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[出典] White Paper – A protocol for rapid detection of SARS-CoV-2 using CRISPR: SARS-CoV-2 DETECTR. Broughton JP, Deng W, Fasching CL, Singh J, Chiu CY, Chen JC.
Mammoth Bioscience (v1. 2020-02-15; v2 2020-02-18)

 Feng ZhangらのSHERLOCKに相次いで2020-02-15に、Jennifer Doudnaらが共同設立者であるMammoth BioscienceはCas12を利用するDETECTRに準拠したSARS-Cov-2 (COVID-19)の検出プロトコルを発表し、2020-02-18にversion 2へと更新した。
  • CODIV-19にチューニングしたDETECTRによって、患者由来サンプル由来RNAをRT-LAMP法で増殖に20分、Cas12aのssDNAコラテラル切断活性反応に10分2分待ってラテラルフロー・試験紙上で目視で判定となる。
  • Mammoth Bioscienceが公開したワークフローを同社のPDF資料Table 1から下図に引用した: Table 1
  • RT-LAMP法は栄研化学が開発した手法であり、RNAをDNA鎖に変換し増幅する手法である (栄研化学Webサイト参照)。
  • COVID-19のコピー数に応じた蛍光強度のグラフと試験紙上の結果、および、必要な器具の一覧をそれぞれPDF資料から左下図と右下図に引用した: 
Fig. 1 Equipment
  • Mammoth Bioscienceは、SHERLOCKおよび現行のCDC/WHOのワークフローとの比較結果も公開した (Appendox Figure 1から引用した下図参照): 
Comparison
  • このプロトコルは、FDA未認可であり、臨床診断への利用は不可
  • 問い合わせ窓口 diagnostics @ mammothbiosci.com 
[関連crisp_bio記事]

# 2020-02-15 11:00 am 初回投稿
[出典] 2020-02-14 Enabling coronavirus detection using CRISPR-Cas13: An open-acces SHERLOCK research protocolBroad Institute; McGovern Institute. (McGovern WebページはSHERLOCKの解説動画付)
[crisp_bio 2020-02-16追記] Jennifer Doudnaが共同設立者であるMammoth Bioscienceは2020-02-15に、Cas12を利用するDETECTRに準拠したSARS-Cov-2 (COVID-19)の検出プロトコルを発表した (crip_bio 2020-02-19)
  • [関連crisp_bio記事] crisp_bio 2018-02-23 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)
概要
 Feng ZhangOmar AbudayyehならびにJonathan Gootenbergの研究チームが、SHERLOCKに基づいて妊娠検査テストと同じような使い方ができる紙ベースでCOVID-19テストを可能とするプロトコルを、研究用に、公開した (32秒のYouTubeビデオ"SHERLOCK research protocol for COVID-19"参照)。


詳細
  • 研究チームはCOVID-19の合成RNAをモデルとして、2種類の配列シグナチャーを認識する2種類のcrRNAs (gRNAs)を設計・作出し、Cas13に組み合わせ、COVID-19 RNAの検出が可能なことを確認した。
  • 患者サンプルでの検証はこれからであり、研究所はこのプロトコルを、診断キット用プロトコルとしてではなく研究用プロトコル (research protocol)として発表したが、現在行われているqPCRテスト用に抽出されるのと同じRNAサンプルをテストすることができる。
  • 研究所は、COVID-19サンプルの解析に取り組んでいる研究者には米国に限らず、チームが相談にのり、また、スターターキットも提供するとしている。
  • サポートはコチラから: sherlock @ broadinstitute.org
  • プラスミドはZhang Lab Addgene repositoryから入手可能、その他の試薬は市販品
RNA抽出後のプロトコルは3ステップ60分 (大規模並列化可能)
  1. 抽出したRNAを、42℃等温遺伝子増幅25分
  2. Cas13タンパク質、gRNAおよびレポータ分子と37℃でインキュベーション30分
  3. 試験紙を浸けて待つこと5分
  4. 詳細プロトコル (今後、随時更新): A protocol for detection of COVID-19 using CRISPR diagnostics (v.20200214)
[crisp_bio注] SHERLOCK またはそれに準じた診断・治療ツールが多数開発されている。例えば: 
  • crisp_bio 2019-10-11 Cas13a-crRNAに基づく超高感度核酸検出システムSHERLOCKに標的ssRNAウイルス分解機能を付加
  • crisp_bio 2020-01-06 CRISPR-Cas13a超高感度核酸検出法を病原体の直接・高速・高感度・高特異性検出へと展開
[crisp_bio注] 米国CDCのCOVID-19検出キット
 米国CDCが700-800検体を同時判定可能なキット (Real-Time Reverse Transcriptase (RT)-PCR Diagnostic Panel)を急遽開発し配布をはじめると2月5日に発表したが、13日になって偽陰性の問題から回収した、と発表した:
[2020-02-16 COVID-19のヒト細胞侵入に必須のスパイク糖タンパク質の構造が報告された]
  • 2020-02-16 新型コロナウイルス (COVID-19)のスパイク糖タンパク質のクライオ電顕構造

