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[出典] "A SARS-CoV-2-Human Protein-Protein Interaction Map Reveals Drug Targets and Potential Drug-Repurposin" bioRxiv 2020-03-23.

 QBI COVID-19 Research Group (QCRG)など米国機関にEBIとInstitut Pasteurが加わった~100名規模の研究グループの報告
  • ヒト細胞に見られる29種類のうち26種類のウイルスタンパク質をクローニング、標識、そして発現させ、AP-MS アフィニティー精製質量分析 ( affinity purification mass spectrometry, AP-MS)によって、物理的に直接相互作用しているヒトタンパク質を同定した。
  • 続いて、信頼性が高いSARS-CoV-2とヒトのタンパク質間相互作用 (protein-protein interactions, PPIs) 332種類を同定した。
  • [crisp_bio注] SARS-CoV-2のゲノム構造とPPIsマップ作成のワークフローを、Figure 1の a と d から引用して左下図に、SARS-CoV-2のタンパク質の一覧をFigure 1の b から引用した右下図に、挿入した: 
2020-03-25 21.05.01 2020-03-25 21.05.28
  • 加えて、PPIマップから、創薬標的となり得る (druggable)ヒトタンパク質66種類を同定した。また、FDA承認薬, 治験薬そしてまたは前臨床試験中の化合物の標的になる宿主因子69種類を同定した。
  • 候補低分子については、研究グループにおいて、SARS-CoV-2感染アッセイでその効能の評価を進めている。

[出典] Co-regulation map of the human proteome enables identification of protein functions. Kustatscher G, Grabowski P [..] Rappsilber J. Nat Biotechnol. 2019-11-04.  (bioRxiv. 2019-03-19 );  'Big data' for life sciences—A human protein co-regulation map reveals new insights into protein functions. University of Exeter News. 2019-11-05

 University of Edinburgh, Technische Universität BerlinならびにUniversity of Exeterの研究グループは今回、摂動に対して変動するタンパク質の応答をSILACにより定量的に解析し共変動するタンパク質をプロテオームワイドで同定可能とする手法ProteomeHD (注: HDはhigh definitionを意味する)を開発し、ヒトのタンパク質10,323種類から294種類の摂動に対して共変動するタンパク質の組み合わせを同定した。

 続いて、自らの実験データにProteomics Identifications Database (PRIDE) のデータを統合した'big data'から、treeClust [1]による機械学習を介して、共変動/共調節・タンパク質間の機能的な関係を同定し、ヒトプロテオームを対象とする共調節マップを構築し、PROTEOMEHD Webサイト から公開した。下図左右はそれぞれトップページと検索結果例の画面キャプチャで、検索結果例では単一の問い合わせ"ペルオキシソーム[2]膜タンパク質 (PEX11β)"がマゼンタ色の点として表示され、PEX11βと共調節されるタンパク質が緑色の点および表に表示されている。
 2019-11-06 TOP PEX11β
 この共調節マップを利用して、物理的な相互作用はしていないタンパク質あるいは共局在していないタンパク質の間の機能的連関を発見することができる。著者らは今回、予想外にも、ペルオキシソーム[2]膜タンパク質PEX11βがミトコンドリア呼吸因子群 (ATP5J2: ATP synthase subunit f mitochondorial enzyme)が共調節の関係にあることを発見した (上図右参照)。

 哺乳類細胞においてペルオキシソームとミトコンドリアが協働して、脂肪酸を分解し細胞エネルギーのバランスを保つことは知られていた。著者らは今回、生細胞の蛍光標識と蛍光顕微鏡観察により、PEX11βによってペルオキシソームの細胞膜が突起を形成しミトコンドリアと相互作用することを確認し、ペルオキシソームから輸送される代謝物がミトコンドリアにおけるATP生産に貢献する機構を示唆するに至った。

