タグ:CRISPRdx

[出典] "All-in-One Dual CRISPR-Cas12a (AIOD-CRISPR) Assay: A Case for Rapid, Ultrasensitive and Visual Detection of Novel Coronavirus SARS-CoV-2 and HIV virus" Xiong Ding, Kun Yin, Ziyue Li, Changchun Liu. bioRxiv 2020-03-21.

 UConn Healthの研究チームは今回、DETECTRと同様にCas12aのコラテラルssDNA切断活性を利用しながらも、核酸の増幅から検出までのワンポット反応 [1]と、crRNAぺアによるCas12a-crRNAの二重化 [2]による感度向上を介して、簡素、迅速、かつ超高感度であり、また視覚的判定も可能な核酸検出法を開発し、その性能をレトロウイルスのHIV-1とSARS-CoV-2を対象とするDNA/RNA検出で実証した上で、All-In-One Dual CRISPR-Cas12a (AIOD-CRISPR)法としてbioRxivに投稿した。 
  1. AIOD-CRISPRアッセイでは、核酸増幅から核酸検出までに必要な全てのコンポーネントを単一の反応装置に混合し一定温度 (37 °C)でインキュベートすることで、増幅装置と検出装置の二本立てとその間のサンプルの移動を回避している。
  2. 標的配列におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの認識部位に近接した部位に結合するcrRNAsペアをもとにCas12a-crRNA複合体のペアを予め用意しておき、等温DNA増幅用プライマー*2を含むRPA mix, ssDNA-FQ (Fluorescence Quenching)レポーター, リコンビナーゼ, ssDNA結合タンパク質 (SSB), strand displacement活性を帯びたDNAポリメラーゼ, および標的核酸を含む溶液に投入する。
  • ワンポット反応は、RPA増幅から始まり、strand replacementを介して露出したcrRNA標的部位へのCas12a-crRNA複合体の結合を契機としてCas12aのコラテラルssDNA切断活性が発揮され、それによって切断されたssDNA-FQレポータが蛍光を発する。RPAの増幅産物も、Cas12aのコラテラルssDNA切断活性を介して、レポーターの発光に貢献する [Figure 1引用下図 A 参照]。
2020-03-27 21.13.54
  • 上図 B にあるように、全てのコンポーネントが揃った場合に限り、40分のインキュベーションを経て、青色LED光および紫外光の照射によって、レポータからの蛍光が明確に見えてくる。また、特別な光を照射しなくても、溶液の色変化を目視で判定可能であった。この結果はPAGE解析とリアルタイムの蛍光強度測定でも裏付けられた。
  • 続いて、最適化を試みる中で、2種類のcrRNAsを同時使用する効果を確認すると共に、ssDNA-FQレポーターの濃度4μM以上、フォーワードとリバースのプライマー濃度それぞれ0.32μMの条件も探り当てた。
HIV-1検出
  • AIOD-CRISPRにより、1分のインキュベーションで、HIV-1 DNA 1.2 copiesまで検出可能であった。
  • トリ骨髄芽球症ウイルス (AMV)由来逆転写酵素を介したRT-AIOD-CRISPRによりHIV-1 RNA (合成したgagの1027-nt断片)を、40分のインキュベーションで11 copiesまで検出可能であり (1.1 copiesは非検出)、血漿サンプルからの検出も、感度は低下したが、可能であった。
SARS-CoV-2検出
  • 長さ384-ntのSARS-CoV-2 N遺伝子cDNAを合成し、40分以内に1.3 copiesまで検出可能であり、また、SARS-CoVとMERS-CoVに対しては非検出になることも確認した。
  • RT-AIOD-CRISPRによるSARS-CoV-2 NのRNA遺伝子については、40分以内に4.6 copiesまで検出可能であった。
CRISPRdx関連crisp_bio記事
  • 2020-03-22 CRISPR/Casのコラテラル活性に基づくバイオセンシング技術 2題
  • 2020-03-12 新型コロナウイルス:DETECTRは来た、SHERLOCKはどうしてる?
  • 2020-03-05 新型コロナウイルスのサーベイランス・ツール:SHERLOCKに機械学習による設計を組み合わせて
  • 2020/02/19 新型コロナウイルス検出プロトコル公開:SHERLOCK
  • 2020-02-15 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)
迅速かつポータブルな検出するツール (CRISPRdx以外の手法も含む)


