリンおよびメトトレキサート、続いて、抗CD22抗体モキセツモマブシュードトクス を9ラウンド、さらにCD22標的CAR-T療法を尽くしたが、CARB細胞の増殖が止むことはなく、進行性白血病に伴う合併症で患者を失うに至った。
  • 研究チームは、次世代免疫グロブリン重鎖シーケンシング (immunoglobin heavy-chain sequencing, IgH-seq)解析によりCARBの起源を遡及し、再発患者におけるCAR19陽性白血病細胞は、複製能を有するレンチウイルス (replication-competent lentivirus, RCL)を介してin vivoで発生したか、CTL019作製過程で発生したという仮説に達した。
  • しかし、CTL019注入後、3, 6, 9, 12および20ヶ月での患者末梢血には RCLが検出されなかった一方で、CTL019プロダクト由来CAR19陽性細胞集団の中に、IgH-seqにより、白血病性クローンを発見した。したがって、CARB細胞は、CTL019製造過程における形質導入時の副産物と判断し、さらに、CARB細胞の発生と増殖の過程を詳らかにする実験を重ねた。
結論
  • CTL019製造過程で、CD19標的CARレンチウイルスが導入された白血病細胞が一個発生することで、体内でCARBが増殖しつつCD19エピトープをCTL019からマスクすることで、致死的なCAR-T耐性を誘導するに十分であるという結論に達した。また、CD19が非検出になる原因として、CD19の変異、CD19の選択的スプライシング、B細胞受容体複合体の構造変化は否定した。
  • 論文出版時点で国際的にCAR-T療法369例が報告されているが、CARB有害事象はこの1例だけと稀な事象である。
  • しかし、CAR-T細胞の増殖・活性化と表裏一体でコンタミネーションした細胞の増殖と活性化を伴う可能性を帯びたCAR-T製造過程には、一細胞分解能での品質管理が必要である。

出典
  • "Targeted delivery of a PD-1-blocking scFv by CAR-T cells enhances anti-tumor efficacy in vivo&イタ&." Rafiq S, Yeku OO, Jackson HJ, Purdon TJ, van Leeuwen DG, Drakes DJ, Song M, Miele MM, Li Z, Wang P, Yan S, Xiang J, Ma X, Seshan VE, Hendrickson RC, Liu C, Brentjens RJ. Nat Biotechnol. 2018 Oct;36(9):847-856. Online 2018-08-13.
  • "EDITOR'S CHOICE: Special delivery by “armored” CAR-T" Jay SM. Science. 2018 Sep 5.
腫瘍免疫療法
  • FDAは、2011以来T細胞の抗腫瘍性を亢進する一連の免疫チェックポイント阻害剤 (immune checkpoint inhibitors、以下ICI)を承認し、2017年にCAR-T細胞療法 (以下、CAR-T)を承認した (2017-12-21 crisp_bio記事参照)。
  • 免疫チェックポイント阻害剤には、全身性自己免疫疾患様の副作用のリスクがあり、CAR-T細胞療法には、B細胞性急性リンパ性白血病患者に奏功するがそれ以外の疾患には著効を示さないという限界がある。そこで、免疫チェックポイント阻害とCAR-T細胞療法の相補的併用が模索されている。一方で、CAR (Chimeric Antigen Receptor/キメラ抗原受容体)を改変することで、腫瘍微小環境でのCAR-T細胞の活性を強化する手法も試みられている。
'armored' CAR-T
  • Memorial Sloan Kettering Cancer Center、Weill Cornell MedicineならびにEureka Therapeutics Inc.の共同研究チームは2012年以来、CD40Lのような免疫調節リガンドの発現や、IL-12またはIL-16といったサイトカインの分泌を可能にしたCAR-T('armored' CAR-T)細胞を作出し、腫瘍微小環境でのCAR-T細胞の機能向上を試みてきた。
  • 研究チームは今回、腫瘍細胞の免疫チェックポイントを阻害する単鎖抗体scFvの分泌を可能とした'armored' CAR-T細胞を作出し、その抗腫瘍性が向上することを示した。
  • 単鎖抗体scFvは、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域をペプチドリンカーで結合した単鎖可変領域フラグメント (single-chain variable fragments)を意味し、活性化T細胞表面に発現しているPD-1に腫瘍細胞が表面に発現するPD-1のリガンド分子PD-L1を結合することで、活性化T細胞を無力化する免疫チェックポイント機構を阻害する。
実証実験
  • PD-L1陽性の血液腫瘍あるいは固形腫瘍を帯びた同系および異系マウスにおいて、この'armored' CAR-T細胞が、オートクリンにもパラクラインにも作用し、CAR-T細胞とバイスタンダー腫瘍特異的T細胞の抗腫瘍性を亢進することを、同定した。
'armored' CAR-Tの特徴
  • 'armored' CAR-T細胞療法の抗腫瘍性は、相補的併用療法に勝るとも劣らない。また、'armored' CAR-T細胞療法では、'armored' CAR-T細胞が分泌するsvFvsが腫瘍に局在することから、CAR-T細胞の免疫チェックポイント回避を可能にしつつ、免疫チェックポイント阻害剤の副作用リスクが抑制されることを期待できる。
臨床応用までの課題
  • マウスでの実証実験から臨床実験に進むには、他のモデルでの検証が必要である。特にに、'armored' CAR-T細胞の送達が免疫チェックポイント阻害剤の体内分布に与える影響の定量化を介して、免疫チェックポイント阻害がもたらす副作用リスクを厳密に検証する必要がある。