 著者らはまた、治療標的にもなり得ることが最近報告されたが[3]、これまでの手法では解析が困難であったマイクロタンパク質/miroprotein (<15 Da; UniProt登録20,408件) の機能を、共調節マップを利用することで、予測可能なことも示した。

 機械学習の過程で評価した結果、タンパク質の共発現解析に基づく機能相関解析は、mRNAの共発現に基づく解析よりも高精度で高感度であり、現時点ではmRNAの共発現データに比べてカバレッジが劣るが、タンパク質発現のデータが蓄積されればされるほど、タンパク質共発現解析による遺伝子機能のアノテーションが加速することになろう。

[参考文献]

[1] treeClust improves protein co-regulation analysis due to robust selectivity for close linear relationships.  Kustatscher G, Grabowski P, Rappsilber J. bioRxiv. 2019-03-20

[2] ライスサイエンス新着論文レビュー「ペルオキシソームはミトコンドリアに由来する前駆小胞と小胞体に由来する前駆小胞とのハイブリッドとして新たに形成される」杉浦 歩 (カナダMcGill大学Montreal Neurological Institute). © 2017 杉浦 歩 Licensed under CC 表示 2.1 日本
 ペルオキシソームは細胞における代謝において中心的なオルガネラのひとつであり,その代謝経路の多くをミトコンドリアと共有する.カナダMcGill大学Montreal Neurological Instituteの杉浦 歩らは、Zellweger症候群の患者に由来するペルオキシソームを欠損した線維芽細胞を用いてペルオキシソームのde novo合成の過程を解析した.顕微鏡によりペルオキシソームの前駆小胞はミトコンドリアの表面において形成されて細胞質に放出されることが観察され,この過程は小胞体に由来するペルオキシソームの前駆小胞を必要とした.この研究により,ペルオキシソームはミトコンドリアに由来する前駆小胞と小胞体に由来する前駆小胞のハイブリッドとして新たに形成されることが示され,哺乳類細胞におけるペルオキシソームのde novo合成について新規のモデルが提唱された (下図参照).ペルオキシソーム
[3] Regulation of the ER stress response by a mitochondrial microprotein. Chu Q [..] Manor U, Saghatelian A. Nat Commun. 2019-10-25
 ソーク研究所のグループが、54個のアミノ酸から成るマイクロタンパク質PIGBOSがUPRを調節することを同定した。PIGBOSはミトコンドリア外膜に局在し、ER-ミトコンドリアが接触する部位で、ERタンパク質のCLCC1と相互作用し、PIGBOSの欠損はUPRを高め細胞死を亢進する。

[関連crisp_bio記事]

[出典] A proximity biotinylation map of a human cell. Go CD, Knight JDR [..] Gingras AC. bioRixv. 2019-10-07;データ提供Webサイト:HUMAN CELL MAP - A BioID proximity map of the HEK293 proteome (https://humancellmap.org

 Lunenfeld-Tanenbaum Research Institute/University of Torontoの研究グループは、HEK293 Flp-In T-RExにおけるBioIDのデータからSAINTexpressにより細胞コンパートメントのマーカとのインタラクターを高精度で同定した。
  • 32種類の細胞コンパートメント[*]の192種類の高品質マーカ(baits)をもとに、35,902種類の高信頼性近接相互作用と4,424種類の高信頼性インタラクター (preys)を同定し、preysの局在を同定した  [* 膜結合型細胞内小器官の細胞質側表面、小胞体内腔、核とミトコンドリアのサブコンパートメント、主たる膜を持たないオルガネラ (中心体、核小体など)および主たる細胞骨格構造 (アクチン、微小管および中間フィラメント)、加えて、細胞内膜系 (初期エンドソームと後期エンドソーム) HUMAN CELL MAPからの画面キャプチャ下図参照]。HUMAN CELL MAP
  • 4,424種類のpreysのうち、Spatial Analysis of Functional Enrichment (SAFE)により3,252種類を23種類のコンパートメントへ、NonNegative Matrix factorization (NMF)により 4,145種類を20種類のコンパートメントに割り振る結果となった。
  • 局在の再現率は、これまでの大規模な質量分析と顕微鏡による解析に優るとも劣らなかった。
  • また、これまで局在が同定されていなかったタンパク質のコンパートメントとサブコンパートメントへの局在を同定した。
  • さらに、これまでになく粒度細かく局在を同定できたことから、例えば、特定の遺伝子についてミトコンドリアのダイナミクスにおける新たな機能も同定するに至った。
近接依存性標識法による細胞内局在・分子間相互作用の解析関連crisp_bio記事

