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(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/29)
  • Corresponding authors: Richard Neutze (U. Gothenburg);岩田 想(RIKEN SPring-8/京都大学)
  • バクテリアロドプシン(bR)は発色団レチナールを含む。レチナールは光を受けると暗状態から異性化し、分子内のプロトン移動を経て細胞外へプロトンを輸送する。このプロトンの能動的輸送の間に極めて高速で起こるロドプシンのコンフォメーション変化を捉えることはこれまで困難であった。研究チームは今回、連続フェムト秒結晶構造解析法(Serial Femtosecond Crystallography: SFX)を利用することで、bRの暗状態から可視光レーザーによる光励起後〜1.7ミリ秒にわたる間13の時点の構造を2.1 Å分解能で解いた。
    • [PDB登録bR構造 (カッコ内はbRへの可視光レーザ照射後の経過時間)]
      5B6V (暗状態: 0 s);5B6W (16 ns);5H2H (40 ns);5H2I (110 ns);5H2J (290 ns);5B6X (760 ns);5H2K (2 μs);5H2L (5.25 μs);5H2M (13.8 μs);5B6Y (36.2 μs);5H2N (95.2 μs);5H2O(250 μs); 5H2P (657 μs);5B6Z (1.725 ms) 
      [注] 原論文には3種類のムービーが添えられている。
    • ロドプシンにおけるレチナールの異性化にともなうシッフ塩基のプロトンへの親和性低下、レチナールの構造変化の周辺残基の細胞質側への変位と水分子の配置、プロトン輸送経路の出現など、膜電位に抗するプロトンの輸送をもたらす一連の光応答中間構造体の構造とその間の遷移が明らかになった。
  • [注] 創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチでは、2016年12月29日までにSFX関連記事を16件掲載してきました。例えば、2016年5月17日「連続フェムト秒結晶構造解析法(SFX)でPhotoactive Yellow Proteinの光異性化を見る」を掲載しています。

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2015/11/23)
  • 高輝度のXFELによって微細な試料の連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)が可能になったが、これまでのとことろ、構造既知の類似タンパク質を必要とする分子置換法による構造決定に限られていた.
  • 今回、中津 亨ら京大とSpring-8などの研究グループは、SACLAのXFELと、重原子同型置換(Single Isomorphous Replacement with Anomalous Scattering, SIRAS)による位相決定により、構造未知のルシフェリン再生酵素の微結晶の構造を決定した.
  • 単波長異常分散(Single wavelength Anomalous Dispersion: SAD)法では、結晶に水銀を浸透結合させた水銀誘導体からの画像80,000枚以上を入力としても精度が不十分で構造決定に至らなかった.
  • 一方で、天然型のタンパク質(ネイティブ結晶)と水銀誘導体の双方からのデータを利用する水銀の異常分散効果をみるSIRAS法により、それぞれ10,000枚の画像から分解能1.7 Åで構造を決定することに成功した.この手法による構造決定は、高輝度(12.6keV)かつ安定したSACLAにおけるX線自由電子レーザーによって初めて実現した.