1. 癌遺伝子活性化誘導早期老化癌遺伝子活性化誘導早期老化を調節するエンハンサー同定
  • [出典]"Functional CRISPR screen identifies AP1-associated enhancer regulating FOXF1 to modulate oncogene-induced senescence" Han R, Li L [..] Elkon R, Agami R. Genome Biol. 2018 Aug 17.
  • 癌遺伝子と癌増殖シグナル伝達の異常な活性化に由来する癌ストレスは、癌遺伝子活性化誘導早期老化(Oncogene-induced senescence, OIS)を介して、癌の増殖を抑制する一面がある。オランダとイスラエルの研究チームは今回、CRISPR-Cas9スクリーンを介してOISを調節する転写因子とシグナル伝達経路(AP-1とFOXF1カスケード)を同定した。
2. crRNA 5'端の伸長によって、Cpf1の送達効率も編集効率も向上する
  • [出典]"Extension of the crRNA enhances Cpf1 gene editing in vitro and in vivo" Park HM, Liu H, Wu J, Chong A, Mackley V, Fellmann C, Rao A, Jiang F, Chu H, Murthy N, Lee K. Nat Commun. 2018 Aug 17;9(1):3313.
  • SpCas9については、sgRNAの改変による編集効率向上が精力的に試みられてきたが、GenEdit IncとUC Berkeleyの研究チームは今回、Cpf1について、crRNAの5'端を伸長することでその送達と編集の効率向上を実現した(原論文Fig.1 から引用した下図参照):crRNA 1
    Cpf1 RNPを細胞へエレクトロポレーションする場合、NHEJおよびHDRの双方の経路での編集効率向上;伸長した部分を化学修飾することで血清安定性向上;5'末端を59ヌクレオチド伸長することで、ポリマー・ナノ粒子を含むカチオニック性担体による送達効率が細胞でもin vivoでも向上
3. TEG-seq: オフターゲット編集検出法GUIDE-seqの性能向上
  • [出典]"TEG-seq: an ion torrent-adapted NGS workflow for in cellulo mapping of CRISPR specificity. Tang PZ, Ding B, Peng L, Mozhayskiy V, Potter J, Chesnut JD. BioTechniques 2018 Aug 17.
  • GUIDE-seqは、CRISPR/Cas9のオフターゲット編集検出に広く利用されているが、高レベルの非特異的増幅を伴っている。Thermo Fisher Scientific Incの研究チームは今回、標的に注目しイオントレント次世代シーケンシングで解析するtarget-enriched GUIDE-seq (TEG-seq)を開発し、GUIDE-seqの高感度化を実現し、Cas9/gRNAをRNPとして送達する方が、発現プラスミドで送達するよりも、オフターゲット編集が顕著に低頻度であることを確認
4. [レビュー]Cas9とCas12a/Cpf1の比較 
  • [出典]"REVIEW: Cas9 versus Cas12a/Cpf1: Structure–function comparisons and implications for genome editing" Swarts DC, Jinek M. Wiley Interdiscip Rev RNA. 2018 May 22.
  • 進化過程;ドメイン構造とコンフォメーション変化による活性化;ガイドRNA生合成;PAMの認識;標的DNAの認識と切断 (標的DNAの巻き戻し; シード配列への結合とRNA-DNA二重鎖形成; DNA切断);ゲノム編集への応用 (gRNAの設計; PAM依存標的選択; オンターゲットへの特異性; DNA修復結果);Cas12aによるゲノム編集 (バクテリア; 酵母; 植物; 昆虫; 非哺乳類脊椎動物; 哺乳類);その他の応用
5. p53活性化は精密ゲノム編集のチェックポイント
  • [出典]"Comment: p53 activation: a checkpoint for precision genome editing?" Conti A, Di Micco R. Genome Med. 2018 Aug 17.
  • 最近相次いで指摘された初代細胞におけるp53パスウエイの活性化が、細胞死または細胞周期停止を介して、CRISPR/Cas9のゲノム編集効率を損なうとした報告("Comment"Fig. 1を参照した下図参照)に対するコメントp53
 関連crisp_bio記事
6.  [ミニレビュー]ゲノム編集技術はCAR-T細胞療法のポテンシャルを解き放つ