# 2018-02-23 初回投稿日
# 2019-12-22 改訂: DETECTRとSHERLOCKの模式図として、Addgeneの関連ブログの図を編集し下図に追加
比較図
DETECTR (DNA endonuclease targeted CRISPR trans reporter)
  • Chen JS, Ma E, Harrington LB, Da Costa M, Tian X, Palefsky JM, Doudna JA. "CRISPR-Cas12a target binding unleashes indiscriminate single-stranded DNase activity" Science. 2018 Apr 27;360(6387):436-439. Published online2018 Feb 15.(以下の2項は、crisp_bio記事CRISPRメモ_2018/02/19冒頭のDETECTR紹介テキストに準拠)
  • Cas12a(旧 Cpf1)は、CRISPR-Cas9と同様に、RNAにガイドされて標的dsDNAに結合し切断する。
  • Doudnaチームは今回、Lachnospiraceae bacterium由来Cas12a(LbCas12a)が標的dsDNA切断に加えて、同時に、ssDNAを非選択的に完全に分解する (コラテラル切断)ssDNase活性を発揮することを明らかにした。このssDNaseはヒト細胞内のDNAはほとんど二重螺旋構造をとっていることから、ヒトゲノム編集に与える影響は限定的である。
  • 研究チームは、消光状態の蛍光ssDNAレポータをLbCas12aのコラテラル切断の対象とすることで、標的を増幅する仕組みを工夫した。さらに、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅 (RPA)を介した標的DNA増幅を組み合わせることで、超高感度なDNA検出法"DNA Endonuclease Targeted CRISPR Trans Reporter (DETECTR)"を開発し、パピローマウイルス(HPV)非感染者、子宮頸癌の病因であるHPVのタイプ16とHPVタイプ18のどちらか、あるいは双方に感染している患者由来のサンプルを対象とした実証実験において、HPV L1遺伝子超可変ループVを標的とするLbCas12a-crRNAにより、それぞれのタイプをアトモル濃度の感度で同定可能なことを示した。
SHERLOCK (Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing)
紹介ビデオ SHERLOCK: A CRISPR Tool to Detect Disease (3m20s) - YouTube

[先行論文] Gootenberg JS, ~ Collins JJ, Zhang F. "Nucleic acid detection with CRISPR-Cas13a/C2c2" Science. 2017 Apr 28;356(6336):438-442. Published online 2017 Apr 13.
  • RNAにガイドされRNAを標的とするCRISPRエフェクターCas13a(旧 C2c2)は、標的認識時に、無差別にリボヌークレアーゼ(RNase)活性 (RNAのコラテラル切断/collateral effect)を発揮するするという特徴を備えている。
  • SHERLOCKでは、消光状態の蛍光ssRNAレポータをCas13aのコラテラル切断の対象とする。検出標的であるdsDNAまたはRNAを、それぞれ、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、またはRT-RPAでcDNAに変換した後に、いずれもT7 RNAポリメラーゼでRNAに転写し、Cas13aによるコラテラル切断により発生するレポータssRNAからの蛍光を検出する。
[SHERLOCKv2 論文] Gootenberg JS, Abudayyeh OO, Kellner MJ, Joung J, Collins JJ, Zhang F. "Multiplexed and portable nucleic acid detection platform with Cas13, Cas12a, and Csm6" Science. 2018 Apr 27;360(6387):439-444. Published online 2018 Feb 15.
  • オリジナルのSHERLOCKからの強化点:1) ジヌクレオチド切断スクリーンから選別した互いに直交するCRISPRエフェクター4種類(LwaCas13a, PsmCas13b, CcaCas13b, AsCas12a (Cas...のプレフィックスは由来微生物種の略号))を組み合わせ、それぞれに対応する4種類のジヌクレオチド・レポーター(AU/UC/AC/GA)を利用することで、4チャネル(FAM/TEX/Cys/HEX)同時検出へと多重化 (3種類のssRNAと1種類のdsDNAの同時検出が可能);2) 2アトモル濃度までの検出可能に;3) Cas13にCsm6を組み合わせてシグナル感度を3.5倍に;4) ラテラルフローアッセイを実現(サンプル中にストリップを漬け、バンド着色の有無で判定可能に)。
  • 実証実験:混合サンプルにおいてジカウイルスとデングウイルスのssRNAを高感度で検出;病原菌検出(S. auresus由来サーモヌクレアーゼ とP. aeruginosa アシルトランスフェラーゼ);肺癌患者のリキッドバイオプシーにおける癌変異を蛍光法およびラテラルフロー法で検出;家族性大腸腺腫症(FAP)変異を導入したHEK293FT細胞において、その正確なジェノタイピングに加えて、Feng Zhangらが開発していたREPAIRシステムによる変異修復の結果確認
  • Point-of-care testing(POCT)として実用になるCRISPR-based diagnostic(CRISPR-dx)実現へ。

# 2019-10-11 初回投稿日
[出典] Programmable Inhibition and Detection of RNA Viruses Using Cas13. Freije CA, Myhrvold C [..]  Sabeti PC. Mol Cell. 2019-10-10