1. [レビュー] CRISPR/Casを介したバイオセンシング技術による核酸検出
[出典] REVIEW: "Nucleic Acid Detection Using #CRISPR/Cas Biosensing Technologies" Aman R, Mahas A, Mahfouz M. ACS Synth Biol 2020-03-11
  • King Abdullah University of Science and Technologyの研究チームが、装置や人材が不足している地域でのポイント・オブ・ケアに利用可能であり必要な技術という観点からCRISPR技術、特に、Cas13, Cas12a, およびCas14のコラテラル活性、に基づき、アトモル濃度 (10–18 mol/L)の感度まで達成可能な核酸検出法開発の最新動向をレビューした。
  • CRISPR/Casシステムにlateral flow system (Wikipedia引用下図参照)を組み合わせることで、低コスト、高精度、高感度および現場で利用可能な診断ツールが実現するとした。Lateral Flow Test
2. Cas12のコラテラルssDNA切断活性に基づき、単一コピーの標的DNAを1時間未満で裸眼で検出可能とする超高感度核酸検出システム
[出典] "An ultrasensitive and specific point-of-care CRISPR/Cas12 based lateral flow biosensor for the rapid detection of nucleic acids" Mukama O, Pinilla-Redondo R, Zeng L. Biosens Bioelectron 2020-03-14.

 中国科学院広州生物医薬与健康研究院の研究グループが開発したシステム: CRISPR/Cas and loop-mediated Isothermal Amplification (CIAと命名)は、lateral flow biosensor (LFB)で判定する。アブストラクトから判断する限りは、DETECTRシステム (crisp_bio 2020-02-15 CRISPRによる核酸検出・診断)と同一 [crisp_bioは本文にアクセスできていない]

[参考] 迅速かつポータブルな検出するツール (CRISPRdx以外の手法も含む)


[参考crisp_bio記事]
2020-02-15 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)
2020-02-19 DETECTR、新型コロナウイルス検出プロトコルversion 2を公開
2020-02-19 SHERLOCK、新型コロナウイルス検出プロトコルを公開

DETECTR - SARS-CoV-2感染患者の検体で、性能を実証
[出典] "Rapid Detection of 2019 Novel Coronavirus SARS-CoV-2 Using a CRISPR-based DETECTR Lateral Flow Assay" Broughton JP, Deng X [..] Chen JS, Chiu CY. medRxiv 2020-03-10.

 Mammoth BiosciencesはUCSFならびにCalifornia Department of Public Healthと共同で投稿したmedRxivにて、「米国のCOVID-19患者から分離した臨床サンプルで検証した結果、SARS-CoV-2に最適化したDETECTRが、米国CDCのリアルタイムRT-PCRアッセイに匹敵する性能を示した」と発表した。