[出典] FRET-assisted photoactivation of flavoproteins for in vivo two-photon optogenetics. Kinjo T, Terai K [..] Matsuda M. Nat Methods 2019-09-09

背景
  • 光誘導・光活性化二量体形成 (light-induced/light-activated dimerization; LID/LAD)技術の開発によって、光操作によるタンパク質間相互作用ひいてはシグナル伝達経路の調節と解析が可能になった。例えば、シロイヌナズナ由来の光受容体フラボタンパク質クリプトクロム2 (CRY2)と同じくシロイヌナズナ由来のCIB1またはCIB1変異体CIBNのセットにより、青色光照射によって、CRY2を融合したタンパク質と、CIB1/CIBNを融合したタンパク質の、細胞内での相互作用の可視化が可能になった。
  • 一方で、2光子励起顕微鏡 (2P excitation microscopy: 2PEM)の開発によって、生体組織の深部の可視化も可能になった。
成果

 京都大学を主とする研究グループは今回、2P励起によるCRY2の活性化効率が極めて低いことを見出したが、CPY2の2P励起の効率を高める技術を開発してCRY2の2P励起を実現し (2P-activatable CRY2: 2paCRY2)、2paCRY2と2PEMによる細胞/組織内でのシグナル伝達の調節と解析を実現した。

 2paCRY2は、CRY2の光回復酵素相同領域 (CRY2PHR (photolyase homology region))に、リンカーを介してmTagBFP2を連結した構成であり、mTagBFP2が2P励起のエネルギーを吸収し、Förster共鳴エネルギー移動(FRET)を介してCRY2PHRに含まれている青色光吸収余因子であるフラビンアデニンジヌクレオチド (flavin adenine dinucleotide: FAD)に効率良く移動する仕組み (FRET-assisted photo activation: FRAPA)に基づいている。
  • 2paCRY2にRAF1タンパク質を結合した2paRAFを介して、3次元細胞培養系において、シングルセル分解能で、2P励起によって細胞外シグナル調節キナーゼ (Extracellular Signal-regulated Kinase: ERK)活性化を実現。
  • 2paRAFを発現させたマウス皮膚においても、ERKの2P励起を実現し、また、ERKの細胞間伝播の追跡も実現。
  • さらに、FRAPAを他のフラボタンパク質にも展開可能なことを、mTFP1とLOVドメインに基づく光誘導性核外移行因子 (light-inducible nuclear exporter: LINX)の組み合わせ2paLINXが、2p励起によって細胞核から細胞質へ移行することで、実証。

[出典] "Protein interaction networks revealed by proteome coevolution" Cong Q, Anishchenko I, Ovchinnikov S, Baker D. Science 2019 Jul 12;365(6449):185-189. Online 2019-07-11. PERSPECTIVE "Mapping global protein contacts" Vajda S, Emili A. Science 2019 Jul 12;365(6449):120-121.