[出典]"Unleashing the Therapeutic Potential of CAR-T Cell Therapy Using Gene-Editing Technologies" Jung IY, Lee J. Mol Cells. 2018 Aug 14.

概要
  • CAR-T細胞療法は第1世代から第2世代(第3世代)へと進化し、CD19を標的とするCAR-Tは血液腫瘍(B-ALL, CLL, B-NHL)に対して顕著な効果を示し、FDAが認可するに至った。
  • 一方で、CAR-T療法には解決すべき課題が多々存在する。かねてより、「CAR-T細胞の標的である治療標的細胞上の抗原がCAR-T細胞にも存在し、CAR-T細胞自身を標的として攻撃するオフターゲット作用 (fratricide)、癌化したT細胞を排除した自家T細胞由来CAR-T作出に伴う技術的困難と巨額の経費;他家T細胞由来CAR-T細胞が致死的な移植片対宿主病 (GvHD)を誘発する危険性」が、指摘されていた("CRISPR_2018/03/13メモ 1.T細胞急性リンパ性白血病 (T-ALL)に対するCAR-T療法の課題を解決"参照)。
  • ToolGenの研究チームは今回、ゲノム編集技術を利用した前述課題解決の試みを概観し、ゲノム編集CAR-T細胞の安全性を議論
CAR(キメラ抗原受容体)
  • Int J Mol Sci (2018)掲載レビューから引用したCAR-T第2世代の模式図(左下図参照);第1世代CARは,腫瘍抗原に結合するモノクローナル抗体可変領域の軽鎖と重鎖を直列に結合させたsingle-chain Fvドメイン(scFv、左下図のCARにある水色部分)と、シグナルをT細胞内へ伝達するCD3 ζドメイン(赤色の棒)で構成;第2世代CARは、scFVとζドメインの間に共刺激分子(CD28または4-1BB、青色の棒)を挿入;CD28と4-1BB双方を挿入したCARは第3世代CARと呼ばれる。
CAR-T 1 CAR-T 2
  • Int J Mol Sci (2018) 掲載レビューから引用した上右図は、CAR-T療法に抗PD-1、抗PD-L1を組み合わせる療法の模式図
  • ゲノム編集技術を利用したCAR-T細胞療法の臨床試験例一覧(レビュー Table 1から引用)CAR-T 3
他家T細胞由来CAR-T細胞のユニバーサルCAR-T細胞化
  • ヒト白血球抗原(HLA)が適合しない患者のGvGDをTCR欠損で回避:TALENによるTCRα鎖とCD52遺伝子の編集によるユニバーサルCD19 CAR-T (UCART19 (Qasim W, 2017))作出 
  • 宿主対移植片反応(HvG)を、リンパ球枯渇(lymphodepletion)とそれに耐性を帯びたCAR-T作出(CD52発現、デオキシシチジンキナーゼ遺伝子KO)や、CAR-Tのアロ抗原発現抑制(β2-マイクログロブリン遺伝子KO)により回避
Fratricide回避による標的可能抗原の拡大
  • 効果的かつ安全なCAR-T細胞療法には、腫瘍細胞にあまねく発現し腫瘍細胞以外の細胞では発現しない抗原が必須であるが、悪性腫瘍に発現する抗原の殆どが正常なT細胞に見出される。例えば、CD4、CD5、CD7を標的とするCAR-Tは、それぞれを発現するCAR-T自身を攻撃し(fratricide)、CAR-T生産効率および治療公開を著しく損なう。
  • また、標的抗原との継続的相互作用の間に、CAR発現が低減やT細胞の疲弊(T-cell exhaustion)に依り抗腫瘍性が顕著に低下する。そこで、fratricide耐性CAR-Tの開発を目指したCRISPR/Cas9によるCD5とCD7のKOが試みられ、効果が示された。多発性骨髄腫のCS1抗原についても、TALENによるCS1 KOによるfratricide回避が効果を示した。
固形腫瘍への展開:CAR-T療法抗腫瘍活性の強化
  • 腫瘍抗原に対する活性化が繰り返されることによるT細胞の疲弊を、CRISPR/Cas9によってCAR遺伝子をTRAC遺伝子座へのノックインし、CAR発現を最適化することで回避 (Eyquem et al, 2017)。この手法はユニバーサルCAR-T開発にも資する。
  • 腫瘍微小環境におけるPD1, LAG3、DGKなどを介した免疫抑制機構の回避
  • 免疫チェックポイント阻害により回避可能であるが一方で、重篤な自己免疫反応を誘起する可能性がある免疫チェックポイント阻害剤の利用に替えて、CRISPR/Cas9によるPD-1 KOが試行され効果を示したが、長期的使用にはPD-1 KOはT細胞疲弊を介した抗腫瘍性低下の問題が残った
  • TCR阻害チェックポイント回避の観点から試行されたDGKをKOした抗-EGFRvIII CAR-T細胞は、グリオブラストーマの異種移植マウスモデルにて効果を示した (Jung et al, 2018)。
  • LAG-3のKOの効果は実証されていないが、3種類のsgRNAsを利用してTRAC, PD-1およびFASのKOがCAR-T細胞の活性化誘導細胞死(Activation Induced Cell Death, AICD)を低減し、CAR-T細胞の増殖を亢進することが報告されている(Ren et al, 2017)
安全性
  • CRISPR技術による遺伝子編集に伴うオフターゲット編集および多重遺伝子編集に伴う染色体転座がT細胞に及ぼす影響について引き続き留意と研究が必要であり、また、PD-1 KO CAR-Tのサイトカイン放出症候群のような重篤な過剰免疫応答にも留意と研究が必要である。
現行のT細胞遺伝子編集技術の限界
  • CRISPR/Cas9が、p53を介したDNA損傷タイプIインターフェロン応答によるCAR-T細胞の細胞死や増殖抑制をもたらす可能性 (本日の記事「p53活性化は精密ゲノム編集のチェックポイント」参照);増殖初期のT細胞の倍加時間は8-11時間を要し、CRISPRシステムのエレクトロポーレーション後1-2日の増殖阻害はCAR-T細胞収量の顕著な減少につながる。
まとめ (レビュー Fig.1 から引用した下図参照)CAR-T 4