 Broad InstituteのFeng ZhangやPardis C. Sabetiらの研究グループ は今回、先行研究で開発・強化してきた超高感度核酸検出システムSHERLOCKに基づき[1-7]、LwaCas13aまたはPspCas13bを介して、標的ssRNAウイルスの破壊機能を付加したCas13-assisted restriction of viral expression and readout (CARVER)を開発した。

 今回論文の筆頭著者のC. Myhrvold CとC. A. Freijeならびに責任著者のP. C. Sabetiは先行研究において、Cas13-crRNAのコラテラルRNA分解活性に基づくSHERLOCK [1-7]にHUDSON  (heating unextracted diagnostic samples to obliterate nucleases)を組み合わせた強化版SHERLOCKによって、患者サンプルからジカウイルス (ZIKV)とデングウイルス (DENV)を1 コピー (cp)/μlの感度で検出し、また、DENVの4種類の血清型および2015–2016年のパンデミックに由来するZIKVの地域特異的株の識別を実現していた [3]

 研究グループは今回、SHERLOCKに、LwaCas13aまたはPspCas13bとcrRNAsを介した標的ssRNAウイルス分解機能を加えることで、ssRNAウイルスの超高感度検出と高選択性分解を実現するCas13-assisted restriction of viral expression and readout (CARVER)を開発した。
  • NCBIのViral Neighbor Assembliesを参照し、ヒトに感染するウイルスのうちssRNAウイルス396種類のゲノムアライメントから、Cas13-crRNAの標的サイトを探索した。その結果、Cas13aまたはCas13bで標的可能なサイト10ヶ所以上を帯びているssRNAウイルスがいずれも~90%を占め、また、100ヶ所以上帯びているウイルスがそCas13aとCas13bでそれぞれ86%と76%を占めることを見出し、これらを標的とするcrRNAsを利用することで、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)、インフルエンザAウイルス (IAV)、ならびに水胞性口炎ウイルス (VSV)の検出と分解を実現した。
  • 中でも、LwaCas13aがLCMVのウイルスRNAレベルを顕著に低減し、また、低感染多重度 (Multiplicity of Infection: MOI)でも抗ウイルス性を発揮し、宿主細胞を障害しなかったことから、LCMVのゲノムワイドでcrRNAの標的サイトを探索し124ヶ所を同定し、保存性ならびに標的RNAの組成と抗ウイルス性活性との相関を分析した。
Broad InstituteからのSHERLOCK関連論文とcrisp_bio記事
  1. [プロトコル]SHERLOCK: nucleic acid detection with CRISPR nucleases. Kellner MJ, Koob JG, Gootenberg JS, Abudayyeh OO, Zhang F. Nat Protoc. 2019-10-14 (2019-09-23) .
  2. [植物応用] Nucleic Acid Detection of Plant Genes Using CRISPR-Cas13. Abudayyeh OO, Gootenberg JS, Kellner MJ, Zhang F. CRISPR J. 2019-06-21.
  3. [SHERLOCKとHUDSON] Field-deployable viral diagnostics using CRISPR-Cas13. Myhrvold C, Freije CA [..] Zhang F, Sabeti PC. Science. 2018-04-27
  4. [SHERLOCKv2] Multiplexed and portable nucleic acid detection platform with Cas13, Cas12a, and Csm6. Gootenberg JS, Abudayyeh OO, Kellner MJ, Joung J, Collins JJ, Zhang F. Science. 2018-04-27 (2018-02-15).
  5. [SHERLOCK] Nucleic acid detection with CRISPR-Cas13a/C2c2. Gootenberg JS, Abudayyeh OO [..] Sabeti PC, Collins JJ, Zhang F. Science. 2017-04-28 (2017-04-13).
  6. 6. 2018004-27 CRISPR技術による次世代診断ツール開発:「展望」とMammoth Biosciencesの登場
  7. 2018-02-23 CRISPRによる核酸検出・診断 (DETECTRとSHERLOCK)

[出典] An isothermal method for sensitive detection of Mycobacterium tuberculosis complexes using CRISPR/Cas12a cis- and trans-cleavage. Xu H [..] Liu X, Liu J. bioRxiv 2020-02-04.

 福建医科大学を主とする研究グループがDETECTR [*]に準拠したシステムで結核菌群の高感度検出を実現した。
  • 精製したLbCas12aタンパク質と結核菌群の保存性の高い配列を標的とするgRNAを利用し、検出限界 (LOD) 4.48 fM、結核菌の濃度と蛍光強度の相関の決定係数 0.9775を実現した。
  • 喀痰由来の193サンプルを対象として、培養株のゲノム解析の結果と照合した結果、感度と特異度は、それぞれ99.29% (139/140)と100% (53/53)に達した (信頼区間99%)。
 [*] DETECTRの模式図とSHERLOCKの模式図と共に、Addgeneの関連ブログの図を編集して下図に表示DETECTR 6 SHERLOCK
[Cas12a関連crisp_bio記事] crisp_bio: CRISPR-Cas12コレクション [2020-02-05改訂]

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