背景
  • タンパク質配列の中で、折り畳まれて三次元構造上で近接している残基 (アミノ酸)は、進化の過程で互いの変異を制約しあう (co-constraint)ことで共進化 (co-evolution)するという仮説のもとで [*1]、共通祖先に由来する多数のタンパク質配列の比較解析に基づく共進化アミノ酸ペアの同定から、タンパク質の構造やタンパク質複合体の構造を同定する手法が、成果を上げてきている。
  • 2018年には深層学習に基づくタンパク質折りたたみ予測プログラムAlphaFoldがタンパク質予測コンテストCASPにて他を圧倒する性能を示した [*2, *3] AlphaFoldは、膨大なゲノム配列のマルチプルアライメントから出発して、タンパク質3次元上で直接相互作用するアミノ酸ペアを同定し、その結合距離と結合角度を推定していく。また、最近も、共進化仮説に基づいた網羅的変異誘発実験解析から、原子分解能に近い精度のタンパク質立体構造を再構成可能なことが報告されている [*4]。
概要
  • University of WashingtonとHarvard Universityの研究グループは今回、タンパク質間での残基間の共進化確率に基づき、Escherichia coliMycobacterium tuberculosisにおけるペアワイズPPIをプロテオームワイドで同定した。
共進化に基づくタンパク質間相互作用の判定 (原論文 Fig. 1 PPI identificaion by using coevolution参照)
  • 研究グループはE. coliの全タンパク質4,262種類と40,607種類のバクテリアのゲノム配列から解析を始めた。ゲノム配列のマルチプルアライメントからオーソログタンパク質を同定し、解析に十分な数の配列データが得られるタンパク質ペア5,433,039組を選択した。同時に、PDBに登録されたE. coliタンパク質複合体を構成するタンパク質ペアからなるゴールドスタンダードのデータセットと、互いに相互作用を示唆するデータが存在しない2種類の異なる複合体から抽出したタンパク質ペアからなるネガティブデータセットを用意した。
  • 続いて、莫大な計算量になる全ての残基の総当たり組み合わせに代えて、局所的な残基間の相互情報量MIを定義し、ゴールドスタンダードを基準とするdirect coupling analysis (DCA) [*5]とGREMLIN (Generative REgularized ModeLs of proteINs)により961,929組へと絞り込み、さらに、偽陽性の排除を目的として、非選択的な (多数のタンパク質と)共進化性を示す残基とタンパク質を排除し、21,818組へと絞り込んだ。さらに、2つのタンパク質間で共進化する残基間の距離を制約条件とするin silicoドッキングシミュレーションを経て、804組まで絞り込んだ。
  • ここまで共進化に基づいてin silicoで推定してきたペアワイズのPPIと、酵母ツーハイブリッド法 (Y2H)、アフィニティー精製と質量分析を組み合わせた解析 (APMS)、PDBからのゴールドスタンダード、およびEcocycからのゴールドスタンダードに対してベンチマークした結果、共進化モデルがY2HやAPMSに優る精度を示すことが明らかになった。
  • 一方で、共進化モデルを実行するにあたり閾値の設定などにより偽陰性と判定した可能性があることから、ウエット実験から報告されていたPPIまたは同一オペロン内のタンパク質ペアをGREMLINとドッキングシミュレーションで評価した結果残った814組を先の804組に加えたのべ1,618組を、E. coliプロテオームワイドでのペアワイズPPI (以下、共進化ペア)と判定した。
  • ゴールドスタンダードとの照合の結果、共進化確率が二元複合体では確かに高いが、大きな多元複合体や核酸を含む複合体などで低くなる傾向が見られた。また、ゴールドスタンダードに見られる界面と共進化ペアから示唆された界面が整合しない事例の分析から、共進化ペアを利用することで一時的に形成される界面の予測が可能なことが示唆された。
  • 強い共進化性が見られた1,618組のうち、936組は既報であり、126組についてはPDBにホモロジーモデリングのテンプレートが存在し、156組には遺伝子間相互作用が既報であった。この結果、共進化ペアの信頼性が示されたと同時に、共進化ペアによって初めて発見されたPPIは400組 (~25%)となった。
  • M. tuberculosisでは、390万組みを共進化モデルに基づいて評価し、相互作用するタンパク質ペアとして667組を推定し、464組 (~69%)を新奇PPIと判定した。
参考文献と記事

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