CRISPRとCAR-T細胞療法関連crisp_bio記事

NIH 2018 Aug 16;[Perspective]The Next Phase of Human Gene-Therapy Oversight. Collins FS (NIH), Gottlieb S (FDA). N Engl J Med. 2018 Aug 15;"National Institutes of Health (NIH) Office of Science Policy (OSP) Recombinant or Synthetic Nucleic Acid Research: Proposed Changes to the NIH Guidelines for Research Involving Recombinant or Synthetic Nucleic Acid Molecules (NIH Guidelines)". FEDERL REGISTER 2018 Aug 17.
  • 米国FDAは2017年8月に初の遺伝子治療として小児・若年者の急性リンパ芽球性白血病(ALL)CAR-T療法を認可し、2017年中につごう3件の遺伝子治療を認可した:2017-12-21 失明に至る網膜ジストロフィーの遺伝子治療、FDA認可;2017-10-25 FDA、疾患の病因である遺伝子変異を標的とする遺伝子治療を初承認へ
  • NIHとFDAは、基礎研究と臨床研究に起きている革新を受けて、規制と監督のあり方の見直しを進めてきた。NIHのF. Collins所長とFDAのS. Gottlieb長官は、The New England Journal of Medicineに"The Next Phase of Human Gene-Therapy Oversight"を投稿:「1975年の組み換えDNA諮問委員会(RAC)ガイドライン以来、NIHのガイドライン、FDAの規制、1999年のオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症遺伝子治療治験における治療用遺伝子送達用アデノウイルスに対する過剰な免疫応答に起因する被験者死亡の衝撃、ClinicalTrial.govへの重篤な副作用登録の義務付け、などの各種ガイドラインと規制の歴史、ならびに、遺伝子治療の機構や安全性に関する知見が蓄積されたきた歴史を振り返り、NIHとFDAが協調して、NIHとFDAの間で重複するところがあった遺伝子治療実験研究を進めるための手続きを簡素化し、遺伝子治療に関する審査を、すでに長い歴史を積み重ねてきた療法に関する審査と同じ枠組みで進めていく」とした。

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