背景
  • この40年の間に、動物からヒトへの伝播 (zoonotic animal-to-human transmission)から始まったとされている新興ウイルスによる大規模なパンデミックが繰り返し発生した。HIV, SARS, MERS, 2009年のH1N1インフルエンザウイルス, エボラウイルス, ジカウイルス, そしてSARS-CoV-2である。
  • これまで、精密・迅速・簡易な分子診断ツールが無かったために、新興ウイルス感染症が始まる度に、公衆衛生対応が遅れをとって、パンデミックに至っていた。
  • COVID-19感染症を引き起こすSARS-CoV-2の場合、2019年12月に武漢で報告されて以来2020年3月4日までに90,000例が報告され、3,000名が亡くなられた[*] 。また、SARS-CoV-2は無症状または軽症な感染者からのヒト・ヒト感染が報告されており、一層、高速・高信頼・簡便な検査ツールが求められている。
  • [*] crisp_bio注: WHO, 2020-03-12 (JST)にパンデミックを宣言: [NEWS] Coronavirus latest: WHO describes outbreak as pandemic. Nature 2020-03-11.
  • 米国CDCが開発しFDAのEmergency Use Authorization (EUA)を得た装置も含めて、4-6時間で判定可能な定量的RT-PCR (qRT-PCR)装置が開発されてきた。しかし、SARS-CoV-2感染疑いの患者の診断には、認証された検査機関に検体を輸送する時間を入れたターンアラウンドタイムは24時間を超えたことから、米国では当面、各臨床検査研究室で開発した手法による判定を認めた。
成果
  • Mammoth BiosciencesのJames P. Broughtonらは今回、Cas12のコラテラルssDNA切断活性に栄研化学が開発したLAMP法 (RT-LAMP) とラテラルフローアッセイを組み合わせたDETECTRをSARS-CoV-2検出へと適応させたSARS-CoV-2 DETECTRによって、患者の検体から抽出したRNAから出発して、~30分で判定可能なことを実証した。
  • SARS-CoV-2 DETECTRは、SARS-CoV-2が帯びているエンベロープ(E)と核タンパク質 (nucleoprotein: N)の遺伝子を標的とするプライマーを使用し、WHOのアッセイ対象 (E)とCDCのアッセイ対象の一部 (NのN2領域)と重なる領域をLAMPで増幅する。CDCアッセイ対象となっていたN1とN3は、Cas12-gRNAが認識するPAM配列が存在しなかったため対象外とした。
  • 検証実験は、SARS-CoV-2  (NC_045512)、SARS-CoV (NC_004718)、コウモリSL-CoVZC45 (MG772933)の3種類のコロナウイルスのE遺伝子を標的とするgRNAsと、 SARS-CoV-2のN遺伝子を標的とするgRNAsを設計・作出し、ヒトRNase P遺伝子をコントロールとして、行った。
  • SARS-CoV-2 DETECTRは、62°CでのRT-LAMPの反応に20分、37°CでのCas12による検出反応に10分を経て、ラテラルフローアッセイの紙片で目視判定可能となり、判定結果は、N1とN2を標的とするCDCアッセイの結果と一致した (著者注:N3は今回試薬に問題があったことから、CDCアッセイにおいても標的から外された) 。N2を標的とすることで、SARS-CoV およびSL-CoVZC45との峻別が可能であった。
  • 検出限界について、SARS-CoV-2 DETECTRと、EUA承認CDCアッセイとを比較し、それぞれ、10 copies/μLと1 copy/μLを得た。無症状のドナーから鼻咽頭スワブを経て臨床検体輸送用の培地 (universal transport medium: UTM)に収められた検体から直接RT-LAMPで増幅したテストでは、検出限界は500 copies/μLまで低下した。
  • PCRで陽性と判定された感染者6名からの11検体 (鼻咽頭スワブと中咽頭スワブ由来)、インフルエンザウイルス感染患者4名からの12検体 (鼻咽頭スワブ由来)、季節性コロナウイルス (OC43, HKU1, NL63)感染患者3名からの検体、および、5名の健常者からの検体について、CDC qRT-PCRと SARS-CoV-2 DETECTRの精度を比較し、感度90%、特異度100%を得た。
  • SARS-CoV-2 DETECTRのUS FDAのガイダンスに応じた臨床評価が、(Clinical Laboratory Improvement Amendments)認証微生物研究室で進行中である。
  • DETECTRは、新興ウイルスに対して配列データをもとに即応可能であり、また、マイクロフルイディクス技術に基づいてカートリッジ化も可能である。さらに、凍結乾燥した試薬を利用することで、臨床検査研究室の外、その場での診断 (POC)も可能になる。
Sherlock Biosciences、Cepheid社と共同でSARS-C0V-2検出の実証実験へ
[出典] "Cepheid and Sherlock Biosciences Establish Collaboration on New GeneXpert Tests for Infectious Diseases and Oncology Leveraging CRISPR Technology" Sherlock Biosciences 2020-02-28.
  • 2社は、感染症と癌の検診を目的として、Sherlock BiosciencesのSHERLOCKを、CepheidのPCR増幅から標的核酸の検出までを全自動で解析可能とした装置GeneXpert®システム [$]上で走らせることを目指す。その概念実証実験の対象として、今回、SARS-CoV-2の検出を取り上げた。
  •  [$] GeneXpert®利用例: "GeneXpertを用いたClostridioides difficile毒素検出能の評価" 仲田佑未, 田仲祐子, 室田 博美, 森下奨太, 寺岡千織, 野上智, 福田哲也, 千酌浩樹. 医学検査 2019 年 68 巻 4 号 p. 707-711
  • Broad InstituteとMcGovern Instituteはすでに新型コロナウイルス検出用SHERLOCKのプロトコルを公開したが、Sherlock社の共同設立者でありCEOのRahul Dhandaは「臨床検査室に加えてより広い環境での効率的判定を可能にすることを模索しつつ、まず、SHERLOCKのコロナウイルス検出への適合性を見ていく」と述べている。
[参考] 迅速かつポータブルな検出するツール (CRISPRdx以外の手法も含む)
Mammoth Biosciencesのツイートを以下に引用

[出典] "CRISPR-based surveillance for COVID-19 using genomically-comprehensive machine learning design" Metsky HC, Freije CA, Kosoko-Thoroddsen TSF, Sabati PC, Myhrvold C. bioRxiv 2020-03-02