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/10)
  • Corresponding authors: Jacques-Philippe Colletier (Univ. Grenoble Alpes); 
    David S. Eisenberg (UCLA)
  • 蚊に媒介されるマラリア、ウエストナイル熱およびウイルス性脳炎などの蔓延に対して、幼虫撲滅薬(larvicide)として利用されているバクテリアLysinibacillus sphaericus 由来のBinABタンパク質複合体は、毒性を示すBinAタンパク質とBinAを蚊の腸に結合するBinBタンパク質で構成されている。BinAB複合体は結晶状態では不活性であり、蚊幼虫の腸内のようなアルカリ性環境で分解されて活性化し、細胞表面受容体によって認識され細胞へ取り込まれて毒性を発揮する。
  • BinABは、ジカ熱やデング熱を媒介するネッタイシマカ(Aedes aegypti)を始めとするヤブ蚊属に対しては毒性を示さない。BinABに対する細胞表面受容体が存在しないからである。また、他の昆虫、甲殻類からヒトにもこの受容体が存在しない。
  • 研究チームは今回、米国のSLAC国立加速器研究所X線自由電子レーザー(XFEL)、Linac Coherent Light Source(LCLS)、のシリアルフェムト秒X線結晶構造解析法(SFX)と多重重原子同型置換異常分散法(multiple isomorphous replacement with anomalous scattering, MIRAS)を利用することで、通常のX線ビームラインでは困難であった小型(50 unit cells/edge)のタンパク質BinABの構造解析を実現し、BinABの作用機序を明らかにした。
    • 幼虫の中腸のアルカリ性環境でBinAB複合体結晶の分解を促す4つのpHスイッチを同定
    • 複合体分解後もヘテロ二量体として存続することを可能とするヘテロ二量体の大きな界面を同定
    • BinAにおいて、ヘテロ二量体が細胞表面へ向かうことを補助すると思われる3箇所の糖結合性モジュールを同定
    • ヘテロ二量体の界面は主としてプロペプチドで構成されていた。タンパク質分解酵素によってヘテロ二量体が分解されて、細胞膜のポア形成が進行することが示唆された
  • 今回得られた構造・機能情報をもとに、BinABを改変してAedes 属などの感染症を媒介する蚊に対して有効でありヒトに対して無害な薬剤を開発する試みが始まっている。
  • [注] XFEL解析関連記事:2015/11/23 SACLAのXFELと重原子同型置換法により、新規タンパク質の構造を決定

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160517)
  • Corresponding author: Marius Schmidt (University of Wisconsin–Milwauke)
  • 紅色光合成合成細菌由来の光受容タンパク質イエロープロテイン(PYP)は光を受容後、フェムト秒からミリ秒の時間で多くの中間体を経る可逆的光サイクル反応を起こすことが知られており、高分解能の結晶構造も解かれている(挿入図 中間体PDB構造の一例)。
s37520001 (1)
  • 今回、SLAC国立加速器研究所のXFEL(LCLS)を使った時間分解SFX法によって、PYPの発色団(p-クマル酸)のC2=C3二重結合をめぐって起こるトランスーシス異性化の構造変化を100フェムト秒から3ピコ秒にわたって追跡することに成功した。
  • フェムト秒蛍光スペクトル解析から報告されていた振動現象は今回観察されなかったが、光受容後にPYPfastからPYPslowへとtrans-to-cis異性化が起きるまでの時間は550fsと、スペクトル解析からの報告とほぼ一致した。

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160512)
  • Corresponding authors:Allen M. OrvilleAlexei S. Soares (Brookhaven National Laboratory (BNL))
  • 連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)法はX線自由電子レーザー(XFEL)を利用して、ランダムな向きをした膨大な数の単結晶からの回折像を連続的に取得するところから結晶の3次元構造を再構築する。このため、XFELからのX線パルスに同調させてサンプルをX線ビームの進路に送り込む必要があり、結晶供給方式の研究開発が続けられている。
  • 本ニュースウオッチ欄でも2016年4月24日に理研SACLAで開発されたヒアルロン酸を輸送媒体とする供給法を紹介したところであるが、今回、BNLや米国SLAC国立加速器研究所などの研究チームは、超音波を利用した結晶供給技術(acoustic droplet ejection, ADE)を開発した。
  • 本装置は、結晶懸濁液を分注した384穴のマイクロプレートから超音波によってピコリッターからナノリッターのドロップレットを、XFELからのパスルと同期させてX線ビームの経路に送り込む。
  • 本装置によって、X線ビームが超音波でインジェクトしたドロップレットの88%にヒットし、完全なデータセットを結晶数50,000未満で取得することができた。
  • Lysozyme, thermolysinおよびstachydrine demethylase (Stc2)の結晶構造を解析しPDBから公開(挿入図参照) 
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