 SARS-CoV-2のサーベイランスは3つの課題を伴っている:(1) 現行の検査能力を超えたアウトブレイクに即応する; (2) SARS-CoV-2と極めて近縁なコロナウイルスの種と亜種から峻別する; (3) COVID-19患者は他の呼吸器ウイルスに感染している場合または共感染している可能性がある[medRxiv 2020-02-18]ことから、他のウイルスも同定する必要がある。
  • Broad Instituteの研究グループは、SHERLOCKによる核酸検出アッセイの迅速な設計 (RPAプライマーとLwaCas13a crRNAsの設計)を可能とするアルゴリズムと機械学習モデルを開発し、ADAPTシステム(原稿準備中)を構築した 。
  • ADAPTを利用して、SARS-CoV-2と系統的に近いウイルスおよび臨床症状が似ているウイルスを含む計67種類のウイルスの種と亜種を検出するアッセイ系を設計した (Webサイトのキャプチャを下図に引用)。2020-03-05 21.33.18
  • 合成SARS-CoV-2 RNAをモデルとして、SHERLOCK (LwaCas13aを使用)のSARS-CoV-2の検出限界として、既報のDETECTRSHERLOCK の感度がそれぞれ70-300 cp/µlと10–100 cp/µlであったのに対して、10 cp/μlを達成し、また、先の課題解決が可能なことを示した。
  • 共著者の一人Pardis C. SabetiはSherlock Biosciencesの共同設立者の一人でありアドバイザーである。

# 2020-03-05 DETECTR流の装置の概念実証実験に関するbioRxiv投稿を追加
# 2020-03-04 "v3: March 2, 2020: updates to minimum sample equipment and test interpretation matrix"のリンクへ改訂

[出典] White Paper – A protocol for rapid detection of SARS-CoV-2 using CRISPR: SARS-CoV-2 DETECTR. Broughton JP, Deng W, Fasching CL, Singh J, Chiu CY, Chen JC. Mammoth Bioscience (v1. 2020-02-15; v2 2020-02-18; v3 2020-03-02)

 Feng ZhangらのSHERLOCKに相次いで2020-02-15に、Jennifer Doudnaらが共同設立者であるMammoth BioscienceはCas12を利用するDETECTRに準拠したSARS-Cov-2の検出プロトコルを発表し、2020-02-18にversion 2へと更新し、さらに、2020-03-02にversion  3へと更新した。
  • CODIV-19にチューニングしたDETECTRによって、患者由来サンプル由来RNAをRT-LAMP法で増殖に20分、Cas12aのssDNAコラテラル切断活性反応に10分2分待ってラテラルフロー・試験紙上で目視で判定となる。
  • Mammoth Bioscienceが公開したワークフローを同社のPDF資料Table 1から下図に引用した: Table 1
  • RT-LAMP法は栄研化学が開発した手法であり、RNAをDNA鎖に変換し増幅する手法である (栄研化学Webサイト参照)。
  • SARS-CoV-2のコピー数に応じた蛍光強度のグラフと試験紙上の結果、および、必要な器具の一覧をそれぞれPDF資料から左下図と右下図に引用した: 
Fig. 1 2020-03-04 10.04.11
  • Mammoth Bioscienceは、SHERLOCKおよび現行のCDC/WHOのワークフローとの比較結果も公開した (Appendox Figure 1から引用した下図参照): 
Comparison
  • このプロトコルは、FDA未認可であり、臨床診断への利用は不可
  • 問い合わせ窓口 diagnostics @ mammothbiosci.com 
 [関連crisp_bio記事、投稿など]
  • crisp_bio 2020-02-15 SHERLOCK、新型コロナウイルス検出プロトコルを公開
  • crisp_bio 2018-02-23 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)
  • DETECTR流の装置の概念実証実験: "An ultrasensitive, rapid, and portable coronavirus SARS-CoV-2 sequence detection method based on CRISPR-Cas12"  Lucia C,  Federico PB, Alejandra GC. bioRxiv 2020-03-02 :アルゼンチン (INPA-National Scientific and Technical Research Council (CONICET))とCRISPR診断技術研究開発のベンチャーCASPR Biotech https://caspr.bio/ が、WH-human1 sequence (GenBank MN908947)のデータをもとに、RdRpイタ, ORF1bイタ およびORF1abイタの遺伝子を合成し、概念実証実験に成功
 [コラテラル切断活性を帯びたエフェクターの特徴]
 Mammoth BiosciencesのWeb site "The Cas proteins behind RISPR disgnostics"から引用 2020-03-04 21.59.40

↑このページのトップヘ